フルでデュエル!オフ伝記【No.1】
※この文章は比喩的表現を多分に含めて作成されております
ことーし ことし
横浜のとある街に
ひとつのオフ会が産まれた
【開場】
激しい雨音、吹き荒ぶ風。その日は嵐と形容するに相応しい一日の始まりだった。
普通ならばこのような日に外へ出る者などいないだろう。だが、嵐の中、そこには三人の男が立っていた。
男たちは怒涛の雨にも劣らぬ気迫と、嵐にも劣らぬ威風を纏い、かの地へと赴く。
名は、"NATULUCK石川町元町店"
伝承の始まりを示す地だ。
その地は男たちが想像していた以上に広大で整った土地であった。
これならばーー三人の男は頷くと、力を合わせ、その場にあった木々から島々を作り出していった。
さらに島々には滅菌の布が、扉には滅菌の聖水が、空調には冷気の力が、窓には開きが、それぞれもたらされていく。
そうして顕現したのは、集う決闘者が互いにしのぎを削り合う"決闘場"。同時に、決闘者が互いの信頼を深め合う"遊戯場"であった。
程なくして、そこには決闘者が集まっていった。
決闘者たちはそれぞれ、運命のナンバーが記された札を手に取る。
その数字は決闘者たちをそれぞれの始まりの島へと導いていった。
やがて全ての決闘者が訪れ、島へと辿り着いた時、この決闘場の建造者たる男が口を開いた。
「………おはようございます!」
刹那の沈黙の後、男は名乗りを上げる。
「すきな通常罠はサンダーブレイクの、"うるし"です」
挨拶を済ませると、うるしはこの場に集った決闘者たちへ感謝の意を、守るべきルールを、浮かんだ言葉そのままに伝えていく。
そして言葉を出し尽くすと、最後に一つだけ残した言葉を口にする。
「それでは、フルデュエルオフ…」
うるしはおもむろに、横にあるホワイトボードへと手をかける。ホワイトボードには島々の地図だけが描かれている。
しかし、うるしの手の動きに合わせリバースすると、そこに真の姿が現れた。
「フルでデュエルオフ…フルでデュエルオフ……
『フルでデュエル!オフ』!!!!」
伝承が始まった瞬間である
【決闘】
決闘の開始と共に、うるしは島々を巡った。
その日はよく地縛霊が現れていた。
一つの島に一人は少なくとも地縛霊使いが居た。
近頃現れた地縛霊は魅惑的かつ強力と聞いていたが、どうやらそれは事実だったということだろう。
その存在に魅せられ、使役する決闘者が多く現れていた。
同時にキングの魂の一端を操る決闘者もまた多く現れていた。
彼らの多くが地縛霊の鎮魂に勤しんだことだろう。
どちらもその日にとっては新たな力のはずだったが、見事形へと変える実力者たちが多く居たということだろう。
しかし、その日その場にあったものは"オフ会"。
それが意味するのは、多様性に満ちたデッキ、そしてそれを操る決闘者たちとの出会いだ。
フルでデュエル!オフもその例外ではない。
うるしは決闘を巡る中で、様々な決闘に出会い、それを目に焼き付けた。
つまずき、門前払い、デュエル・アカデミア、壱時砲固定式、レベル制限B地区、珍しい魔法・罠を駆使する決闘者が特に多く見られた。
どのデッキとも、いつかデュエルできる日が楽しみだ。うるしはそう想いながら島を渡り続けた。
そんな中で、偶然にも出くわした決闘の瞬間にうるしは胸が熱くなった。
"E・HERO ジ・アース"
このモンスターには"地球灼熱(ジ・アース マグマ)"という特殊能力がある。仲間のE・HEROの力を自身にそのまま加えるという能力だ。
状況は、相手の場に"地縛戒隷 ジオ・グリフォン"1体のみ。しかしグリフォンを倒せばこちらのライフが消し飛んでしまう。
その時、大自然の鳴動と共に現れたのがE・HERO ジ・アースだった。
ジ・アースは3体ものE・HEROの力を一挙に集結させていく。そうして合わさった攻撃力は、"12100"。
渾身の"地球灼熱斬(アース・マグナ・スラッシュ)"がジオ・グリフォンを一刀のもとに焼き斬り、諸共相手のライフを屠るのだった。
【閉幕】
時間にしておよそ8時間半。
決闘者たちは決闘を続け、だが瞬く間に閉幕の時を迎えた。
まだ興奮さめやらぬその決闘場に、うるしの声が響く。
「本日は、フルデュエル!オフにお越しくださり、本当にありがとうございました」
心からの感謝と共に、初めに出てきた言葉をうるしは口にする。
それから少しの注意事項と、お願い、そして他のオフ会の開催予告とを行う。
そうして決闘者たちへのお知らせが終わると、フルでデュエル!オフは閉幕を迎えようとした。
だが、そこでうるしはおもむろに口角を上げる。
それを皮切りに最後の儀式が執り行われた。
開場の時、決闘者たちが選んだ運命の札。そこに記されたナンバー、それはこのフルでデュエル!オフの決闘者たちに与えられた運命の"No."。
うるしはそれらが集った山から一枚の札をドローする。
描かれていたのは、天を摩する地獄の門。
『No.1 ゲート・オブ・ヌメロンーエーカム』
どよめく会場。オフ会の始まりに相応しい、運命をうるしは感じた。
そうして、始祖のNo.に選ばれし決闘者に栄光が贈られ、フルでデュエル!オフ【No.1】は幕を閉じるのだった。
最後に、横浜に集った決闘者たちに大いなる感謝を。
決闘者たちの次なる参加が、フルオフをまた熱くさせるだろう。
つづく
著 ウィルシー・フルデュエー