見出し画像

後悔しないコンサートのつくり方(4)チラシ・チケット・宣伝【吹部向け】

 全10回の予定でお送りしておりますこのシリーズ。おそらく一番長くなるであろうと思われる第4回目は、チラシをつくる、チケットをつくる、そして宣伝する、というフェーズについてです。


(1) 演奏会の内容を考える
(2) 場所を決め、準備する
(3) 曲目と曲順を決める
(4) チラシ・チケット・宣伝 ★
(5) 対外手続きをする
(6) 役割分担
(7) 当日配布の印刷物
(8) 当日必要なものを準備する
(9) リハーサル
(10) いよいよ本番日!


チラシをつくる

 紙のチラシは、デジタル化のすすむ昨今においてもなお、お客さんと演奏する側をつなぐ重要な宣伝媒体です。単にチラシを作るのにも、いくつもの方法があるでしょう。アマチュアの吹奏楽団の場合、おおよそ次の3パターンになると思います。

 ① 自分たちでデザインし、コピー機・または印刷屋さんに発注
 ② デザイナーさんにデザインを依頼し、印刷屋さんで印刷する
 ③ 印刷屋さんにデザイン&印刷を両方お願いする

 どの道を選ぶのか。大きな決め手はまず、予算です。そりゃ当たり前だよって言われそうですが、お金がなかったら始まりませんし、できる範囲でやるしかありません。でも大丈夫、アイデア次第で予算がなくても面白いチラシはきっと作れます。
 呼びたいお客さんの層も、3つの道のどれを選択するかに深く関係してくると思います。内輪の人だけを動員すれば良いなら、チラシにお金を掛ける必要は、あんまりないと言えます。より外部のひとまで呼びたいなら、デザイナーさんや印刷屋さんの力を借りて、チラシ・広報のちからで人を呼びこむ手立てを考えるべきでしょう。

 アマチュアの演奏会では、デザイナーにデザインを依頼することはあんまり無いと思うので、もしチラシ担当になったら、デザイナーさんの制作した商業コンサート(アマチュアのではなくて)のチラシをできるだけたくさん見るのがいいと思います。いいなと思ったチラシのマネをしてデザインすることは、よいチラシをつくることの近道になるのです。※あくまで参考、リスペクトですよ!パクリはだめです。
 クラシックのチラシが手軽に網羅的に見られる、こんなアプリもありますので、よかったらご参考まで。

 最近は格安の印刷屋が増えたので、一般人にも手軽に印刷を発注することができるようになりました。お金がないからといって、コピー機で印刷することしか視野に入れないのはもったいない。
 …どことは申しませんが、両面カラーを1000部、発注してから7日で納品という発注で3000円以下というチラシ屋さんもありました。一枚あたり3円。ね、コピー機を使うの、ちょっとバカらしくなりませんか?
 ちょっと探せば、より安く、キレイに、簡単にチラシやチケットをつくる手段がありますよ。お金・労力・クオリティのバランスを保って、自分たちに合ったチラシ作りができるといいですね。


チラシに載せる内容

さて、チラシに書いておかなくてはならないのは、だいたい次の項目です。
 ①演奏会の名称
 ②演奏団体の名前、指揮者の名前、演奏家の名前
 ③演奏会をやる日にち・曜日と、開演時間、開場時間
 ④演奏会をやる会場の名前と、最寄駅などアクセス方法
 ⑤チケットのことと、入手方法
  ・指定席なのか、自由席なのか
  ・値段はいくらなのか、割引はあるのか
  ・予約・購入はどこでできるのか、どこに連絡すれば買えるのか
 ⑥お問い合わせ先 メールまたは電話またはその両方
 ⑦演奏曲目(主なものだけでもOK)
 ⑧主催の名前、共催の名前、後援の名前
 ⑨この演奏会のオススメポイント、宣伝する文章(キャッチコピーなど)

 けっこう多いと感じるでしょうか。でも、会場の場所がわからなければ行こうと思っても行けないし、開演時間が1時間違っていても大問題。チケットがどこで買えるかが書いてなければ購入意欲は一気に失せるものです。太字の項目は、抜けたり間違っていると特に困りますので、しっかり確認してくださいね。曜日は特に間違いやすいです。私もよく間違えます(え?)

 そうでした、大事なことをひとつ忘れておりました。校正です。佼成じゃないですよ。
 出来上がったプログラムの原稿を印刷にまわすまえに、誤字脱字など内容にミスが無いかを確認することを、校正と言います。編集係はずーっと同じ原稿を見続けるので、見慣れてしまって、間違いに気づく目を持ちにくくなってしまうのです。団員の何人かで、間違いが無いかどうか、かならず元の原稿と照合しつつ、確かめる作業をしてください。

 最低限、校正でチェックしなくてはならないことを挙げておきます。
【つづり、漢字の間違い】人名は信頼関係に関わるので、特に入念に。
【年月日、曜日、開演開場時間、チケット金額】日付と曜日が食い違っていたりすると、お客さんはどちらを信じればよいのかわからなくなり、混乱が生じます。ああこわい。そんな状況、ほんとおそろしい。
【スポンサー(後援・協賛)】協賛金やお祝い金などをいただいている場合、ここが抜けると大問題!ああこわい。

 チラシをデザインし、校正し、印刷して手元に届く(納品)のが、早ければ早いほど、その後の広報もしやすく、戦略も立てやすくなります。コンサートがあと1ヶ月に迫っているのにようやくチラシができました、っていうのはちょっとカッコわるいし、せっかく力作のチラシを使えずに死蔵するなんて、それこそ目もあてられません。なるべく早め早めにプランをたてて進行するのが吉ですよ。


チケットをつくる

 チケットは無料の公演・有料の公演を問わず、あったほうが良いと私は考えます。一般的にプロの公演では、チケットの役割は、チケットをもぎった半券を数えることで、何人入場したのかを正確に知ることができる、という点にあります。それ以外にもいくつかのメリットがありますので、以下に挙げていきます。

①チケット=予定を取り付ける
 口約束だけで「この日に演奏会するから来てねー!」と言うより、チケット(整理券)を渡すことで、いつどこで何時から演奏会なのかを、しっかり相手に伝えることができます。チケットを見返せば、スケジュールの確認も簡単。
②客数管理(整理券機能)
 無料の公演をする時に心配なのが、予想以上にたくさんのお客さんが来てくれた場合、満席になり、入場できないお客さんが出るかもしれないということです。これは座席の数だけ整理券を発行することで、防ぐことができます。
③経費のコントロール
 当たり前ですが、チケットを事前に買ってもらえれば、先にお金が入ってきます。経費の回収ができるのです。そして、一度お金を出して購入した演奏会なら、少し天気が悪くても聴きにいこうと思いますよね。ちょっとやそっとの雨風に負けない演奏会にするために、結構重要なとこかも。

 プロの演奏会のチケットのようにミシン目が入ったものでなくても、ちょっと厚手の紙でできたカードでも充分に用は足りると思います。家庭用プリンターで印刷できる用紙もありますし、ぜひチケットを作ること、検討してみてください。


宣伝する(物理的に)

 インターネット上の宣伝・告知については、メディアや媒体、新しいSNSなどが次々に出てくるので、ちょっと今回は割愛します。
 そもそもインターネットでの広報は、手軽に情報発信ができる一方で、年齢層が限られてしまうものでもあります。同じようにスマホやパソコンを使いこなす世代のみを対象にするならば良いのですが、もしそうでない層にもコンサートに足を運んでもらいたいと思うなら、ネットのみでなく物理的に様々な手段で、コンサートのあることを広く告知していく必要があるでしょう。
 以下、比較的簡単で経費のかからない方法を列挙します。

◆学内掲示
 ポスターのサイズに制限のある場合があるので、制作するまえにきちんと確認を。掲示許可を取る必要がある場合は、申請ルートをあらかじめ確認しておきましょう。

◆市町村の掲示板など
 活動している地域の自治会などが管理していることが多いです。意外に地域のお年寄りがよく見ていたりします。無料公演の場合は特に有効です。掲出依頼は役所または自治会への問い合わせになるでしょう。

◆地域の店舗等への掲示依頼
 足で稼ぐ方法です。学校の周りで日頃お世話になっているお店に交渉し、ポスターやチラシを貼らせてもらうというもの。個人経営の飲食店や小売店、コンビニなんかでも割と見かけることがありますよ。快く引き受けてもらえたら、御礼として当日の招待券をお渡ししたり、お店のことを自分たちのSNSなどで拡散するなどしてあげれられば良いですね。最初はどうしても尻込みしてしまうかもしれませんが、自分たちの思いも寄らないところへの告知に繋がる可能性もありますから、チャレンジしない手はありませんよ。2〜3人でまとまって行くと勇気が出やすいかも。

◆フリーペーパーへの掲載依頼
 無料配布のタウンマガジン地域情報誌の中には、様々な形態で地域のコンサート情報を掲載してくれるものがあります。地域によって媒体が違いますので、まずは自分の身の回りにあるフリーペーパーを調べてみましょう。また、クラシック音楽のフリーペーパーの最大手といえば「ぶらあぼ」です。基本的にこの雑誌は広告収入をベースにして成立していますが、巻末にはたくさんの公演情報が網羅されていて、北から南までありとあらゆる地域でのコンサートが掲載されていることでも有名です。小さいスペースですが掲載が無料なので、情報を送っておくにこしたことはないでしょう。紙媒体に掲載されれば、それをSNS等のネタにすることもできると思います。

◆他コンサートへのチラシ挟み込み
 近くで開催される、他団体のコンサートの当日配布プログラムに、自分たちのチラシを挟み込んでもらうという手段があります。実行するために、いくつか注意点があります。
 ①同じジャンルのコンサートにお願いする
 関連性の無いコンサートに挟み込んでも、客層が違えば、効果は薄くなります。できるだけ自分たちのコンサートと似た公演でお願いするようにしましょう。
 ②相手にもメリットの提示を
 可能であれば依頼する団体さんのチラシを自分たちのコンサートの時に挟み込みするとか、相手先の定期演奏会などに足を運ぶなど、相手の団体にもメリットを提示できると、OKしてもらえる可能性が高くなります。
 ③部数、挟み込み日の厳守
 せっかく好意で挟み込ませてもらうのですから、枚数や挟み込み作業日程を間違えたり、遅れたりすることのないようにしましょう。よくあるのが、開催するホールに直接チラシを送付することにしたはいいものの、荷物の到着が早く(あるいは遅く)なってしまい、ホールと開催団体へ迷惑をかけてしまう、というものです。人対人のことですから、発送手続きなどは確実に。

 ……だいぶはしょってるはずなのに、文字数が前回の倍ちかくなっちゃいました。広報の話はほんとにきりがないです。次回はちょっと戻って、コンサートを開くために必要な対外手続きについてお話していきます。

いいなと思ったら応援しよう!