御堂関白記(長和元年 1012年十一月二十二日)から。#古記録

二十二日、乙卯。五節童女を見る後、退出す。標を見んが為、女方と相共に行く。而るに早く引くに依り、路より還り来たる。又、参入す。戌剋。行事・小忌の上、皆、障る由を申す。左衛門督、卜に当たる。而るに余、内弁を奉仕す。座次、便無し。仍りて身、候ずと雖も、仰せられず。而るに尚ほ小忌、候ぜず。仍りて之を奉仕す。承明門より御出し、昭訓門に入る。南腋の間の壇上に於いて、腰輿を召し、廻立殿に遷御す。西北を経、南面の戸の下に御輿を寄せて下り給ふ。内侍の女方等、候ず。件の殿は五間、東より二間に戸、東面の北の間に小戸、中隔有り。蓬戸を立つ。東二間は御浴所、西三間は御在所、中央の間に御床を立つ<件の床は大たるベし。而るに小床を立つ。是れ失なり。>。東一間に御船を居う。其れ東西の妻。東面の壁代の筵を穿ちて、樋を懸く。此れより御浴船に供す。西に大床を立つ。或いは小床。召しに依りて、之を供す。即ち御浴し了りて、祭服を着し、神殿に入る<初めは帛の御服。>。筵道、布の単、常のごとし。御前は御巫・猿女・中臣・忌部。余、中央に候ず。車持、笠を取り、子部・笠取、綱を取ること、例のごとし。左近中将公信、御釼を持ち、右近中将雅通、御筥を取り、左右に候ず。御釼を持ち、右近中将雅通、御筥を取り、左右に候ず。神殿の南面の御簾を開き、入御す。件の殿は南北の妻なり。南の二間を暫く御所と為し、北の三間を神殿と為す。其の内の畳等、式のごとし。西辺に八足を二脚立て、神服等を置く。神物を供せんと欲する間、左近陣の小忌の平張に着く。南門の東腋なり。此の間、風俗、并びに氏々の歌舞を奏す。外弁、子細無し。事了りて、廻立殿に御す。御前の次第、初めのごとし。又、御浴を供す。主基に御す。悠紀のごとし。神物を供すること、并びに神殿、皆、之に同じ。事の次いで、進退し給ふ儀、又、同じ。廻立殿に御す。帛の御装束のごとし。鳳輦に御し、竜尾を昇り、光範門より出で、不老門に入る。清暑堂に御す。
(御堂関白記)
出典。
国際日本文化研究センターさま
摂関記古記録データベースから。

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