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悲しき大好物

あなたの家の猫ちゃんの大好物はなんですか?
チュール?かつおぶし?フリーズドライささみ?
うちの子たちももちろんそんなおやつは大好き。

ただ、うちの子が一番好きなものは正直変わっています。

チビちゃんは草、マスオちゃんはビニール袋です。

……え?って思った?
でも2匹はチュールより、ささみより、草やビニール袋に食いつきます。

チビの「草」は、まだわかる人も多いかも。
ネコ科の生き物は猫草と呼ばれるイネ科の雑草を嗜好品として食べる習性を持っているから。
でもチビちゃんの「猫草好き」は度を超えてるんじゃないかな。
全く不慣れなペットシッターさんからでも猫草なら食べたくらい。
(チュールは食べなかったんだって)

ネコ科動物が猫草を食べる理由は諸説あって
昔は「毛玉を吐き出すため」なんて言われていたものですが
今は「寄生虫を消化できないもので押し流すため」という説が優勢です。
確かに、チビのお腹の中にはいっぱいいろんな虫がいました。
そしてチビは冬生まれの山育ち。
母親とはぐれてからそんなにスムーズに狩りができていたとは思えません。
春に芽生えた青く柔らかい若葉を食んで空腹をごまかしていたのかな。
子猫のころのチビにとって、猫草は主食に近かったのかもしれません。

一方マスオちゃんのビニール袋好きは、多分ゴミを漁っていた名残。
2歳から4年間にわたりケージに閉じ込められていたマスオだけど
その前までは野良猫として生きていたはず。
おそらくケージに捕まえた家周辺の住宅街のゴミを漁って生きていたのでしょう。
しかし、ゴミ袋に必ず食べ物があるとは限らない。
時には生ごみの臭いのついた袋をそのまま飲み込んで
お腹が満たされたように勘違いしていたのかもしれません。

今もマスオちゃんのビニール袋への執着はすさまじく
5秒買い物袋を置いてたら食べられてしまうほど。
普段は高いところに一切のらないのに
ビニール袋のためなら棚の上にものぼるほど。

猫草と違って嗜好品としても、ビニール袋は危険すぎて与えられない。
うっかり食べられてしまうたびにひやひや便を観察する日々。
こればっかりは何度注意しても直らない。人間が気を付けるしかない。
おかげで我が家は目につくゴミ箱を袋がカバーできるタイプに替え
目につかないゴミ箱は廃止してしまいました。

2匹の大好物からはつらい空腹の日々が見える。
いかに綱渡りでここまで生きてきたか思い知ります。

一般的にあまりおいしくないらしい健康的なカリカリを毎日嬉しそうに食べてくれるチビとマスオだけど
もうおいしいものもたくさん知って、冷蔵庫におやつを入れていたら、
冷蔵庫を開けるたびに甘えてくるようになったくらい。

だけどやっぱり、草とビニール袋は別格なのです。

これはもう刻み込まれてしまって消えない過去なんだろうなぁ。
それなら私はこの悲しい大好物ごと2匹を愛するね。
ビニール袋を食べさせるわけにはいかないけど
そうであることをずっとずっと覚えておくね。

保護猫には、おうちに来る前に歩んできた猫生がある。
私は猫に何でもしてあげたいけども猫のすべてにはなれないことが
ある意味、とても安心だ。

この子たちはこの子たちの力で生き抜いてきたし、
幸せをつかんだんだもんなぁ。

その逞しさが大好きなんだよ。


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