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仕組みの寿命予測を忘れないで、

こんにちは。

最近、あちこちでよく見かける「仕組み化」という言葉について考えてみました。(どうぞ、「偏屈な人間だな」と思ってください)

世界中で愛されてる言葉、”仕組み化”

「仕組み化しました」と聞くと、なんだか素晴らしいことのように感じますよね。「仕組み化が大事です」と言われれば、まあ、それはそうでしょう。

でも、この言葉はあまりに頻繁に使われすぎていて、意味の曖昧性が強い言葉になっているように感じます。
言葉の定義は、こんな感じでしょう。

組織内の知識や業務プロセスを体系化し、標準化された方法やシステムに変換する過程

Perplexityに出してもらった

マニュアル作成、システム導入や開発、ワークフロー構築、ダッシュボード作成 etc. 、こういったものは仕組みを構築する手段としてよく見ます。

私は怠惰というか横着な人間でして、自分の仕事をどうすれば減らせるか、どうやったら複利を効かせられるかみたいな思想で生きてるので仕組み化は割と好きです。

仕組みを作ることは素晴らしいという盲信

仕組みを作ると、褒められます。誰かしらのためになるので感謝されることも多いです。ネットを見れば「仕組み化が大事」という話があちこちにあります。

仕組みを作ることは素晴らしいことだと。

でもね、私にはこう思えてしまうのです。これって「仕組み化が大切だよ」って言って、その後に「こういうツールがあるよ」「こんな本があるよ」って宣伝するためのマーケティングなんじゃないかと。

「爆発的な効果を生む仕組み」が素晴らしいのであって、「仕組みを作ること」は別に素晴らしいことじゃないんですよ。

仕組みとは、成果を効率的にあげるため、問題を再発させないため、etc.色々ありますが、仕組みは課題解決のソリューション(アウトプット)です。
そう考えると、仕組みを作る仕事の結果、得られる成果を明確にしておく必要があります。成果がない、明確でない仕組み化は自己満足なアウトプットです。
こういう活動のことを「趣味」と呼びます。仕組みを作ることは素晴らしいという盲信が、仕事と趣味の境界を消し去ろうとしていることに気づく必要があります。

寿命を予測する

仕組みは、永遠には使えない。
時間の経過、環境の変化によって徐々に陳腐化し、いつかは不要になる。
特にスタートアップのような環境変化が大きい場所においては陳腐化までの時間はがめちゃくちゃ短い。

生み出した仕組みは基本的に短命である、ということが前提にある。

もちろん、作り方次第、メンテナンス次第で伸ばすことは可能ですが、それでも大半のものは寿命2年がいいところでしょう。10年も使える仕組みがスタートアップの中にあったら逆に不安になります。

仕組みを作ろうとする時、寿命を予測する、ということが大切になります。

  1. 何年使えるだろう?って寿命を予測する

  2. その仕組みによって得られる成果の量を予測する

  3. 成果に対するコスト = 投資対効果が成立するかを予測する

イメージしやすいように具体で超絶シンプルにしてみます。

本当に仕組み化すべきか?

具体例で考えてみましょう。

ケース1:Aさんのxxxってタスク、毎月手作業でやってて大変そうだなぁ。自動化の仕組みを作ってあげよう。

  1. 寿命を予測:この先12ヶ月くらいは発生しそうな仕事だな。

  2. 成果を予測:自動化したら、Aさんは毎月30分の時間が浮きそうだな。

  3. 投資対効果を予測:

    1. 成果:12ヶ月 x 30分 x 1人 = 6時間の効率化。

    2. コスト:仕組みづくりに5時間かかり、メンテナンスに毎月1時間必要とすると、5時間 + 12ヶ月 x 1時間 = 17時間のコスト。
      (作った仕組みはメンテナンスが必要ってことは忘れられがちですが大事なことです)

    3. 年間6時間の効率化に対して、17時間のコスト。

つまり、6時間の効率化に対して17時間のコスト。人件費を時給1万円(税金や社会保険費用など含む)とした場合、17万円を投資して6万円の効果。これは投資に見合わないですね。永遠に回収できない投資です。

Aさんの時間を6時間浮かせたことで、Aさんが別の仕事をできるようになった!と言えますが、自動化の仕組みを作らなくても、毎月30分の作業を代わりにやってあげるだけで良く、仕組み化なんていらない。

プラスのレバレッジが効くか?

ケース2:部署の全員が毎日見る重要指標をすぐに確認できるようダッシュボードを作ろう。

  1. 寿命を予測:部署の重要指標はこの先24ヶ月くらいは変わらないだろうな。

  2. 成果を予測:経営へのレポーティングの工数や部のMTGでの前提数字を揃える手間がなくなるから、部署全員(15人)の時間が毎週30分浮きそうだな。

  3. 投資対効果を予測:

    1. 成果:24ヶ月 x 30分 x 4週/月 x 15人 = 720時間の効率化。

    2. コスト:仕組みづくりに160時間かかり、メンテナンスに毎月2時間必要とすると、160時間 + 12ヶ月 x 2時間 = 184時間のコスト。

    3. 年間720時間の効率化に対して、184時間のコスト。

こちらはどうでしょう?
184万円をかけて720万円の効果を創出しています。爆発的な効果がある仕組みなのでやる意味があります。

さらに、使う人が増えるほど増えるほど効果は大きくなり、投資回収期間は劇的に短くなります。


しかし、

  • もし、クオーター毎に変わりそうな分解したKPIを対象にしたダッシュボードだとしたら…寿命は2年じゃなくて3ヶ月となる。

  • もし、欲しい情報に直結でアクセスできずに他のデータを参照する手間が残っていたら…効率化効果時間は10分になる。

  • もし、部署全員ではなく2人しか活用できないようなダッシュボードだったら…対象は2人に減ります。

そうするとどうなるか?
成果は、3ヶ月 x 10分 x 4週/月 x 2人 = 4時間の効率化。
720時間から4時間になっちゃいました。永遠に回収できないどころか大赤字爆死投資の誕生です。

いい仕組みは凄まじいレバレッジが効きますが、予測が甘い、アウトプットの質が低いと全くレバレッジが効きません。

何が言いたいかというと

仕組み化の成果を予測するためには、その寿命を予測しないとね、ということ。
これによって初めてアウトプットの投資対効果をイメージできるようになります。

仕組みって、作った時点で評価しがちです。
こういう仕組み作りました、xxxの効果がでました。ってね。

違います。ある時間軸において生み出した価値の総和が成果なので、評価することができるのは作ったときではなく、未来のある時点のはずです。

でも、未来のある時点で評価するってほぼない。忘れてるし。
だからこそ、仕組みを作る前に予測が必要になるのです。
最低でも成果 per コスト > 3にならなければ、やらないほうがいいです。

仕組みという武器を作るとき、その仕事の寿命はどれくらいあるかな?って少しだけ立ち止まって考えてみましょう。

そしてもう一点、爆発的な効果を生み出す仕組みとなるかならないか、この運命は作る前にほぼ決まります。
その鍵を握るのは課題設定です。
こっちの話はまたそのうち。

では、またー。

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