おすすめ本
「ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム」
古谷晋一 /春秋社
初めての投稿は、本をご紹介しようと思います。
タイトルは、
「ピアニストの脳を科学する」。
本書は、様々な実験結果と調査を重ねて、ピアニストの脳と身体の動きに科学的にアプローチしていく内容となっています。
興味深いのは、著者の古屋さんご自身も、幼少期から音楽が好きでずっとピアノを弾き続けてきたこと。実際にピアノを弾いて、身体の使い方に悩んだ経験を持つ方が、科学者の視点で「脳」という観点から演奏にアプローチしていく内容は、とても新鮮で、興味深く拝読しました。
2012年に発行され、すでにお読みの方も多いと思いますが、自分の奏法を見直すために、読み返してる本の一冊なので、ご紹介しようと思います!とても分かりやすく書かれていて読みやすい本です。
第1章「超絶技巧を可能にする脳」
第2章「音を動きに変換するしくみ」
第3章「音楽家の耳」
第4章「楽譜を読み、記憶する脳」
第5章「ピアニストの故障」
第6章「ピアニストの省エネ術」
第7章「超絶技巧を支える運動技能」
第8章「感動を生み出す演奏」
現在、人工知能(AI)の研究は、日々、進歩を遂げていますが、脳もまだまだ未知の領域のひとつ。古屋さんの言葉で言えば、脳は「驚嘆すべき未開の領域」であり、訓練に応じていかようにもその姿を変え、思いもよらない能力を身に付けていきます。
ですが、私も陥りかけましたが、「訓練したことによって逆に間違いを起こし、故障となって表れてくる」こともあります。故障にも、腱鞘炎や手根管症候群のように、「痛みを伴うもの」「身体に起こる問題」と、フォーカル・ジストニアという「脳に起こる問題」とがあるそうです。シューマンやミシェル・ベロフがこれに該当するそう。
思い描く音楽表現をするために、身体の動きの健全性は必要不可欠です。身体に何か不具合があって、思うような演奏ができないとしたら、それはとても、もったいないことですよね!
一流のスポーツ選手やフィギュアスケート選手が、更なる向上のために、それまでのフォームを見直すことがあるように、ピアニストにとっても奏法の研究は、より良い音楽を追及するためのプロセスなのかもしれません。
様々な良書とともに、多分野からアプローチして、これからも新たな魅力的な音が生み出せたらいいなぁと思います。