#47 五位以上

 今夜のNHK大河ドラマ「光る君へ」では、まひろ(紫式部)の父、藤原為時がまず淡路守に任じられ、除目後に転じて越前守に任じられる件があった。このような事態は当時としても珍しいものであったらしく、朝野の関心を集めている。そもそもドラマの中で為時本人が言っていたように、正六位上が国司に任じられる可能性は低く、なってもせいぜい下国の淡路守が妥当であった。なぜか直前に従五位下に昇叙したが、それでも大国の国司は従五位上が原則であり、10年以上散位であった為時にとって越前守は望むべくもなかったのである。昇叙そのものが異例であるため、越前守を念頭になされたものとの理解も可能ではあるが、すでに任官されていた源国盛を押しのけて越前守に転じることは、まさしく異例中の異例であった。国盛はその後、同じく人気の高い大国である播磨守に任じられるが、病を得て没している。失意のあまり没したとされるが、本当のところは分からない。
 なお、一条天皇が涙したとの逸話もある徐目後の漢詩を、ドラマではまひろが書いたことになっていたが、花山天皇に近侍した学識の高さは、為時本人に帰すべきであろう。政治的利害も見当たらないことから、やはり来着した宋人への対応を藤原道長ら公卿から託されたと考えたい。
 ちなみに、公家のうち三位以上を公卿といい、五位以上を貴族という。五位以上の官位は勅命をもって任じられ、天皇の生活空間である内裏清涼殿へ昇殿することも可能となる。官位相当制と呼ばれるように、官位(官職と位階)はそれぞれ対応させることが基本であり、相応の位階を持つ者が相応の官職を得られるのが原則であった。
 国司にもランクがあり、大国13ヵ国(大和国・河内国・伊勢国・武蔵国・上総国・下総国・常陸国・近江国・上野国・陸奥国・越前国・播磨国・肥後国)は従五位上、上国35ヵ国(山城国・相模国・筑前国など)は従五位下、中国11ヵ国(安房国・若狭国など)、下国9ヵ国(淡路国など)は従六位下以上など規定があった。特に、越前国と播磨国は熟国と呼ばれるほど実り多い国とされており、さらには京からも近いため、遥任ではなく実際に赴任しても負担が少ないため、人気が高かったのである。後世、平清盛一門は播磨国司を長く務め、経済的基盤としている。

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