コレできた?=恋人できた?←これ何?
作業着の男性であることへの疑問はないことにしてもらって、みなさんは「コレ」言われたことがあるだろうか。自分達の親以上の世代がよくやる(印象である)、小指を立てて「コレ」と言う隠語の類である(以後、小指のコレと呼ぶ)。主に女性の恋人ないし愛人を指すものだ。
これ、よく考えたら意味が分からない。もし婚約や結婚という意味を孕むなら薬指の方が適切な気もするし、そうでないにしても「小指=恋人」というイメージは何から来ているのか正直謎だ。
それに小指のコレは今やちょっとした死語である。隠語はいつの時代も普遍的に需要があるはずだから、我々世代(04世代)が使っていてもおかしくない気がするが、なぜか我々は使わない。
なんか妙に気になったため、「小指=恋人」である理由を調べてみて、あと何故これがちょっとした死語になってるのか考察してみたい。
「小指=恋人」のルーツは?
困ったらWikipediaだ。論文とかもちょっと探してみたが中々良いものが見つからなかったので結局Wikipediaだ。「小指」の記事を見てみるとこんな記述があった。(若干グロめな説明なので注意)
えぇ………(ドン引き)
「そういう文化だ」と言われてしまえばそれ以上言い返しようがない(?)のだが、こんな時代があったのは些か信じがたい。ここで言う「誠意や忠義」というのは、「相愛誓約の証」としての意味を持つのだそうだ。そこまでする??あいみょん??
なぜ死語に?
自分なりに小指のコレがなぜ今普及していないかを考えたい。まずこの記事をここまで読んできた人は「小指あげるとかキモいから」という理由を思いつきそうだが、この遊女の件に関しては小指のコレを使っている世代でもそうそう知られていない事実だろう。言葉は元々原義を持って生まれるが、その原義は時間が経って都合がいいように意味が改変されたり、付け足されたり、取り除かれたりする。「土壇場」という言葉は日常的にもよく使うが、これが元々「処刑場」という意味であることを知って使っている人は多くはいないだろう。知っていたとしても、それが会話の中での「土壇場」の使用に影響を与えることはない。むしろ処刑場という意味で会話の中で用いると変な感じになりそうだ。そんなわけで、原義キモいから説に対して私は否定的である。
じゃあお前はどう思うのかと聞かれると、ずばりSMSおよびSNSの普及によるものだと思っている。文字での会話は対面での会話に比べてハードルが低い。対面以外の会話の手段が限定的だったころ、「恋人」を「恋人」と言うことは避けられたのではないかと思う。古文にも見られるように、日本人は遠回しな表現を好む傾向にあるため、「恋人」と言うよりも小指のコレを用いる方が気楽で粋だと考えたのであろう。
しかし、SMSないしSNSによって対面でない会話の手段がもたらされると、小指のコレを使う事は当然無くなる。そもそも小指を立てている絵文字が無く*再現できないというのもあるが、対面のプレッシャーがないため、恋人を恋人と言うことへの抵抗が比較的弱い。そして、ハードルの低い文字での会話が確立されたことで、対面での恋バナのハードルの相対的な上昇を引き起こしたのではなかろうか。このような恋バナをする環境の変化が、小指のコレを絶滅させる原因になったのではないかと考える。
また、死後についてこんな論文を見つけた。
今回の例では、小指のコレの絶滅の原因は①それに代わる役割を持つ新語の発生に近いと思う。新語が発生した、というよりは、小指のコレに代わってそのままの「彼女」「彼氏」「恋人」の使用が多くなったのだと思う。対面での恋バナのハードルが高くなったことで、あえて恋人を遠回しに表現する機会が減少し、小指のコレは使用頻度が下がっていったのかもしれない。
持論を展開してはみたが、かなり個人的な見解なので、異論は大いにあると思う。ぜひ各々説を提唱してみてほしい。小指のコレに対する理解が深まるかもしれない。深めてどうするんだ感はあるが。
それでは。
*なお、小指を立てている絵文字がないことに関しては、欧米の国では小指を立てるサインを侮辱とする地域があるためだと考えられる。海外で恋バナをする時には注意が必要だ。
【参考文献】
「小指 - Wikipedia」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/小指
中本駿平(2017)「発生方法からみる新語と死語の関連性」http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kokugo/nonami/2016soturon/nakamoto.html