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「山のは」より - 2024/10/31 霜降
拝啓 10月。木々が紅葉を始めています。山のイチョウは鮮やかに黄色く輝き、モミジは先端からじわりじわりと赤く染まり、西陽に照らされる姿が美しいです。
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数ある紅葉樹の中でも、ウルシノキはいち早く秋の訪れを知らせてくれます。ウルシにはもともと黄色い葉がちらちらと付いていますが、9月の初め頃からその数が一気に増えていきます。モミジのように先端から色が変わるわけではなく、散りばめたカードを一枚一枚裏返すように、まばらに緑色の葉が黄色へ変わっていき、お、黄色チームがだいぶ優勢になって来たな、と楽しんでいます。
他の木々はまだ青々としているうちから黄色が目立ち始めるので、山の奥の方に生えている木でも「あ、あそこにウルシが生えている」と見つけやすいです。漆掻きさんはこの時期、あちこちトラックを走らせて、まだ存在を知られていないウルシノキを探して回るのだそうです。
先日、いま手がけている仕事の一環で、漆掻きの映像を撮影することになりました。いつもお世話になっている漆掻きさんにお願いして、仕事の段取りを調整してもらったのですが、撮影チームが入りやすく、また見映えの良い畑を選び、事前に下草刈りを行うなど丁寧に準備してくださる心遣いには頭が下がるばかり。
ある程度早い時期から撮影の日程は調整していましたが、漆が最もよく採れる夏の時期は、漆掻きさんにとって毎日が戦いです。撮影で一日仕事が出来なくなるのは申し訳ないので、盛りを過ぎた9月以降でと考えていたのですが…それぞれに忙しい参加者全員の都合がつく撮影日程の調整は針の穴を通すような作業で、ようやく決まった撮影日は10月中旬。つい10日ほど前にはまだ青々としていた漆畑ですが、当日はすっかり秋の装い。「畑」らしい画を撮りたかったので葉っぱが残っていてよかったと胸を撫でおろします。
そこまで準備しても、当日が晴れるかどうかは運次第。日々変わる天気予報に一喜一憂しながら迎えた当日は…なんと最高の秋晴れ!
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漆掻きの良い画を撮るという事はこんなに難しい事なんだと痛感しました。
黄色チームがだいぶ優勢になった秋の漆畑に、サクサクと落ち葉を踏みしめながら撮影機材を運び込み、いざ漆掻きの姿を収めるべくカメラを回し始めた時、急に爽やかな秋の風が畑を駆け抜け、キラキラと光りながら黄色い葉が画面一面を覆い尽くし、思わずスタッフ全員から「かっこいいー!」という歓声が。
漆畑の神様に、一夏頑張ったご褒美を貰ったような気持ちでした。
夏の漆畑も好きですが、爽やかな風の通り抜ける漆畑は格別に気持ちが良いです。あともう少しもすれば葉が全て落ち、枝だけの静かな姿へと変わります。
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漆掻きの皆様、今年もお疲れ様でした。もちろん冬の仕事もあるのでこれで終わりではないですが。お陰様でまた一年、良い漆を使って仕事をすることができます。
寒暖の差が激しい時節柄、くれぐれもご自愛ください。
敬具
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