石丸現象とは何だったのか
石丸現象の衝撃
もうすっかり昔の話になってしまった感じはありますが、7月7日に行われた東京都知事選で、特定の政党の支援を受けていない石丸伸二氏が165万票あまりを集めて、第2位になったのは本当に衝撃的でした。
選挙戦序盤の6月23日の朝日新聞の情勢分析では「小池氏が先行 蓮舫氏追う 石丸氏は苦戦」という見出しで伝えています。
でも、蓋をあければ、蓮舫氏にも大差をつけての2位。
石丸氏自身は「石丸構文」とかででだいぶネタにされて、ちょっと新鮮味が薄れてきた感はありますが、それにしても、いきなり(という印象なんです)出現した160万人もの政治的なかたまりは、いったいどんな人たちなのかが気になります。
気になりすぎて、Freeasyというパネル調査ツールを使って、アンケート調査をしてみました(1人1問10円という価格設定なので、お小遣いの範囲でも、少しは調査ができそうです)。
結果的にはたいした事は分かってないのですが、「夏休みの自由研究」くらいの気分でお読みください。
これまでの報道では…
選挙の情勢調査などを手掛けるJX通信社が、投票1週間前のインターネット調査を元に石丸支持層のプロフィールを描き出していま
ざっくりいうと、こんな感じです。
投票の参考にしたのは「YouTube」。
政治不信が強く、特に旧民主党政権に対する評価が低い。
「防衛力強化」をやや支持する一方、「選択的夫婦別姓」もやや支持しており、一般的な「左右」のイデオロギーではとらえきれない。
一方、朝日新聞は、石丸陣営の選対事務局長を務めた藤川進之助氏に実に興味深いインタビューを行っています。
ここまで言っちゃっていいの!? という本当に面白いインタビューなんですが、石丸氏は「細かい政策をまったく言わない」。中身がないという批判を恐れずに(分かった上で)「政治を正すんだ」という話しをずっとやり続けた。これをやり続けられるのが「尋常な人間ではない」と評しています。
一方で「この手法は1回限りだ。熱はやがて冷める」「やはり幅広い人たちに信頼される政策が必要だ」とも語っています。
この二つの記事を見ると、これまでの政治に不満をいだく層が、特段中味を持たない「変える」というメッセージに、うまく踊らされてしまった、といういささか危険な構図になっているようにも見えますね。
アンケートの概要
Feeasyの調査モニターのうち東京都在住の方2000人に対して、「都知事選で誰に投票したか」を聞くスクリーニング調査を行った上で、石丸氏に投票したという人180人、蓮舫氏に投票したという人200人から自由記述式での回答を得ました(石丸氏と蓮舫氏で回答数が違うのは、それぞれの予測回収可能数の上限が違ったためです)。
アンケートで聞いたのは…
既存の野党への不満
いまの政治で顧みられていないひと
…という2点です。
既存の政治に強い不満があるという前提の上で、どこに不満なのか、どこにスポットライトをあてるべきだと思っているのか、という事を知りたいと考えました。
石丸氏支持層だけでなく、蓮舫氏支持層にまで聞いているのは、比較しないと特徴が浮かび上がらないのではないか、と考えたためです。
回答は自由記述なので、ChatGPTの助けを借りてグループ分けをした上で、最終的には全回答を目でチェックして修正をかけて、それぞれの支持層別に回答数をカウントしています。
※単純にChatGPTに分類させたわけではなく、①どんなグループが浮かび上がるか?、②そのグループを抽出するためのキーワードは何か?を聞いた上で、Google Spread Sheet で機械的に抽出してから、目検で出し入れを行いました。おそらく回答が短文すぎるため、ChatGPTに直接分類させるのは上手くいきませんでした。
既存野党への不満は「批判ばかり」
「既存の野党に不満に思うのはどんなところですか?」と聞いています。
蓮舫氏支持層と比べて特徴的のは、「批判ばかりで建設的な提案がない」という点。似たようなことかもしれませんが「政権担当能力や実行力の欠如」も石丸氏支持層に目立ちます。
統一性の欠如と内部対立(もっと一丸になれ!という事ですね)は、蓮舫氏支持層に多いですね。
顧みられていないのは「子供・若者」
この質問は正直に言うと失敗でした。
「いまの政治でいちばん顧みられていないのはどんな人たちだと思いますか?」という質問をしたのですが、質問の意図が理解されずに、「政治を顧みていない人=政治家や議員」という回答が頻出してしまいました。
だいぶ割り引いてもらう必要はあるかと思いますが、それでも石丸氏支持層、蓮舫氏支持層には傾向に差があるようです。
石丸氏支持層が「子供・若者」をあげる人が多いのに対して、蓮舫氏支持層は「高齢者」をあげる人が多くなっています。また端的に「弱者(社会的弱者、経済的弱者など)」とした人は、石丸氏支持層には少なく、蓮舫氏支持層に多くなっています。
若い世代を向いた具体的政策提言
この結果を単純に読めば、石丸氏を支持した人たちは、「弱者」とまではいえない普通の「若者(じぶんたち)」に向けた、建設的な提言を求めている、という事になります。
石丸氏の選挙参謀が、あえて細かい政策はまったく言わなかった、と語っていることをみると、政策通という雰囲気だけ見せられて、うまく踊らされてるのではないか、みたいな見方もしたくなるところではあります。
踊らされるな、目を覚ませ、的な事を言いたくなる気持ちも分からなくはないです。
「批判ばかりだ」と言われれば、批判は大切だし、対案なんか出せなくてもキッチリと批判すべき事は山ほどある、とも思います。
が、自分たちに向けて、建設的に語ってほしい、というのは、ごくまっとうな(まっとうすぎる)願望でもあります。
その満たされない願望が、160万人規模で噴出したのは、本当に大きな出来事でした。
既存の野党のみなさんは、ぜひ石丸氏の代わりに「中味のある政策をしっかりと言い続け」、そして、それをちょっと良さげに見せるテクニックも身につけていただいたいところです。
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