新・サンショウウオ戦争

第三章 世界戦争

7 第三の動画
 日本海海戦が午前中でほぼ終了したその十時間後、案の定、第三の動画がインターネット上にアップロードされた。
 おなじみになったスタジオで、これまたおなじみの女性アナウンサーが切り出す。
「ハローハローハロー。ヒュマンダ・ドミニオン・チーフ・スピーキング。人間の皆さん、緊急放送です。ハローハロー、こちらヒュマンダ・ドミニオン、チーフ・ヒュマンダ、スピーキング。」
 画面切り替わって、チーフ・ヒュマンダ。今回はあいさつもそこそこに、があがあ声を張り上げた。
「日本政府および韓国政府は無駄な抵抗をやめられるがよい。われわれの軍はすでに日本海、……東海? どっちでもよろしい、この海域への突入に成功した。ここに、HDの首都建設開始を宣言する。」
 チーフ・ヒュマンダはここで一息置き、声の調子を整えた。
「また、アメリカ合衆国およびロシア連邦、中華人民共和国の政府に申し上げる。われわれHDはあなたがた人間の作った国ひとつずつと別々に交渉するつもりはない。
 アメリカ政府よ、今後日本海問題に口出しをしない代わりにメキシコ湾には手をださないでほしいとのお話、お断りする。メキシコ湾は地形状、早晩われわれHDが割譲を要求する地域になる可能性が高い。
 ロシア政府よ、サハリン以西はHDに、オホーツク海以東はロシアにという妥協案は残念ながら却下させていただく。オホーツク海は第二次殖民運動の候補地にすでに挙がっている。
 中国政府よ、日本海およびその沿岸問題には目をつぶるが、東シナ海・南シナ海への進出は許さないとの恫喝、しかと受け取った。だが残念ながら、同海域もオホーツク海同様、次の殖民が行なわれる予定である。
 各国政府に申し上げる。今後、個々に連絡をいただいても、お返事はしかねることをここにお伝えしておく。また、そのようなご連絡内容はどのような内密なものであれ、全世界に公開することも申し添える。交渉は、ヒトの全権代表を立てたうえで、会議の場を設けていただきたい。」
「以上、チーフヒュマンダのおことばでした。」
 女性アナウンサー登場。
「では、ここで音楽をお聞かせいたします。作曲、アレクサンドル・グラズノフ。交響詩『ステンカ・ラージンの歌』作品13でございます。」
 チェロとコントラバスの力強い響きが鳴り始め、日中の日本海海戦の様子がいくつか映画のシーンのように画面に映し出される。


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