さんまの塩焼き弁当
夫の仕事の都合で、今、タイのバンコクに住んでいる。
比較的、日本人が多いバンコクで、思った以上に日本の商品も手に入るし、食卓も、ほぼ日本の生活を再現できている。日本人街と言われるエリアのど真ん中に引っ越してからは、さらに便利になった。
電話をかけて、日本語で日本人のスタッフへお弁当を注文すると、なんちゃってじゃない、ちゃんとした日本のお弁当が届くという便利さ。
「ご注文いただいてから作り、できたてをお届けします」
「すべて手作りです」
「無添加の食材で安全です」
というジャパンクオリティも珍しくない。
夫に会食の用事が入ったりすると、自炊をするモチベーションがわかないので、お弁当で夕食を済ませることが多い。
いくつもあるお弁当やさんの中でも、一番よく利用しているお店にいつもの通り電話をかけた。
「さんまの塩焼き弁当をひとつお願いします」
「今、さんまの骨抜きサービスをやっていまして、追加で10バーツ(約34円)いただいてますが、いかがですか?」
「......」
きょとん。
さんまの骨抜き?初めてきいたサービス。私、必要か?
と、頭の中で早口に考えて、
「うーん、とらなくて大丈夫です」
とこたえた。
そして今度は電話の向こうできょとんとした空気。
「......」
が、あってからの「かしこまりました」と。
10バーツをケチる日本人って珍しいのかな?でも、私、ケチったつもりではないの。本当に私は、子供の頃からさんまの骨を面倒だと思ったことはない。
カニだったら、誰か殻からはずした身をまとめて私のお皿にのせてー、と正直思ってしまうのだけれども。
さんまの骨が苦手な方って、わりと多いのかな?
小さな子供がいるファミリー層が多いから、このサービスを喜ぶ人が多いのかな?
10バーツがお弁当詰めのスタッフのチップとなっていたりするのかな?
とか、さっきのスタッフの「......」について、ひきずる私。
いつも、お弁当は、タイ人の配達係の方が届けてくれる。言葉が通じなくても、問題ない。日本語で書かれた明細を確認して、代金を支払うだけ。
渡された明細を見ると、骨抜き不要といったにもかかわらず、骨抜き要の扱いとなっていて、10バーツもしっかり、とられているではないか!
配達員には、私のカタコトの英語では通じないだろうし、かといって私はタイ語は話せないし、というハードルがあって、それに何より、たったの10バーツだし、という思いもあって、何も言わずに支払った。
やっぱり、今日はその10バーツを払うべき日だったんだ!
とちょっとした運命的なものすら感じて、いざ、お弁当のふたをあけてみると......
骨抜きしていないさんまがそこにいた。
10バーツ。たかが10バーツ、されど10バーツ。
いやはや。
さんまの塩焼き弁当、もちろん、美味しかったです!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?