千葉県 台風15号被害から考える今後の災害派遣のあり方
今災害において、ちまたでは政府・自治体・自衛隊等への批判が物凄い。
災害派遣でもなんでもそうであるが、不足事態対応の要は、平素における不断の即応体制の維持と初動である。
初動がまずければ、いかに素晴らしい活動をしようとも国民は評価してくれない。
今回は様々な方面の不手際が目立つが、ここではせっかくなので自衛隊にフォーカスして雑記を記そうかと思う。
そもそも災害派遣は副次的任務である。主たる任務はあくまでも国防である。軍隊特有の高度な自己完結性を流用して各種災害派遣をこなしているのが現状である。
もちろん国民の生命及び財産を守るという観点からも重要な任務であることは間違いない。よって各部隊持ち回り(当番制)で担当地域の即応体制を維持している。常に。
災害派遣が予想される事態に、災派要請権者たる知事からの要請を待たずに情報収集の為に部隊を動かす(小規模)ことは往々にあり、法的にも問題は無い。
当然、災害の種類や度合いにより自衛隊自体の行動に制限がかかる(航空機を飛ばせない等)
ネットでは自主派遣と近傍派遣、情報収集をごっちゃにしている方を散見するが、自衛隊法第83条等をしっかり確認して欲しいところである。
さて、自衛隊の災害派遣に関しては阪神淡路大震災以降、法改正も逐次進んで、関係省庁との訓練も各地で重ねられており、かつ東日本大震災に関わる災害派遣において一時は10万人態勢の運用も経験している為、完成の域にあるといっても過言ではなかろう。
これ以上の体制の維持を求められると、隊員の訓練・生活や士気、予算的にも厳しいのではないだろうか。
さて、災害派遣で求められる能力ははっきりいって自衛官からすると馴染みのない作業ばかりである。
今回も例外ではない。
グラップルを使用した倒木撤去、屋根のシート張り、チェーンソウでの伐木作業等々・・・
確かに最低限の資器材を保有しているが、全てのモノの操作・作業に習熟しているとは言い難い。常に使っている訳でもない。
エンジニアたる施設科においても人員・装備・予算・時間の観点から言っても、ニッチな作業に割くリソースはほぼないであろう。
主兵たる普通科においてはもっとお寒い状況である。
ネット上を見ていると、やはり民間における専業の方々の苦言が散見される。
実際私も災派の現場で地元の土建屋から、「素人が」と、からかわれた事があるので、「ああ、やっぱりなー」くらいしか思わないが。心無い人はどこにでも居るし、みんな余裕が無いのである。
ちなみに安全関係で自衛隊を批判するのはお門違いである。各種法令で守られた民間と違い、自衛隊は労働基準法や安衛法、一連の法令は適用除外されている。代わりに命を張っているのでドローである。
ただし今回は、作業により民間の指導者を付けて作業に当たっているのも見られるので、そこは素晴らしいと感じる。
自衛隊の常識は世間の非常識、世間の常識は自衛隊の非常識である。
今回ちょろっと見てて思うのが、民間の優れた能力を自衛隊ももっと取り入れてもいいのかな~というところだ。
各部隊に各種作業の講師を呼んで、知識・技能を伝授したり、専門のチームを方面隷下に新設したり。
官民の交流を今以上加速させて、自衛隊の諸作業に関する能力向上させるのもいいかもしれない。
ただ、やはり時間と予算がネックになるだろう。
災害が減る事、千葉の停電が早期復旧する事、自衛隊員の安全を祈り括りとする。
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