誰かに「話したくなる」記事を目指して
「誰かに話したくなる科学記事を書いてほしい」
2年前から執筆しているメディアの編集さんに言われた言葉です。
私は当時「なるほど、そういうキャッチーな話題を取り上げるってことね」と、単なるネタ選びの観点しか考えていませんでした。
誰かに「話したくなる」記事というののハードルが
とてつもなく高いと気が付いたのはつい最近のことです。
「読んでくれる記事」でも、「読ませたくなる記事」でもなく
「話したくなる記事」。
つまり、記事を読むという受動的な状態から
何かを話す、発信するという能動的な状態に切り替える記事を指します。
読者の舵を大きく切ってあげるような、そんな内容にするためには
「キャッチーなネタを選ぶ」だけではどうにもなりません。
話したくなる仕掛けが必要なのでした。
そのことに気づけたのがこの記事です。
搾取の連鎖、という言葉だけではわかりにくい主題に
マルチ商法や税金などの身近な例を挙げて書いたこの記事。
引用RPを見ると
「ビニール傘が盗まれる」現象が該当するのでは?
という投稿が多くありました。
最初、この投稿を見たときは
「確かにそっちの例がわかりやすかったかも。しまった。」
と思ったのですが、時間が経つほどにこの内容のRPが増えるにつれ
これが正解だったのかもと思うようになりました。
誰かに「話したくなる」記事になっていたからです。
結局、人が話したいのは自分周りのこと。
難しい論文をわかりやすく噛み砕いて、いろんな例をあげることで
読者がそれを理解し、消化し、自分の身近な話題として「話したくなる」。
それはまさにメディアに求められたものでした。
「話す」という能動的な行動に行きつくにはある程度の自信が必要です。
特にRPなど、公の目に触れる場合ならなおさら。
つまり読者が「なんかちょっとよくわかんないけどこうじゃないかな」程度の認識だと外に「話して」もらえないのです。
「あーもうこれ完全にわかったわ!アレだわ!」
と自分の理解と考えに自信が持てたとき、初めて人は発信します。
私ができるのは、その下地造り。
徹底的にわかりやすく書いて、
身近な話題とつなげるお手伝いをしてあげること。
誰かに「話したくなる」記事は
「話したくなる」ような話題を探すだけじゃなくて
簡単な言葉で噛み砕いた文章とイメージしやすい身近な例を交えること
そして「話せる」ことを残すために「例を挙げすぎないこと」も
大事なのだと気づきました。
私が引き受けている科学記事は
専門家でない人が専門的な内容を楽しめるようにするためのもの。
科学をもっと身近に話題にしてもらうためのもの。
うんうんうなりながら論文を必死に理解してる私だからこそ書ける記事が
やっとわかった気がします。
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