新・サンショウウオ戦争

第二章 文明の衝突

14  混戦
 公海か領海か? 諸説入り乱れる南太平洋・サラマンダー自治領海域(週刊キンミライ記事)
 サラマンダー自治領を主張する南太平洋上の海域に多数の外国船が出没しはじめて数年が経つ。初めて報告された五年前には年間百隻程度が確認されており、そのほとんどが中国船籍の漁船だった。昨今はその数千隻を越え、なかには中国船を装った日本、韓国、北朝鮮などの船も混じっているとみられる。当初はこの海域におけるウナギの稚魚の捕獲が目的だったと言われているが、現在すでに乱獲によりこの周辺のウナギは根こそぎ状態になっているため、各国船舶の目的は漁業ではなさそうである。一説にはヒュマンダ帰郷運動を推進するアメリカを牽制する狙いともいわれている。
 そこに先月末、サラマンダー自治政府が領海侵犯に対する処置の厳罰化を発表した。同自治領の排他的経済水域(EEZ)を許可なく航行する船舶は拿捕し、一隻につき一律800マルル(日本円にして1千万円)の罰金を課す。船長・船員については、同自治領司法機関による取調べを行った結果、政治的な意図のない者のみを釈放し、少しでも疑いのある者は現地に留め置いてさらに詳しく審査を行なうとのこと。
 これに対して、中国・北朝鮮および日本・韓国の四カ国はそれぞれ二カ国ずつが共同声明を出した。言い回しは違うがほぼ同じ内容で、いわく「“サラマンダー自治領”は未だ国際的に認められた政治体ではなく、よって南太平洋上のその海域は公海である。国際慣習法上、どの国の船舶も航行を妨げられるべきではない。」
 今後この海域での紛争勃発は不可避と思われる。

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