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技術面接の心配もなくなる学生生活の過ごし方

 以前、技術面接で不採用と判断した理由について記事にしましたが、今回は技術面接を不安なく迎える学生生活の過ごし方について、技術面接官の視点からアドバイスをお伝えします。技術を仕事にするために「どう準備すればいいの?」という疑問に答える内容となっています。

自分の将来を決める上で、どう準備すればいいのかは、自分自身が自分に合った方法を見つけることが大切です。今回の記事では、技術面接を通じて、多くの学生の活動を聞いてきた技術面接官の視点から、そのヒントをお伝えしていきます。

 厳しくも当たり前のことですが、結論から言うと一夜漬け的なことではどうにもならないなあというのが率直な意見です。面接の場では本質を見ようとしますので、付け焼刃的な話なのかどうかはだいたい見極めてしまいます。

 学生の間の生活を通じて、自分の技術者としての素養をどう鍛えるのか?を、ちゃんと自分で考えて作戦を立てて、日常を過ごす・・・ということがやっぱり大事なのですが、どうすればよいのでしょうか?
 そういった日常を過ごせた人は面接の場で何を話すのか?それはどう評価されるのか?について、面接の場でのやりとりを思い起こしながら、以下事例をいくつかお伝えしたいと思います。実際に面接で話題になるのは、研究テーマや研究室での活動の話、インターンシップや専門的なバイト、サークル活動、学校の授業あたりが多いです。
 *事例は、個人に関することなのでポイントがずれない範囲で内容はアレンジしています。

1、 研究テーマの序盤・中盤のことをしっかり話せる人は採用したいと思う。
 IT領域の職種に応募されたAさんという方がいました。大学での専攻はITではありませんでした。研究テーマは、ある昆虫の動作に関するもので、その動作を計測・分析するための装置とシステムを開発する中でその技術の面白さに気づき、ある職種に応募されてきた方でした。今年はウェブで面接を行いましたが、その研究テーマをプレゼン資料を画面共有してもらいながら説明してもらうスタイルで行いました。
 研究の狙いと目的、仮説、その研究に必要な道具立てはどう考えたか?どういうところに自分のアイデアが活きているか?そのアイデアはなににヒントを得たか?などが自分の言葉で語れ、こういった質疑に対する受け答えにも自分で考えた結論がちりばめられていました。実験装置を作るときに予備実験を行って仕様が正しいか検証し、それから実験を行った。センサーの選定にあたっては・・・、計測するデータの処理については・・・等超具体的な話でした。IT領域そのものの経験・スキルは心もとないものがあったのですが、文句なく合格でした。自分が未経験の分野でも、短期間でキャッチアップできそうな素養が、研究活動の話の中で見受けられたからです。 

2、 インターンシップの話は、技術面接 では、プラス評価になる程の活動ができている人は少ない印象。
 Bさんは、フランスに留学の経験があり、当地の企業でインターンシップに参加されていてその話をしてくれました。当地の企業では、調理機器の開発を行っていて、Bさんは調理したものの味をいかに定量化できるか?の検討を行ったとのことでした。一見研究に近い話なのではありますが、実際はだいたい開発内容の枠組みが決まっていて、その中で効率的に進めるために毎朝お互いの昨日の結果を突き合わせて確認して当日の予定を練り直したり、4名のチームの中でそういった議論をリードしたか?チームワークをどう固めていったか?などの話になりました。実は他の方でも、国内企業へのインターンシップの場合でも、似たような話題が中心になります。技術で何かを解決することに取り組む。という話よりもむしろ、いかに仕事を推進するかという話になることが多いです。この話題では、仕事にどう取り組むか?というところは判断できるのですが、自分で課題を設定して技術的な解決方法を考えられるか?というところまでの話題にいかないことが多く、技術面接としては、なかなか力量を評価できないことが正直多いです。
 これはインターンシップの話を技術面接の場ですることを否定しているのではないです。チームワークや自分の業務に対する姿勢、顧客と向き合うときの態度に関するアピールという面では、インターンシップの経験を話すことはとても有効ではあります。が、それだけでは不十分で、技術でこういったことを解決したという話題ができるようにしておいたほうが良い。ということです。

3、一般的な学校の実習科目だけでは、十分な話ができない。
 これは就職活動の時期になって、技術系にと考えた人が良く出す話題です。大学の実習で●●をやりました・・・、クラスの中でよい成績でした・・・とPRする人がいます。しかしそれは、やったことがあります。(学校の同じ学年の中では比較的)うまくできます。という話なだけで、技術者としての思考や素養があることまでを示せません。この話題が評価につながるということは相当少ないです。
 ただ、高専や専門学校の場合では多いのですが、実習が充実していてこなすのにプロレベルのスキルが必要であったり、世間で通用するアウトプットが求められる実習科目の場合は評価できます。即戦力級の思わず感心してしまう方がおられます。
 要は、学校の実習でも世間で通じるレベルであるかどうか?という点がポンとです。一般的に学校の実習は、本当に基礎的な入門編にしか過ぎないので、それだけでは評価できない。ということです。

4、特にIT系は、実戦的な機会は他の技術分野に比較して簡単に見つけられるので、経験がないという話になると、圧倒的に不利。
 技術面接の準備という点で、特にIT系は意識しないといけないと思います。機械・化学・建築などIT以外の技術分野では、現実実践的な経験の機会というのは得にくいので、活動実績という面では他の学生と差がつきにくいです。一方、IT分野は、無料に近いオンライン学習の機会もあり、またクラウドソーシングで仕事も取れますし、IT系の企業では実務に近いインターンシップも盛んです。また、IT領域は他の分野に比べて世の中の技術の進歩が早いために、会社でOJTで学ぶよりも、世の中の動きの方が先に行っているので、自分で世の中から学び続けないと技術力が見劣りしてしまいます。学生なのに自分で世の中から情報を取って学べない人は、会社員になってからもついてこれないだろうと思われてしまいますので、IT系志望の方は特に注意が必要かと思います。


 さて、以上のようにまとめてみましたが、技術面接では、研究テーマの話がしっかりできる院生に対し、学部生は技術面接では不利のように見えます。実際不利です。
 しかし学部生でも、例えば2-3年生の段階から研究室に興味を持って出入りして、院生並みに研究テーマを語れたりすると、学部生である分それだけで高く評価されると思います。私が大学生の時は漫然と過ごした時期があり、今思えばもう少し時間の使い方を考えた方がよかったなと思います。今はネットでいろんな社会とつながる機会を見つけられますし、腕に覚えがあればクラウドソーシングなどで仕事を請け負うことも難しくないと思います。

 キャリアのために就活のために・・・という危機感だけで大学生活をどう過ごすかを考えるのは、ちょっともったいないかなと思いますが、自分がわくわくすることを見つけるために、また自分の適正や業界を見極めるためにという気持ちで、学生の早い段階から、研究に深く入り込んだり、社会とつながって活動すると、自ずと就職の準備につながると思います。
 そういった機会を都合よく見つけるのは難しいかと思いますが、難しい状況の時にどう行動して何を得るかというのは、それだけでその人を象徴するエピソードとなり迫力がでますので、後ろ向きにならず是非アクションを起こしてほしいです。きっと報われます。 学生だから・・・と気が引ける人もいるかもしれませんが、社会人はみんな学生を応援したいと思っています。恐れずに挑戦して下さい。きっとよい結果につながると思います。

もしこの記事が少しでも参考になって、技術者として夢をかなえる一歩になれば幸いです。

 

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