新・サンショウウオ戦争

第三章 世界戦争

9 日本海側原発誤爆
 ●月×日午前九時二十四分、福井県にある日本原子力研究開発機構・敦賀本部に警報が鳴り響いた。制御パネルは、半世紀前から運転を休止していた高速増殖炉かんざんに異常が起こっていることを示している。この“かんざん”は建設当初からトラブルが絶えない原発で、廃炉作業に入って後も、この手の誤報が警報装置の不備により年に数回は起こっていた。当直の職員は一瞬、「またか。」と反射的に警報装置の電源を切ろうとしたが、ふと嫌な予感に動かされてモニター画面を起動し、凍りついた。外部遮蔽容器の周囲が白くけむっている。水蒸気が発生しているか、火災が起こっているとしか考えられない。だが、なぜ運転休止中の原発でこんな突発事故が? うろたえるうちにも画面内の白さは増していった。警報は同市内の緊急時支援センターにも届き、折り返し、「何事が起こっているか」との問い合わせが戻ってきた。以下、当時の通信記録である。

原子力緊急時支援センター長(以下、センター長)「もしもし。こちらのインディケーターでは火災が起こっているとありますが、具体的にはどうなっておりますか。そちらの様子を詳しくご報告願いたい。」
かんざん廃炉チーム敦賀本部宿直職員(以下、宿直)「こちらパネルでも火災を示しています。発電装置周りの建屋が破損しているようです。原因はいまだ不明。ああっ、」
センター長「どうされました?」
宿直「なにかが爆発したようです。うわっ、まただっ」
センター長「ちょっと待ってください。(ここでセンター長は他との通信をしており、一時音声が途切れる)……聞こえますか。かんざんチーム?」
宿直「は……きこえ……ああっ。だめだっ、センター長……、」
センター長「ただちに退避してください。ただいま国の方から報告がありました。何者かがかんざんを砲撃しているようです。ただちに退避してください。」
宿直「あ、いや……火はどうしたら……、うわあああ、」
センター長「どうしました。かんざんチーム、かんざんチーム。応答してください。」
 以下、無言。


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