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5月の記録(イベント編)


台北の良いところ

日本では地方都市に住んでいるので、
新しい本の発表会とか、
かなり専門的な事前知識がないと
もれなく睡魔が襲ってくるようなイベントが少ない。

実際自分でも主催してるけど、
対面にするとあんまり人が集まらないなという印象。
やっぱりそういう時、関東、関西っていいなって思う。

前置きはいいとして、
台北にはそういうイベント(しかも無料)が
溢れるほどあって、毎回どれに行くか迷う。
というわけで、忘れないうちに五月のイベントについて
ちょこっとだけ感想を書き込みたいと思います。

5月2日:国史館(Academia Historica)

国史館は中華民国の歴史研究機関で、総統府直属機関として国史編纂、史料整理、史料文物の収集と保存、総統及び副総統の文物管理を主要な業務とする場所です。二箇所(新店と総統府の裏)にあるのだけど、よく総統府の裏に行きます。
(総統府の見学ついでに企画展示を見に行くのもおすすめ。)

毎月いろんな講演が行われているのですが、
5月2日はどうしても外せなかった講演でした。

『建構學科領域的摸索─關於臺灣政治思想史和政治史研究的一點反思』

訳としては
『学問領域構築の模索-台湾政治思想史・政治史に関する考察』
ですかね。(はい、適当。)
この業界で(どの業界だよ)知らぬ人は多分いないであろう、
呉叡人先生(中央研究院台湾史研究所副研究員)の講演でした。

呉先生と私が出会った時の話と私の呉先生への愛を書くと
多分凄まじく長くなるので省略しますが(苦笑)
先生は超絶忙しい人だというのに
私のことをいつも気に掛けてくださっていて、
本当に感謝しております。

自分が博士を取った後の目標の一つが
呉先生のところで研究することだったし、
それが今いろんな人のお力を借りて叶っていることを考えると、
ちょっと自分を褒めてあげたいぞ。

講演の内容としては
呉先生がどうやって自分の学問分野を開拓していったのか、
その過程のお話だったのだけれど、私からすると

「えっ。(天下の)呉先生ですよ。学問領域なんぞいらんし?」

とかって勝手に思うわけですが、確かに難しい。
日本では「思想家」って書かれてるもんなあ。
でも台湾に「思想家」っていないよねーって呉先生は言う。
先生曰く、思想家がいるのは日本かヨーロッパらしい。

私からすると先生はすでにもういろんなことを超越しすぎてて
(無法形容)な存在です。先生に肩書きはマジいらない気がする。

呉先生に関しては、日本語訳の書籍が二冊出ているので、ご参考に。
どっちもとてつもなく難しいですが、すごい面白いぞー。

『台湾、あるいは孤立無援の島の思想』(みすず書房、2021年)
『フォルモサ・イデオロギー――台湾ナショナリズムの勃興 1895-1945』
(みすず書房、2023年)

で、ここまで書いて、凄まじくこの投稿が長くなる気がしたので
サクサクといきたいと思います。
(あー、でも全然サクサクいかない案件だらけなんだが。)

5月8日:中央研究院(Academia Sinica)

中央研究院は、中華民国総統府直属の最高学術研究機関です。
理系文系いろんな分野の研究者がここにいて、
現在私もお世話になってます。

この日は社会学研究所の
金融與台灣社會」研討會』(金融と台湾社会)に参加。
大好きな先輩が発表者だったり、
終わった後は社会学研究所の知り合いを訪ねて
いろんな話をしたり、先輩と食事に行ったり、楽しい1日でした。
ん?内容?私に金融の話は無理。w

5月11日:聯經書房

『『抵達安康之後』:安康社區,移民的過去、現在與未來』
(安康にたどり着いてから:安康社区、移民の過去、現在と未来)
という書籍の著者のお二人を招いたトーク。

著者は高雅寧先生(政治大学民族学部副教授)と
羅漪文先生(清華大学中国文学部兼任助理教授)。

1980年から1990年台に
共産主義のベトナムから移民してきた華人たちの生活の話なのだけれど、
台北で1番貧しいと言われていた木柵にある安康社区で
彼らがどうやって生活(主に仕事)をして、
中国語を学んだりしてきたのか
細かい話を聞きたかったのだけれど、
やたら出てくる「USR」っていう
キーワードに気をとられるというかなんというか。

で、「USR」ってなんぞやって話なんですが、
「大學社會責任(University Social Responsibility, USR)」
ってやつらしい。

なるほど・・・これどうも研究者が”作文”すると
教育部(文科省に相当)からお金が出るみたい。
なんだろ、若干もやつく。(苦笑)日本のSDGs押しみたいな。

こういう資金があるから
光が全然当たらない場所に光を当てられることがあることは
十分にわかっていても、
書籍のまとめ方を見るとやっぱりもやつくのよ。
こういうのって相変わらず”バランス”が難しい。

5月17日:国立政治大学

この日は政治大学歴史学研究所主催の
『轉型正義:我們的責任與困境』(移行期正義:私たちの責任と苦境)
という台湾大学の周婉窈先生の講演でした。

周先生ももうね、知らない人はいないという
台湾史のキラ星みたいな先生なんですよ。
自分が台湾大の学生だった頃は、
恐れ多くて声もかけられなかったという。
(自信なさすぎだろ、自分というのは自覚してます。)

移行期正義ってあんまり日本では馴染みがないワードで、
それに関しては皆様グーグル先生に教えてもらってほしいのですが、
結構前からヨーロッパでは議論されていた。
台湾で学生やっていた時もよく出てくるキーワードだったので
これどうやって日本語に訳するんだろうって思っていた。
(当時日本語訳が定まっていなくって、いろんな人が試訳をしてた。)

これに関しても内容を書き出すと止まらないのでやめておきますが、
移行期正義に関する論点の整理がこの2時間でできたということと、
周先生に緊張で震えながら(ガクブル)で名刺を渡し
お話をさせていただいたこと、
その話の中で私の研究対象に関する
周先生の評価を聞けたというのはとても大きな収穫だった。

しかし、17日の夜に立法院で起こってたのは一体・・・・
ほんとなにやってんだか。(まだ火曜日に続くけど。)

5月18日:女書店

女書店は1994年にできたフェミニストな書店。
で、この日は新しい書籍『臺灣性別100+問』の出版記念講演でした。

『臺灣性別100+問』(台湾のジェンダーをめぐる100の質問)という書籍で
27人の研究者や専門家がジェンダーあるあるの質問に答えるというもの。

登壇は、台湾大学政治学部の黄長玲先生、
世新大学ジェンダー研究所の李培文先生、
中央大学の客家語文、社会科学部の姜貞吟先生。
高雄医学大学の余貞誼先生。

土曜日、いいお天気、14時から17時という長丁場にもかかわらず、
お店いっぱいに人が集まっていてびっくり。
観客が若い!男性も1割程度いる!
日本で同じことやったら客層全然違うな。

台湾ってジェンダー平等がめっちゃ進んでいるイメージが
あると思うのですが、先生方は誰一人満足してない。(苦笑)
日本人の私としては、日本の残念な状況から考えると
マジ羨ましいんだけど、としか思わないんだけどな。
差が開きすぎてて草。日本頑張るしかないな。はい。

と言った感じで5月のイベントは来週一旦日本に仕事しに帰るので終了。
本当は2週間抜けてる間もいろいろあるんですが、
ご縁がないということで。
来月もまたいろいろありそうなので、記録していきます。





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