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素人土木ICT#8【ICT土工の理想と現実】

ICT土工というと、ドローンが勝手に測量してくれて、勝手に土量計算してくれて、勝手にバックホウがのり切り、鋤取りしてくれて、ブルは前進バックだけで均してくれて、終わったら出来形検測ドローンが勝手にしてくれて・・・・

などど思っている人がいる。うちのご近所さんは事実この程度の認識である。私もそうだった。

御老輩の方々がこのようなイメージを持つのは仕方がない。事実そのように吹聴してまわる者も多いからである。

実際は制約事項も多く、いまだ「万能」であるとは言い難い。

例えば協議が整い、「よし!全面的なICT施工をするぞ!」と意気込んでも様々な制約や協議しなければならない事が待っている。

I-Construction適用範囲の罠

全面的なICT技術の活用において、当然、実施に向いた環境とそうでない環境がある。

単一の現場において、ICT技術を適用する箇所と、そうでない箇所を着工前に明らかにしておかなければならない。


ただの造成工事や盛土工事なら考慮する必要もないが、ほとんど全ての現場は適用協議をしなければならないだろう。発注者によっては協議自体も難儀するであろうから、ここは従来に比して負担増しだ。

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ICT建機の罠

ICT建機は決して神器のごとく性能を発揮するわけではない。

様々な事象で所要の性能を発揮できなくなる。以下は一般的なGNSSによるRTK方式での運用を想定している。

〇高圧電線の近接による精度低下
場合によっては数百mmの誤差を発生させる。各業者はセールスの時点からしっかり念押しすべき事項である。

〇狭小山間部での精度低下又は使用制限
これは少し考えれば分かるが、上空が開けていない、又は山脚に一方向以上を委託するような現場においては精度が出ないか、使用できない。

〇諸々条件が整っても時間帯により精度低下
GNSSの特性上これもやむを得ないが、今現在において確実に精度の出ない時間帯が存在する。

〇単なるエラー
これに頭を悩まされることもあるだろう。新しい機械・器材であればなおさらである。

〇原因不明の精度低下
刃先の座標が50mm以内であれば、まあまあの精度と言えるが、実際に切り盛りしていると「???」というような誤差が出る。現場監督としてはおよそ30mm程度に誤差を抑えたいだろうが、現状は15mm~70mm程度ばらつく場合がある
おそらく油圧側の制御に起因していると思われるので、今後のアップデートに期待であるが。


ちなみに建機メーカーとシステム屋の罪の擦り付け合いを散見する。これは是正しなければならない所であろう。

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UAV空中写真測量の罠

思った以上に精度が出ない。以下要約

〇風が強い場合、精度低下
〇風景に変化が無い場合や、高低差が無い場合、精度低下
〇快晴で、明度の高い場合、精度低下
〇天候により飛行の可否が左右される。
〇垂直壁などの観測は不得意

等々、飛ばせる状況が限られる上に精度が安定しない。
また、解析速度はPCスペックに完全依存するため、思いのほか時間がかかり、他業務を圧迫する可能性もある。
結局、TSを用いて横断測量をした方が早いのではないか?と思わないでもない。

なお、通常のLSは少しでも地面が濡れている状況では使用できない等制約があり、やはり万能ではない。

まとめ

とりあえず3種類挙げたが、無論これだけではないし、上手くいく場合もある。
このような小さな問題点等が積み重なり、施工ミスや現場への負担が増す可能性も秘めている。
何事にも理想と現実があり、現実は現実として受け止めて処置対策を講じる必要がある。

同時に、精度が出ない=使えない!!も性急に過ぎよう。

中小零細土建屋だからこその、きめ細やかな現場サポートが必要である。

使いこなしてこその機械・資材であるので、120%の性能を発揮する為にも不断の勉強を欠かさないよう注意したい。

入れてハイ終わりでは男が廃ろう。(協議!協議!)

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