新・サンショウウオ戦争
第三章 世界戦争
3 第二の動画
翌日、先の映像が一〇〇万ヒットを越え、世界各地の政府関係者の耳にもその内容が届きはじめた矢先、同じ製作者の手になると思われる新たな動画がアップされた。前回と同じ場所と思われるスタジオで、まず女性アナウンサーが切り出す。
「ハローハローハロー。ヒュマンダ・ドミニオン・チーフ・スピーキング。人間の皆さん、緊急放送です。ハローハロー、こちらヒュマンダ・ドミニオン、チーフ・ヒュマンダ、スピーキング。昨夜、ヒュマンダ・ドミニオン最高議会で決定した事項をお知らせいたします。」
画面切り替わって、自称チーフ・ヒュマンダ。今回も勲章をかざったたすきを斜めがけにしている。
「ハロー、人間のみなさん。こちらヒュマンダ・ドミニオン・アーミー。世界の海からこんにちは。昨夜、われわれの最高議会で最重要課題が決定した。」
チーフ・ヒュマンダはそこでいったんことばを切り、あるかなしかの目を細め、背後の世界地図をポインターで示した。
「われわれはHD(ヒュマンダ・ドミニオン)の首都をアジア北東エリアに定めることにした。具体的には日本列島および朝鮮半島、ロシア極東地域に囲まれた日本海を中心とするエリアである。したがって、付近の住民はただちに他所に移動していただきたい。日本人および朝鮮人だっけ、韓国人か、どちらでもよろしい、その人たちとロシアのこの地域に住むヒトは三日以内にロシアの奥地なり中国なりモンゴルなり、何だったらアメリカ大陸なり、どこなりと移動せられよ。親切心から言い添えておくと、東南アジアは避けられたほうがよい。南シナ海を囲む地域は次の段階すなわち一年以内にわれわれの棲みかとなる。ハローハロー、これはご案内ではなく警告である。」
「以上、チーフ・ヒュマンダのおことばでした。」
再び女性アナウンサー登場。
「では、ここで音楽をお聞かせいたします。作曲、R・ミッチェル。吹奏楽曲“海の歌”でございます。」
ここでアナウンサーの顔から、前回と同じイメージ映像に切り替わる。