指揮の要訣 私なりの解釈#3
三度に分けてブレブレの解釈を垂れ流してきたが、今回で指揮の要訣は終了である。
以下、指揮の要訣全文。覚えて空で言えるようにせよ。
指揮の要訣は、指揮下部隊を確実に掌握し、
明確な企図の下に適時適切な命令を与えてその行動を律し、
もって指揮下部隊をしてその任務達成に邁進させるにある。
この際、指揮下部隊に対する統制を必要最小限にし、
自主裁量の余地を与えることに留意しなければならない。
指揮下部隊の掌握を確実にするため、
良好な統御、確実な現況の把握および実行の監督は、特に重要である。
良好な統御
良好な統御とはなんだろうか。永遠のテーマである。
人間の心情に訴える力を統御という。
集団内の各個人に、全能力を発揮して、「指揮」されようとする気持ちを起こさせる心理的働きかけである。
センスだろうか。そういう一面もあるだろう。
あるいは後天的、本人の努力によりカバーできるのだろうか。
優しくてもダメ。厳しすぎてもダメ。
硫黄島の戦いで有名な栗林中将は、末端の兵と共に汗を流しながら陣地構築をする優しさを見せる一方、規律違反を起こした兵卒を処刑する冷徹さも併せ持っていた。
それでいて頑強な抵抗をして、米海兵隊に戦死 6,821戦傷19,217 の出血を強いたのである。
信賞必罰の精神、懇切公平慈愛心、深い洞察力・人間性をもって部下に接しなければならない。
「この人の為だったら」と思える上司はいる(いた)だろうか。そのような上司に巡り合えていないのであれば、運が悪かっただけである。負の人間からは負の人間しか育たない。
後天的にある程度涵養する事も可能だが、やはりセンス。統御ガチャに負けている人は、そういう人を見つけて見習おう。因みに胡散臭い自己啓発本やセミナーでは涵養する事は出来ない。実践あるのみ。
確実な現況の把握
現況の把握とは、今まさに現場(敵)や人員(我)、物がどうなっているか把握する事である。
当然、一人で一方的に把握する事は難しいので、平素より通報・報告の仕組みを確立しておくことが大切
現況に応じて戦法や行動というのは変化するし、柔軟に変化させなければならないので重要である。
実行の監督
全ての条件を整えて、明確な企図の下、適時適切な命令・指示を与えたならば、実行の監督をしなければならない。
命令や指示の効果を確認する。
人は人の話を基本的に聞いていない。
さあ、やれと言ってもいきなり違うことをし始めるなんて珍しい話ではない。
しかるに指揮官もとい上役は命令・指示の実行・履行を監督しなければならないが、自主裁量の余地にも留意しなければならないジレンマを抱える。
業務結節を捉えて実行の監督を確実に実施するのが好ましい。
統御追記
良好な統御とは心理的・観念的要素が強いが、
第一法則 成功する
権威や優越が必要
第二法則 利益(賞)を与える
利益は人を動かす基本条件(賞与・表彰・人事)
第三法則 恐怖(罰)を与える
生命・生活の危機を示せばよい。
第四法則 感情を刺激する
誠意である。相手の人格を尊重しないものに人を率いる権利はない。
私は二十年間部隊長として戦地で戦い、二十五年間社長をつとめたが、その間一度も利益と恐怖による統率を意識したことはない。しかしよく考えれば、私の人情統御は陸軍刑法という峻厳な軍律によってサポートされていたし、就業規則に支援されていた。お釈迦様の掌上にいて、千里を走ったと思っていた孫悟空のようなものだったことに気づいたのはこのごろである。
(大橋武夫氏「人は何によって動くのか―古典に学ぶ「人間の法則」」抜粋
統御する上での母体となる組織の出来も重要である。何事も誠意を持ち、厳格に実施していきたいものである。
以 上
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