「鬼滅の刃がなんで流行ったか?」への僕の結論を出しておく
なんで鬼滅って流行ったのかをエンタメ人間としては結論付けておくべきかかと思ったので書きます。特に、なんで小学生含めた全年齢で流行ったん?という所を。今更でもいい。もう、頭の中を整理しないと、この未曾有の出来事を過去としてまとめないと、次に進めないのです。あと、仮説を持っておくことで何かに転用できるかもしれないし。なにより、これに仮説を持っていないの、かっこ悪いし。
とはいえ、まず、鬼滅の「物語」からその要因を考えることはしません。敵に対して同情するとか、主人公が長男だとか、大正の雰囲気がいいとか、そんなん、わかんなかったので。あと、僕はエンタメ企業に勤めるサラリーマンで、クリエイターではないので、そこを掴んでもなんにも生み出せない無能なので。
という訳で、ここで出しておく「物語」のいったんの結論は「鬼滅の刃は、なぜか知らんけど全年齢に受け入れられる物語だった」です。そういうスゴイものだった、とここでは結論付けて先に進みます。知りたいのは、「そういうスゴイものがなぜ小学生まで広まったのか」ですね。深夜アニメなのになんで!?ってこと。
ちなみに個人的に面白くていいな、という物語分析の落としどころは、「主人公の最大の目的が世相に合っている」、というヤツです。ワンピース、ナルトの物語は海賊王や火影を目指す、という「上昇志向」。それに比べて鬼滅は(チェンソーマンも呪術廻戦も)「最低限の生活を守りたい」という「現状維持」が主人公の目的になっている点。(炭治郎の主目的は「鬼を全滅させたい」とか「柱になりたい」ではなく「妹を守りたい」、ということ)
コロナ禍で当たり前の生活すらも送れなくなったこの時代、当たり前の生活を奪ったみえないモノへの怒りとか鬱憤とか恐怖が世相とリンクしてウケているのでは、という落としどころです。※個人的には社会背景とウケるエンタメは連動していると思っているので、一応の納得。あと作画がすごいとかそんなんも一応要素として飲み込んでおき、次にいこう。
さて、そんな鬼滅がなぜ売れたのか。メディア展開から探っていきます。「全年齢がみても楽しめるモノ」が、どうやってこの個人の嗜好が分断された社会で「全年齢の人」がみたんだろう。これを明らかにしようと思っています。
◆鬼滅はいつ流行った?
これはグーグルのトレンドグラフです。これでみていこう。
2019年4月6日に地上波アニメ1話が公開されています。終わりは2019年10月。この時はTOKYO MXをはじめとして21局。そんなに多い訳ではないですね。きっと。放映当初からじわじわと人気が上がってきているのがわかりますね。アニメ放映後に待ち構えているのは、各コラボと映画告知です。こっからがずっと高い。そしてやばい。どれくらいやばいか。
この赤い線、「ワンピース」です。アニメ放映後にワンピースよりも人気が出始めました。すごいよな。※もちろんずっとこの水準のワンピースもやばい
その後2020年6月~9月くらいまですっと下がりますが、10月から異常に伸びます。映画の公開前にフジテレビの土曜プレミアム(土曜21:00~)でぐんと上がり始め、映画公開が一番の高い山です。
はい、これからわかることは、国民的コンテンツ「ワンピース」を超えるのは、アニメ放映後、ということです。恐ろしいね!
我々が仮説として持っている、「番組放映中が一番トレンド高い」というのを無視して、「放映後にトレンドが上がる」という信じられない動きをしてますよ。
(引用:https://kimetsu-i.com/ruikei-hakkoubusuu/)
これ、ネットから引っ張ってきました。単行本の売上推移です。地上波アニメが2019年4月~2019年9月なので、異常にグラフが上向き始めたのは、やっぱりアニメ放映後ですね。アニメの一番の”関連グッズ”である、単行本が、アニメ放映後に売れ始めてる。※もしくはアニメ中に売り切れまくって、増刷したのがそのタイミングなのかも?だけど
でもまあ、しっかり漫画が売れてるのでそのあともず~~っと増刷されてますよね。すごい。
はい。ということでここで注目すべき鬼滅の波はざっくり以下3つの波ですね。
①アニメ放映中
②アニメ放映後のコラボ祭り
③映画公開
ここでワンピースを抜いてまさにブレイクしたのは、②のタイミングでしたね。なるほどね。
小学生まで鬼滅が広まったのは、②、でしょうね。じゃあ、なぜ②で小学生に?ここを考えましょう。いいですか。こっからは仮説ですよ。妄想です。
◆鬼滅が全世代に売れた理由
まず、鬼滅の展開は通常、「大人にしか刺さらないモノ」です。少年ジャンプに連載しているけど、深夜帯アニメですから。それこそワンピース、過去でいうと妖怪ウォッチ、もっというとポケモン。どのアニメも深夜アニメじゃありません。なのに小学生は鬼滅をみてるんですよ。いいですか?「深夜アニメを小学生がみてる」これは異常なんです。今までは流行るはずもないものです。
もちろん、小学生がグレてずっと起きてるだの、親世代が録画してそれを観てる、とかも考えられますが、自然に考えて腑に落ちるのは「サブスクでみてる」もっというと「サブスクを小学生は日常的に観てる」じゃないですか?
動向を思い出してください。「地上波アニメ放映中にじりじりと人気が出てる」までは、おそ松さんとかそれくらいの人気深夜アニメでもありうる傾向です。大人だけがみて、楽しんでいる。
このあとの爆発に行くには、オトナだけじゃなくて「小学生も鬼滅を観る」ことが必須です。でも、地上波はもうやっていない。じゃあどこでみるの?サブスクでしょ!ということですね。小学生が流行っている鬼滅なるものを、「小学生はみつけられた」んですね~~~。どうやって?
小学生はSNSを我々ほど情報源として扱っていないです。友達、家族からの口コミが主な情報源。これは今でも変わっていません。なので、口コミのルートを妄想します。
まず、オトナが「鬼滅ってアニメがすごいらしい」とネットや職場で聞きつけます。そして、「今からHuluでみられるよ」と追いつき始めたり、地上波が終わった後に興味本位で観てみる人が溢れ始めます。
ちなみに鬼滅を人に勧める時のポイントとして、「ヒノカミ神楽がすごい」というのをよく目にします。これは物語の終盤に登場するので、後半に向けてどんどんトレンドがあがってくるのも、放映後にトレンドがあがるのもなんとなくうなずけます。
さて、こういった話題のアニメを親世代がどのように観るでしょうか?
タブレットやテレビ内蔵のアプリを使って、大画面で鬼滅をリビングで観るんです。多分(この多分がこの記事一番のチャレンジポイントです)
親がリビングで鬼滅を観る。それを子供も一緒にみる。
これが子供が鬼滅をみつけられた要因じゃないでしょうか。テレビやタブレットはリビングにありますから。きっと!
はい。ここの仮説。「タブレットやテレビでサブスクを観る」。ここを信じられるが一番重要です。
色んな調査データから、小学生は個人で自由に使えるスマホは持っておらず、親のスマホか共有のタブレットを使用しているのはわかっています。
その他にも「テレビでyoutubeをみている」とか「テレビでHuluをみている」という家庭が一般的になっているみたいなんです。
まじ?でも、データ上ではそうらいしい。最近の我が家での過ごし方は、まさに「テレビでサブスク映像をみる」に合致しているので、信用できますね。
信じよう。そして進もう。
親と一緒にリビングで鬼滅をみて、面白い!となった子供たちは、こぞって学校で噂を立てます。
コロナ禍なので学校ではないかもしれませんが、きっと情報交換を友達とやっていたでしょう。それがどんどん広まって、気づけばみんな観てる。そして、小学生の中でも爆発します。
きっとコロナ禍の小学生は、こういった「流行っているモノ」を絶対に逃さなかったと思います。学校に行かずして友達と会話を合わせないといけない。皆さんも経験ありません?「昨日あのテレビみた?」ってやつ。
クラスメートという集団と、「同じ空間」を共有できない時代に、どのように仲間意識を保つか。それは「共通の話題」でしょうね。これは切実な悩みだったんじゃないでしょうか。
クラスメートという集団から排除されない為、小学生は「みんなの中で流行っているモノ」という一つのクモの糸を、大事にしていたんではないでしょうかね。それが鬼滅だった。
以上から、小学生が鬼滅を知る経路をまとめるとこうです。
アニメみたオトナが友達に勧める→オトナがサブスク使ってリビングで鬼滅をみる→子供がハマる→子供同士で勧め合う→子供がサブスク使ってリビングで鬼滅をみる→オトナがハマる
無限ループですね。小学生からオトナに行くこともある。このループを促進するかのように、街には炭治郎が溢れ始め。主題歌もきく。テレビのニュースもyoutuberも騒いでる。そして、サブスク配信でもおススメに出ている。
もう、観るしかないんですわ。
つまり、②の爆発に至った要因は、
・サブスク映像配信サイトが当たり前になった(コロナの巣ごもり)
・小学生が「共通の話題」を欲していた(クラスメートとの空間的分離)
・生活のあちこちにあるコラボで「流行しているモノ」として認識された
という感じですね。なるほど!
※コラボがたくさんあるのは鶏が先か卵が先かみたいな感じですが、無視します。ガンダムとかドラゴンボールとかあちこちでみるけど、鬼滅ほど爆発してないよね?最初のコラボのお陰でさらならコラボを誘爆した、という認識です。ここはもう無視!ガンダムとかドラゴンボールは長い目で見ると鬼滅とかよりも売れてるよ、っていうのも無視無視!鬼滅がそこまでいった理由を探ってるのこっちは!!もう!無視!
なので私の結論としては、鬼滅人気はコロナ禍だから起きえた爆発的な人気、であります。
「結局それかい」かもしれませんが、もちろん今後のエンタメ展開で役に立てることもあります。
●地上波のアニメはあくまで一部の起爆剤。人気を維持する為にはサブスク展開が必須(サブスクにあった方がいい、じゃなくて、必須)
●コロナ禍の影響で小学生でも予想以上にサブスクが当たり前になってますよ
●コラボしまくって生活に刷り込むやり方ってすごい(売れてるからコラボしまくれるんだけど、爆発狙うなら積極的にコラボした方が良い、という話)
ということですね。
分かります?Hulu限定配信のNiziUがコロナ禍で一気に流行って小学生が縄跳びダンス踊ってるのも、鬼滅とおんなじ理屈だと思いますよ。(起爆剤というか接点の大部分は地上波のスッキリ!)
地上波で不特定多数に観させてファンをつくり、噂が回りはじめ、生活のあちこちで存在を煽り、最終的に本編をサブスクで、リビングで子供、オトナがしっかり観させる。そんなサイクルが令和の爆発コンテンツです。(あんまり変わってないやんけ。地上波は必須ではないのかも。噂を回す仕組みがあれば。同じ時間にみんなで観る、という体験ほど”拡散”に向いたものはないので、その一点で地上波は強いけど)
いいですか。エンタメ業界の皆さん。各社がサブスクに金使い始めている意味、分かりましたかね?
納得いかない所もあるかもしれませんが、一旦これで鬼滅の流行った理由には結論付けて、次のエンタメ、生み出しましょうや。
ちなみに「サブスクサービスの売上推移」を追えば一発で真偽がわかるんですが、そこはもう、ロマンよ。
人間てロマンだから。
では、また。次のロマンにて。