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#0.仁王
東方
仁王の富士。
力士としては筋肉質なその身体。
度重なる怪我を乗り越えて幕内優勝回数41回、58連勝など数々の記録を打ち立てる。四股名の通りニオウの異名をとる小さな大横綱。
西方
鷹花山。
相撲王子と呼ばれた元大関を父に持ち、十両昇進、新入幕の最年少記録を塗り替える。共に入門した兄、鷲花山と将来の相撲界を担うであろう19歳の若武者。
夏場所初日、結びの一番。
両者の対戦が実現した。
休場明けの仁王の富士。
いつもと変わらぬ表情で淡々と仕切りながらも目の前の若者を値踏みするような鋭い視線を送る。
一方の鷹花山。
国技館の観客達、いや、テレビ・ラジオの視聴者達にも・・いやいや、日本中に伝わるほどの緊張感を隠すことなく、それでいて憧れであった大横綱を真っ直ぐに見つめる堂々とした仕切り。
制限時間いっぱい。
全身を真っ赤に染め、気合い充分で最後の塩に向かう鷹花山。
背筋を伸ばし独特の仕草で塩を蒔く仁王の富士。
行司の軍配が返り、館内のボルテージは最高潮。
そして・・
新しい時代が始まった。
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