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夏の終わりの歌 ~哀愁だけではない詞の世界~

※初めてお越しの方はお手数ですが下記の自己紹介を先にお読みいただければ幸いです。
(本文では敬称を略させていただきます。)

【はじめに】
 約半年ぶりのnote更新です、ご無沙汰しております。最近はアルバム制作に力を入れておりまして、表立った活動はほとんど出来ておりませんでした。少しずつですがアルバムが出来上がってきております、ぜひお楽しみに。
 さて、9月に入ったというのに連日30度以上の真夏日、さすがにくたびれてしまいそうです。残暑とは「立秋を過ぎてもなお残る暑さ」と定義されているようですが、正直秋に移ろい始めている実感はなく、蝉はうるさいし、汗はしたたるし、雲は依然として岩の如しです。「お前の新型iPhoneに対する愚痴が、秋風に乗って届いたぞ」というふかわりょうの一言ネタが大好きなのですが、ちょうど新型iPhoneが発表されましたね、そろそろ秋風が吹くかしら。そのような中で今回私が好きな『夏の終わりの歌』の詞の世界を特集します、私が秋風を吹かせてやります。

【My favorite songs】

風は秋色/松田聖子

 当たり前のことですが、夏が終わると秋が始まります。多くの秋の歌には夏の思い出が含まれているように感じます。『風は秋色』(1980年リリース、作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎)は明るい曲調の中に、夏の恋の思い出を振り返る女性の像が映し出されています。「冷たい砂足跡ふり返れば」という箇所から、夏に愛し合った「あなた」のことを感じてその愛がまだ忘れられないということが分かります。しかしサビのストレートな「抱きしめて」や、明るくテンポ感速い曲調のため、暗く後ろ向きな印象は残さず爽やかな雰囲気が曲全体から漂います。
 いくつかフレーズに着目してみましょう。「あなたの腕の中で旅をする」というフレーズは本当天才的だと感じます、抱きしめられた時の女性の思いがとても味わい深く感じられます。2番の始めに「恋する切符を手に入れたこの渚で」とあり、この歌詞の主人公にとって夏の恋を始めることは旅のようにドキドキ感やワクワク感があったのでしょう。最終的に「あなたの腕の中『で』旅をする」という、恋を始めるドキドキした旅から、「あなた」の愛をより深く知っていくという旅になっていったのではないかと私は感じました。それともう一つ、「遠くでほほえむ」対象が1番と2番で変わっているということに着目してみましょう。1番では冷たい砂足跡ふり返れば、あなたを感じています。2番では冷たい秋ひとりぼっちの夕暮れ、誰かが横切ります。この歌詞すごく面白いなと感じました、是非皆さんはどのように感じたのか教えていただきたいですね。


風立ちぬ/松田聖子

 今日は聖子ちゃん特集でしょうか、聖子ちゃんの曲本当好きでして、どうしても語りたくなってしまいます。『風立ちぬ』(作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一)は1981年にリリースされました、ちょうど松本隆によるプロデュースが始まったころですね。このころから、松田聖子の歌う女性像が変容してきて、『自分らしさという芯をしっかり持った女性』をナチュラルに感じることが出来ます。非常に繊細な心情描写なのではないかと思うのですが、そう感じさせないすんなりと心に入る言葉です。
 先ほどの『風は秋色』に続き、『風立ちぬ』も非常に曲調が爽やかです、夏が終わり、まだまだ緑の残る中少し涼し気な風が吹いてきたようです。「風立ちぬ 今は秋」ちょうど今、秋になって、「今日から私は心の旅人」という心情の変化、ひとりで旅立つその覚悟、しかしあなたの思い出に対して「忘れたい 忘れない」という何とも言えない気持ちが私に伝わってきます、凄い歌詞とメロディと歌ですね本当。
 2020年11月、私は神戸市立相楽園で開催された『“風街ヘブン”絵画展』を訪れました。寺門孝之氏の描く『風立ちぬ』の世界をみて私は爽やかな印象を感じ、「素敵だなぁ…」と見入ってしまいました(ポスター購入して家に飾っています)。松本隆の詞の世界がまた違った手法で表現されており、非常に印象深かったのを覚えています。


夏の終わりのハーモニー/井上陽水・安全地帯

 1986年にリリースされたこちらの曲、作詞は井上陽水、作曲は玉置浩二の大名曲です。まずお二人の歌が最高です。お二人ともボーカリストとして最高峰であり独特の持ち味がある中で、そのハーモニーの美しさは得も言われぬものでした。もともと安全地帯は井上陽水のバックバンドとして活動していた時期があり、所謂師弟関係と言われていまして、このコラボレーションではお互いの歌が歌を引き立て合っているように感じます。
 詞のフレーズを見てみましょう、1番をみると恋人同士の恋のハーモニーについて歌われています。「今日のささやき」と「昨日の争う声が」から、求めあい、時に言い合うこともありながら、また夢もあこがれも違っているけれど、お互いに愛し合っている二人の素敵な関係性が見えてきます。2番に入ると、その恋や二人の関係性の終わりが描かれています。これは恋が冷めた故の失恋なのか、不可抗力により離れ離れになるのか…。「星屑のあいだをゆれながら」という部分、素敵だなぁと感じます、ふたりの心もゆれ動いているのでしょうか。

【最後に】
 夏の終わりというのはどこか哀愁を感じさせるものがあります。しかし、夏の思い出を胸に秘め新しい自分になれる、そんな瞬間でもあるように感じます。日が短くなり、冷たい秋風が吹きだして、街は少しずつ厚着を始めます。残暑厳しい今日この頃ですが、秋風が吹き始めると急に夏が恋しくなるものなのでしょうか。今はその時を、汗をぬぐいながら、新型iPhoneのスペックを確認しながら待ちたいと思います。

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