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植物由来肉で初の上場企業となったビヨンド・ミート:2021年1~3月期決算

欧米では、肉や魚など動物由来の製品を摂取しない「ヴィーガン(Vegan)」と呼ばれるライフスタイルをとる人々が増えています。

この「ヴィーガン」という言葉は、日本ではまだあまりなじみがないかもしれません。
しかし、その歴史は古く、ヴィーガン協会(the Vegan Society)の創設者であるドナルド・ワトソン(Donald Watson)によって、1944年に作られたとされています。

当時は、乳製品を摂取しない菜食主義者(non-dairy vegetarians)のことを指していたようですが、1951年にヴィーガン協会は以下のように定義しました。

"Veganism is a philosophy and way of living which seeks to exclude—as far as is possible and practicable—all forms of exploitation of, and cruelty to, animals for food, clothing or any other purpose; and by extension, promotes the development and use of animal-free alternatives for the benefit of animals, humans and the environment. In dietary terms it denotes the practice of dispensing with all products derived wholly or partly from animals."

「ビーガニズムとは、食用、衣料用、その他の目的での動物の搾取や残虐行為を可能な限り排除し、動物や人間、環境のために動物を使用しない代替手段の開発と使用を促進する哲学であり、生活様式である」

この定義によると、食べ物だけではなく、衣類やその他においても、動物由来の製品を使用しないライフスタイルを採用している人のことを「ヴィーガン」と呼ぶことになります。いわゆる「ベジタリアン(Vegetarian)」よりももっと徹底した人たちということになるでしょうか。

ヴィーガンが増えている背景には、①健康意識の高まり、②CO2削減など気候変動への配慮、③水など地球資源の保護、④動物福祉、といった理由が考えられます。

日本では、外国人観光客の増加に伴い、ヴィーガン対応の飲食店なども増え、少しずつ認知度は高まってきていましたが、今は新型コロナの状況で足踏み状態にあるかもしれません。

植物由来肉の認知度高めたビヨンド・ミート

ヴィーガンへと転向した人でも、やっぱり肉の味が忘れられない、たまに食べたくなる・・・
きっとそういう人もいるのでしょう。

そういう人々のニーズにもこたえられるのが、植物を原料とする代替肉です。この分野で先行したのが2009年に設立されたビヨンド・ミートです。

同社は現在、「ビヨンドバーガー」や「ビヨンドソーセージ」などの商品を展開しており、世界80か国以上の11万8000以上の小売店、レストランなどで販売されています。

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ビヨンド・ミートのこれら製品は、えんどう豆やソラマメ、玄米などを原料としています。また、霜降りに見立てた脂肪分はココアバターやココナッツオイルを使用、肉の赤い色はビーツで再現しているとのことです。

最新の決算状況

5月6日、ビヨンド・ミートは2021年1~3月期の四半期決算を発表しました。

  (万ドル)    売上高  営業利益  純利益  1株当たり利益
2020年  1~  3月期    9,707.4   180.9    181.5    0.05㌦
2020年10~12月期  10,193.7  -2,453.2  -2,507.7     -0.34㌦
2021年  1~  3月期  10,816.4  -2,464.5  -2,726.6     -0.42㌦

売上高は1億816万ドルで、前年の同じ時期と比べ11.4%増加しました。

チャネル別でみてみると、フードサービス向けが、新型コロナの影響により、米国内が26.0%減、米国外が44.0%減と苦戦しました。
一方で、全体の約6割を占める米国内の小売販売が前年同期比27.8%増えたほか、米国外の小売販売が前年同期比188.9%増と2.9倍に拡大し、フードサービス向けの減少を補った格好となっています。

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支出面では、輸送や倉庫にかかる費用や固定資産の減価償却費など売上原価が大きく増加しました。また、研究開発費が大幅に増えたほか、販売費や人員増に伴う費用も増加しました。

この結果、純損失は2726万㌦、1株当たり損失では0.42㌦と、2020年10~12月期に続き、大幅な赤字となりました。

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今後の見通し

植物を原料とする代替肉市場は、成長を続けています。
米国の調査会社Markets and Markets は、植物由来の代替肉市場の市場規模は2020年の43億㌦から、2025年には83億ドルに拡大すると予測しています。年平均では14.0%成長するとの見通しです。

こうした市場環境を追い風に、ビヨンド・ミートは攻勢を強めています。

今年2月、米国でKFC(ケンタッキーフライドチキン)やピザハットなどを展開しているヤム・ブランズとのパートナーシップを発表しました。今後数年間で、KFCやピザハット、タコベルで革新的な植物ベースのメニューアイテムを共同開発・提供するとしています。

同じ日、マクドナルドとも3年間にわたるグローバルパートナーシップを締結したことを発表しています。こちらも、新しいメニュー開発を共同で行うほか、植物ベースのパテをビヨンド・ミートが優先的に供給する内容となっています。

直近5月12日には、ウォルマートで「ビヨンドミートボール」の取り扱い拡大を発表しました。ウォルマートでの製品取り扱いの大規模な拡大は、2020年秋、21年3月に続き、3度目となります。

それでも、新型コロナの影響はまだ残るほか、それによる需要構造の変化も起きていることから、年間の予測は難しいとして、2021年4~6月期の売上高についてのみ、ガイダンスを公表しています。

2021年4~6月期:1億3500万~1億5000万㌦(+19%~+32%)

日本でも、ここにきて、植物由来の代替肉の認知度が高まってきました。
多くの企業が、代替肉の製品を製造し、提供を始めています。

ビヨンド・ミートはまだ日本では事業展開を行っていません。
出資している三井物産によれば、一時、日本進出の話もあったようですが、プロジェクトは途中で立ち消えとなり、現在まで実現していません。

ただ、この4月にビヨンド・ミートは中国に大規模な最先端の製造施設を完成させています。米国以外では初の海外製造施設だということです。
中国市場向けに「ビヨンドポーク」を含む植物由来の製品を生産するとしていますが、日本市場がもっと拡大してくるようであれば、ここから日本市場への進出もありうるかもしれません。

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まとめ

・2021年1~3月期の売上高は前年比11.4%増加
・外食産業向けの大幅減収を小売販売の大幅増で補う
・1株当たり損失(Non-GAAP)は0.42㌦で上場後最大の赤字
・ヤム・ブランズ、マクドナルドと新たにパートナーシップ


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