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おしゃべりなのに説明するのが下手な話
「アンタは説明が下手なんだから」
晩御飯の冷食のお好み焼きを食べながら、私はそう言われた。思春期のときにこれを言われたら、ムキー!となって部屋から出なかっただろう。
私が言いたかったのは、「ハローワークから電話があった。電話の内容は、早期ナントカサービスを希望したから担当の人からの挨拶の電話。いつ頃来ますか?とか言われたけどそこは濁した。」という内容だったのだが、これが、
「今日ハローワークから電話があったんだよー。そんでね、月曜に行ったじゃん。ハローワーク。そこでね、早期就職サービス?みたいなやつを希望したんだよね。そんで、いつ頃来れますか。盆明けごろかな?って言われて。んで、まあそうですねー、つって返したの。で、行くときは連絡してねーつって。まあ、行かないんだけどね。あぁ、21日のやつ?それは保険?かなんかの説明会だよ。会議室みたいなとこに行くの。…え?それとは関係ないよ。どこからかかってきたって、ハローワークだよ。あそこの。うん。え?」
「アンタ結局何が言いたいの?」
母親は怒り、呆れながら言う。これが小さな子どもだったらギャン泣き確定だ。私は小さな子どもじゃないので、ギャン泣きはしなかった。お好み焼きを食べることに集中していた。
その後、母親のサポートありきで、なんとか伝えることがてきたが、母親が怒るほど説明が下手だったのが分かった。おしゃべりさんね、なんて言われていたが、結局は余計なことばかり喋って、重要なことは少ししか喋らないような。
自覚は無かった。高校時代は「なんか」が口癖になっていて、話しかけられたら「えっとね〜、なんかね〜、」から始まった。体育の授業のあと、更衣室で着替えるときに話しかけられ、普通に話していたら、ある女子がボソっと「なんかが多い…」と言ったのだ。周りの子もクスクスと笑い出す。話しかけられて嬉しくて、舞い上がっていた感情が一気に恥ずかしいに変わった。その日は早く着替えて更衣室を出た。恥ずかしくて、その場にいられなかった。それ以降、更衣室では黙っていることが多くなった。話しかけられても最低限の言葉で返すようにした。「なんか」を使わないように、できるだけ気を遣った。高校3年になるころは受験でピリピリしていたおかげなのか、誰も話しかけて来なかった。正直安心した。
大学時代に「黙ってたらまとも」と言われたことがある。友人同士の馴れ合いの中で言われたことだ。それに対して私は「じゃあ、喋らないようにすればいいってことね!」と言ったら友人たちから「そうじゃない」と否定された。頭の中は鈴木雅之の「違う、そうじゃない」のCDジャケットの写真でいっぱいだった。
人と喋る機会が無くなったから、説明下手になったのだろうと思ったが、振り返ってみるとそれは昔からだった。関わった人々に「何が言いたいのか分からない」「何がしたいの?」と言われたことがあった。(例:何が嫌なの?→今、怒られていることが嫌です。)素直に答えたら「そういうことを聞いてるんじゃない」と指摘されたのを思い出す。そもそも人に説明することなんて生きている中であるのか。バイトで新人に説明するときくらいじゃないか?まあ、私はバイトでは永遠の下っ端だったからなぁ…。
もし、説明が上手くなったら、どうしようか。う〜ん。特に……ない。いやマジで……何も無い。説明できる相手がいないのでは?
いやもう、説明が下手でいいか…。
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