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予想以上の好決算で株価一段高:ディア決算発表(2020年11月~21年1月)

広大な国土面積を持つ米国では、農業のスケールも日本とはケタ違いです。

少し古いデータになりますが、農家1戸当たりの農地面積を比較してみると、米国は日本のなんと99倍にもなるそうです。

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そんな米国の大規模農業に欠かせない農業機械を製造・販売しているのがディア(Deere & Company)です。

ディアってどんな会社

ディアは、1837年創業の世界でも最大クラスの農業機械メーカーです。
創業者ジョン・ディア(John Deere)の名前を関したトラクターや耕運機などの農業機械、芝刈り機などが事業の中心で、日本でもヤンマーが同社製品の輸入販売を行っています。

日本では、農業機械というとコメ作りに使うトラクターや田植え機、コンバインくらいしかイメージできません。
これに対して米国では、大豆、トウモロコシ、綿花など多くの作物が大規模に作られていますので、それぞれに応じた機械が必要です。

ディアの事業は、大きく以下の3つのセグメントに分かれています。
・agriculture and turf
・construction and forestry
・financial services

agriculture and turf」は農業と芝に関連した部門で、ディアの主軸の事業となる部門です。

大規模農業に用いるトラクターやコンバインなどの大型・中型の機械から、綿花やサトウキビの収穫機械、土壌管理用の設備、干し草管理用の設備、芝刈り機やゴルフ場整備用の機械などが含まれています。

なお、2021年度からこの部門を、大型・中型の農業機械や作物管理設備で構成する「Production & Precision Ag」と、中小農業者向けや畜産業者向けの機械と芝刈り機やユーティリティビークルなどの「Small Ag & Turf」に分割しました。

construction and forestry」は建設工事や土木工事に使用されるローダーや掘削機、アスファルト塗装用の機械などのほか、林業で用いられる木材収穫用の機械と、それら機械の部品と関連サービスになっています。

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financial services」は、上記のような機械や設備を購入する際の融資資金を提供したり、リースのための資金を提供するビジネスです。

最新の決算動向

2月19日にディアは2020年11月~21年1月期の四半期決算を発表しました。

(100万ドル)       売上高  営業利益  純利益 1株当たり利益
2019年11~20年1月期  7,631   645   518   1.63ドル
 2020年 8~10月期     9,731   1,305   758   2.39ドル
2020年11~21年1月期  9,112   1,638   1,224   3.87ドル

売上高は91億1200万ドルで、前年の同じ期と比べ19.4%増加しました。

メインのビジネスである農業機械と芝関連部門(Agriculture and turf)の売り上げが前年同期比24.5%増加したことが最大の要因です。

前述の通り、この部門は「Production & Precision Ag」と「Small Ag & Turf」に分割されましたので、今回の決算から分割後の数値が公表されています。それによると「Production & Precision Ag」は同22.4%増、「Small Ag & Turf」は同27.1%増と、どちらも20%を超える増収となっています。

また、建設・林業部門(construction and forestry)も前年同期比で20.7%増えていますので、すべての部門の売り上げが好調だったといえます。

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支出面では、売上原価は増えましたが、研究開発費やマーケティング関連費用、金利費用、管理費のいずれの項目も前年同期比で減少しました。
その結果、本業のもうけを示す営業利益は16億3800万ドルで、前年同期と比べ2.5倍(154%増)となりました。

利益大幅増加の要因

機器事業の3部門について、営業利益を要因別に示した説明がありますので、それを紹介しておきます。

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いずれの部門も、販売数量の増加と価格の上昇の両方が利益の拡大に貢献したことがわかります。

これを受け、純利益も12億2400万ドル(前年同期比2.3倍:136%増)と大幅に増加しました。1株当たり利益も前年同期比137%増の3.87ドルで、市場予想平均の2.16ドル(Yahoo Finance)を大きく上回りました。

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通期見通しを上方修正

ディアは今回の好決算を受け、2021年10月期通期の純利益の見通しについて、昨年11月の36億~40億ドルから、46億~50億ドルへと大きく上方修正しました。
2020年10月期実績が27億5300万ドルでしたので、それを7割前後上回る水準にいけると見込んでいることになります。

2020年4月以降は、新型コロナの影響で業績面では足踏みが続きましたが、株価はむしろ大きく上放れした格好となっています。

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まとめ

・2020年11月~21年1月期の売上高は前年比19.4%増加
・機器3部門の数量増と価格上昇が寄与し、営業益大幅増
・1株当たり利益は市場予想を大きく上回る3.87ドル(前年比2.3倍)
・21年度通期の利益見通しを大幅に上方修正



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