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さわやかなハンバーグ

静岡県に訪れたならこれを食べずには帰れない。熱狂的ファン続出中の「さわやか」のげんこつハンバーグについて。

たかがハンバーグ、されどハンバーグ

もしも、死ぬ前に何を食べたいかと聞かれたら、ハンバーグかカレーかラーメンで迷う。

もしも、「二度と同じものを食べられない代わりに世界各国の様々な美味しいものを食べられる人生」と、「一生ハンバーグかカレーかラーメンしか食べれられない人生」の2択を迫られたら、私はきっと後者を選択する。

もしも、「一生ハンバーグが食べられない人生」と「一生ハンバーグしか食べられない人生」の選択を迫られた場合は、かなり迷うことになると思う。

それくらい私はハンバーグが好きだ。

洋食屋へ行けば「ハンバーグください」
定食屋へ行けば「ハンバーグください」
ファミレスへけば「ハンバーグください」
ハンバーグ屋へ行けば勿論「ハンバーグください」

ハンバーグの美味しいお店は星の数ほどある中、どこを一番と決めるのは容易ではない。

母が作ったケチャップとウスターソースで煮込んだ雑なハンバーグも好きだし、洋食屋さんのデミグラスソースのハンバーグも美味しい。ファミレスの和風ハンバーグが好きな時期もあった。

ハンバーグの数だけ味わいがあり、個性がある。
どこが一番かなんて口にするのは、これまで食べたハンバーグに大変失礼だとは思う。

思うけれども、そこをぼやかして生きてゆくと逆に一番だと思っているハンバーグにも失礼ということになる。

なのでここできっぱりと宣言しましょう。
私のハンバーグNo.1は「さわやか」のげんこつハンバーグであると。

さわやかは突然に

和歌山で生まれ育った私だが、なぜか静岡県がとても好きだ。

まず富士山が立派だし、お茶畑も美しい。
熱海は街中が海の香りだし、伊豆のシャボテン公園はサボテン好きにはたまらないし、浜名湖周辺の適度なリゾート感もいい。
海もあって山もあって、人々はなんだかおおらかそうで、これまで数えきれないくらい旅をしたが、静岡には良い思い出しかない。

そんな静岡にハンバーグが評判のファミレスがあると、仕事関係者から情報を得たのは今から10年ほど前だろうか。

静岡県内にしか展開していないそのファミレスこそが私のNo.1ハンバーグを提供する「さわやか」である。

しかし存在を知ってからも、浜松餃子だったり桜エビだったり、その土地でしか食べられないグルメを優先したため、なかなかさわやかは選択肢としてあがらなかった。

ようやく巡り合えたのは、その存在さえも忘れかけていた数年後の2013年のゴールデンウィーク。
マイカーで東京まで旅に出た際に、経由地として静岡市へ宿泊した時のことだ。

その旅は東京に行く以外はほぼ行き当たりばったりの内容だったため、静岡滞在中のご飯についても特に考えていなかった。

静岡駅周辺のホテルへチェックインしてとりあえず食べログを検索したところ、駅の商業ビルに「さわやか」を発見したのだ。
遂に、さわやかのハンバーグと対面する機会を得たのである。

ハンバーグを超えたハンバーグ

和歌山から東京まで車で往復するという体力勝負の旅行だったため、「さわやか」に入店したときはすでに身体はボロボロ。
正直ご飯より先に寝たいくらいだったが、幸いゴールデンウィーク中にも関わらず待ち時間は短く、入店から15分程度で席に着いた。

どれを注文するかすでに決めていたが、一応一通りメニューを眺めてから、げんこつハンバーグを注文した。

店内は美味しい匂いで充満しており、家族連れやカップルが楽しそうに、満足そうに食事を楽しんでいる。
どうやらほとんどの人がハンバーグを注文しているようだ。

注文から数分して、いよいよハンバーグを迎える時がきた。
油が衣服に跳ねるのを防ぐため、ナプキンを広げて身体の前で両端を持つよう店員さんから促される。

そこに熱々に熱した牛の鉄製プレートにのったハンバーグが堂々とやってくる。

ものすごい勢いで油がテーブルや床にじゅうじゅうと跳ねる中、店員さんが大きなナイフとフォークでハンバーグを手際よく二等分にカットし、切った断面を鉄のプレートにぎゅうと押し付ける。
まるで拷問だが、超レアなハンバーグが香ばしく仕上がっていく様子に大興奮である。

初めて食べる戸惑いと念願叶った嬉しさで、すぐには手を付けず、まずじっと目の前のハンバーグを見つめた。
次におそるおそるナイフとフォークを手にして、ここでもう一度だけじっと見つめる。
いよいよ決心してハンバーグを一口サイズにカットして口に含んだ瞬間、旅の疲れも忘れるくらいの美味しさにしびれた。

咀嚼する度に美味しさの波が怒涛のごとく押し寄せて、味蕾に打ち寄せる。

かなりレアな焼き加減のハンバーグはお肉の赤さがほとんどそのまま残っていて、表面と中の方では少し温度差を感じる。
生肉が苦手な人は敬遠するかもしれないが、不快な生々しさではなく、生臭さも感じない。

その食感はハンバーグでありながらステーキを食べているかのような歯ごたえと弾力で、肉々しい旨味が凝縮されている。
ハンバーグだけどハンバーグじゃない、かといってステーキでもないので結局のところハンバーグで間違いがないが、問題はそこではない。

美味しい。とにかく美味しい。
こんな美味しいハンバーグは初めてだ。

あまりにも舌が幸福で、食べ終わることに恐怖すら感じるレベル。

こうして、初対面を終えた私は、見事にこの美味しいハンバーグに夢中になり、それ以後静岡へ出かける際にはスケジュール的に厳しくても可能な限り訪問した。

思い出す度に今すぐ新幹線に飛び乗りたい衝動に駆られるほど、さわやかのハンバーグの大ファンだ。

できれば関西にも出店してほしいところだが、大好きな静岡へ行く時にしか食べられない味、という希少感も美味しさの秘密かもしれないので、そのまま静岡県内に出店を留めてほしい気もする。

そろそろ、静岡旅に出なければ!

関連情報

さわやか公式サイト
https://www.genkotsu-hb.com/

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伊都佐知子
オリジナルのイラストや写真と共に、旅やグルメについて語ります。サポートしたいと思えるようなコンテンツを生み出せるよう、コツコツ楽しみたいと思います。

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