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誰でも誰かの、大切な人。という話
とてもとても、嫌な夢を見た。
私の大好きな人に、別の大好きな人がいて…という夢。
私の大好きな人というのは、約7年間片思いをしている彼のことだ。惚れっぽい私は、他に好きな人らしい人ができたり、彼氏ができたりしたこともあったけど、どうにもこうにも戻っていってしまう、大好きな彼のことだ。これはもう愛ではなく執着なのだろう。頭ではわかっていながら、忘れたいけど、忘れられない。ずっともがきながら、でも心のどこかで、彼が振り向いてくれて、最終的には上手くいく予感がどうしようもなく拭えず、気付いたら7年も経ってしまっていた。
彼との詳しい話は置いておいて、その彼に、なんと大好きな大好きな人ができて…という夢だった。
ここからは夢の話。とても現実的だったので詳細を語るが、あくまで夢の話だ。
彼が彼女(※夢子ちゃんとする)が出会ったのは三か月ほど前。出会ったというより、大学時代のサークル仲間で数年ぶりの再会だったのだそうだ。久しぶりの再会ということと、彼が当時ひそかに夢子ちゃんに好意をいだいていたこともあり二人は意気投合。彼は一気に彼女に夢中になった。
しかし、夢子ちゃんはすでに2年前に結婚していた。
けれど、二人は連絡を取り続けた。夢子ちゃんの旦那さんはとても忙しい人で、彼女のことはほったらかし。夫婦関係はうまく行っていない、と夢子ちゃんは彼に愚痴っていたらしい。彼も忙しい人なのに、忙しい合間をぬって、LINE、長電話などのやりとりをし、たまに飲みに行く、という関係を続けた。ひょっとしたら一日デートらしいこともしていたのかもしれない。
そしてある日、夢子ちゃんが悪魔の言葉を放つ。
「体調が悪く、ごはんも作れなくてとてもしんどい。でもいま旦那が出張中で、家に誰もいないの。助けてほしい。」と。
もちろん彼は迷うことなく家に向かうことにした。しかし、友人にその行動を察知され、その行動は危険だと制止され、あえなくお家訪問計画は失敗に終わった。
その直後、実は夢子ちゃんが旦那さんとうまく行っていないのはまったくの嘘であり、うまく行っていないどころか周囲もうらやむほどのラブラブ夫婦だということを彼は友人づてに知ることになった。失恋。それ以降、連絡を取ることはなくなったが、彼は周囲が驚くほどの落ち込みようを見せた。
という話を、彼の友人の知らない女の子から、彼も同席する中で聞かされる、という夢。
夢だからどこかおかしい要素はありつつ、私の夢はいつもどこか現実的で、いまも思い出すと本当にあったことのように胸が痛む。
最後に、私は彼にはっきり言われる。「君と一緒にいて楽しかった。ちょっと、好きだったんだと思う。でも、今のような、こんな気持ちになることはなかった。今後も君に対してそういう気持ちになることはないと思う、今までごめん。」と。
でも、夢の中の私は冷静だった。むしろ、とんでもない女にひっかかった彼にこういった。
「あなたも人間だったんだね。安心した。」
少しだけ強がりも入っているとは思うけれど、これはまったくの嘘ではない。本当に安心したんだ。いつも何を考えているかわからなくて、私が好きと伝えても、「好きっていう感情がわからない。。」と困惑する表情をしていた彼。でも、彼も人を好きになった。好きになれた。心の底から。
彼も私みたいに、好きな人ができたらわけもわからなくなって本能のままに行動してしまうような、ちゃんと人間らしい人間だった。
うれしかった。人を好きになる気持ちを分かってくれて。そうすればちょっと私の気持ちもわかってくれるのかもしれない、とまた自分勝手な気持ちも混じりながら、
でも人を好きになるって素晴らしいことだから、同じ景色でもキラキラ輝いて見えるから。
それをわかってくれてよかった、と本当に思ったんだ。
そして目が覚めた。
もう終わりだな、と思った。メールも返ってこないしいいかげんな態度ばかり取られている。それは、彼がそういう人だからじゃない。相手が「私」だからだ。
ついに、彼から卒業しなければいけない。
そんなこともうとっくにわかっていた。気づいた、というより、やっと「納得」できた、という方が腑に落ちる言い方かもしれない。
納得するのが遅すぎるのはわかっている。年齢的にも期間的にも。あきれるほどに、何もかも遅い。でも、今度こそはっきり、しっかり思った。もう諦めようと。
でも、ありきたりだけど、彼を好きになったことを、このあきらめの悪い7年間を、後悔はしていない。彼のおかげで私はたくさんたくさん成長できたから。本当に好きになれてよかった。全身全霊でありがとう、と思った。直接伝えることはもうないけれど。
夢の中の彼の恋はとんでもないものだったけれど、ひょっとしたら現実の彼は今頃素敵な恋愛をしているのかもしれない。そうだと良いな、と思えた。
私の大好きな人。大好きだった人。
彼も、いつか誰かのことを大切に思って、その人にも大切に思われてほしい。彼と一緒に幸せになるのは私じゃなかったけど、彼が心の底から大切に思える人と、ずっとずっと幸せに暮らしていけますように。
そして私もいつか、彼以上に大好きな大好きな大好きな人に出会って、
その人とずっとずっとずーーーっと、幸せに暮らせますように。
最後に。思い出す、大好きなドラマの、大好きなセリフ。
人は、出会うべき時に、出会うようになっているのかもしれない。誰もが、どこかで誰かとつながっていて、そのことに、気付かないだけかもしれない。伸ばした手のその先に誰かがいて、いつか一緒に同じ空を見上げるときが来るのだと、そう思うと、一人で見上げる空も、さみしくない。
待っててね、いつか出会う、私の大切な人。