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「仮想空間」で「先行利益」

SF少女時代もあったので「メタバース」だの「仮想空間」だのという言葉はとくに新鮮でもない。そこで価値を創り出す「仮想通貨」が登場することもさもありなんと納得。

「メタバースとか、NFT(Non Fungible Token非代替性トークン)とかに関心ないですか?先行利益のチャンスですよ。ほんとうに、今だけです!」 最近、そういう話がわりとよく飛び込んでくる。

未知の原野であるメタバース内で、無限に残されていると言われる誰も手をつけていないモノや土地などに、早いとこ自分のものっていうシールを貼っちゃって、権利を発生させちゃおう、そしたら、あとあときっと儲かりまっせというのが「先行利益を得るチャンスですよ」というお誘いの意味である。

おいおい、ほんとに???というような地価が新聞掲載される、東京世田谷の土地について、夫のお父さんは「子供の頃はここらへんずーっと田んぼで井の頭線が走ってくるのが見えたんだから」と話すことがある。それよりももっともっと前の甲州街道から脇の「世田谷村」とよばれる里山だったころに、いや、それ以前の人も住まない原野だった頃に、先祖が大規模に土地を手に入れてくれていたら、今頃は…??。メタバース内での誰の手も付いていないの土地やモノを買っておくことを「先行利益を得るチャンス」だと言っているのはこういうことだ。

これはほぼ賭けに近い。手に入れた土地がどう発展していくらの価値になっていくのか、あるいはいつまで経っても二束三文以下か。誰にも分からない。

どうも飛び付けないのはその理由だけではない。

昭和の価値観がなかなか抜けないからだろうか。「先行利益」「不労所得」といったことばにどうにも胡散臭い、信用してはいけない影を感じる。この言葉を聞いたらすぐに、回れ右!で撤退したい気分にかられてしまう。

金銭的な利益は「労働という苦難」への対価として得られるものである、という概念が染み込んでいるのだと思う。苦難無くして得られるものなどあるはずがない、あるとしてもそれは禁断の果実的なものだ…まあ、古臭い思い込みだとはわかっている。けれども、なかなかに抜けられない。

だが、その一方で

それがもたらす(といわれる)、華やかで気楽で享楽的な雰囲気にも憧れたり羨んだりする自分を感じてもいる。このチャンスを逃した自分は、何年後かに自分を呪うことになりやしないか、と勝手に不安にもなる。

GAFAや大手ゲームメーカーなどが動いている話の隙間に入り込もうなどと言うのは私のサイズにも性格にも合わない話なのだが、自分を納得させるメタバース界参入の「誰かのため」理由を模索してみる。実はいくつか思いついているけれど、どうもブラックな利用方法を同時に考えつく;;…小説のネタにしたほうが良さそうだ。

「仮想現実」での儲けも大損も、自分の妄想の中にだけ入れておくのが一番安全で楽しいのだろうなあ…^^;


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