なぜ、フィルム写真を選択するのかについて。
デジタルカメラが普及し既に久しい昨今ですが、世の中には多くのフィルムカメラユーザーが居ます。
僕もその一人であり、今まで何の疑問も持たずにフィルムカメラを手に撮影を繰り返してきました。
僕の場合、高校生の頃に初めて手にしたカメラが母から譲り受けたCanon Eos kiss(初代)というA F・AE搭載の押すだけで写真が撮れるフィルムカメラだったので、写真を撮るにあたりフィルムカメラという選択について疑問はあまり持っていませんでした。
それからかれこれ今年で10年、使い方が荒いのか撮影量が多いのか原因は分かりませんが、多くのカメラを壊しては買い…みたいなことを繰り返してきました。
もちろん、その中にはデジタルカメラも含まれます。
RICOH GR DIGTALⅢ なんかは高校での授業中に撮影したり、旅行に行けば最前線で使用し、文字通り壊れるまで使い倒しました。笑
映像の世紀と称された20世紀を経ても、技術の進歩は目まぐるしく、世の中にはフィルムカメラより精細且つ効率的で魅力的なデジタルカメラが普及していますが、多くの人が未だフィルムを愛し、使用し続けるのは何故でしょうか?
様々なご意見があるとは思いますが、自分なりに考えてみました。
Leica M3
Summar 5cm f2
Kodak Ektar100
アナログ趣味・物質感。
まず、僕の場合アナログなものが好きです。笑
拙い字ですが、紙にペンで文字を書くのが大好きで、同様の魅力をフィルム写真に感じているように思えてなりません。
白黒写真だけですが、暗室に入ってプリントする時間が本当に好きです。
酢酸の香りを感じながら、赤暗い部屋で手を使って‘’モノ’’を作る感覚、そして印画紙のテクスチャーを手に感じながら写真を鑑賞する時間がとても有意義なのです。
まぁ、なんというかそういったアナログ趣味的な魅力がフィルム写真にはあるように思えます。
あと大切なのは物としてきちんと残ってくれることですね。
デジタル写真はモニターで確認する時以外にプリントするまでは、存在が不確かな印象があります。
以前、外付けHDDをうっかり壊して大切な撮影データをごっそり失ったことがありますが、ネガフィルムが残ってさえいれば家が火事にでもならない限り写真を失う心配がない事は大きいと思います。
110フィルム
Canon Eos 5D Mark2
Planar 50mm F1.4 ZE(たぶん…)
フィルムが作る画像。
ぱっと見でも画としてネガフィルムの写真とデジタル写真は異なるものだと言えるでしょう。
35mmのカラーネガフィルムは画像の精細さで言えばデジタル写真よりも不鮮明だし、カラーバランスも崩れている。
シャドー部に青系の色が被ったり、ハイライトにイエローが被ったり、と逆にそのカラーバランスが優しい雰囲気を作り上げ、印象として記憶色を思い起こさせるのかも知れません。
ポジフィルムは割とデジタル写真に近い正確な色再現をしていますが。
Contax T3 Sonnar 35mm F2.8
Kodak Portra400
Contax T3 Sonnar 35mm F2.8
Kodak Portra400
Contax T3 Sonnar 35mm F2.8
Kodak Portra400
記憶色は目で見る世界よりも魅力的に感じられると言われています。
カラーネガ写真の魅力はそういった部分にもあるのでしょう。
そして、画像の精細さでデジタル写真と比較するといえば、ブローニーフィルムはどうだろう?という疑問が当然湧いてくるように思います。
素直な印象で比較すれば確かにいい勝負になるとは思いますが、フィルム面積とセンサーの面積が異なるということは、被写界深度が異なるので、単純に精細だからデジタル写真の代替えとしてブローニーフィルムを使用するという話にはならず、どちらの被写界深度の画が欲しいかも考慮する必要があるように思います。
ネガフィルムならではの色再現、不鮮明な画像かも知れないけれど、その柔らかい写りはカラーネガフィルムの魅力ですね。
白黒写真の場合。
白黒フィルムの場合、カラーネガとは全く異なる魅力を感じています。
よく、何故カラー写真があるのに態々白黒写真を選ぶのか…?といった問いがあると思います。
ちょっと汚い手とタバコが映り込んでいて申し訳ないのですが、こいつが印画紙にプリントされた白黒写真というやつです。笑
使用した機材やら感材はこちら。
・Canon Eos 1V (カメラ)
・Sigma 40mm F1.4 Art (レンズ)
・Adox CMS20Ⅱ (フィルム)
・Adox Adotech Ⅱ (フィルム現像液)
・APO-Rodagon 50mm F2.8 (引き伸ばしレンズ)
・Foma Fomatone MG Classic 132 (印画紙)
見ての通り、解像度に特化したセレクトです。笑
Adox CMS20Ⅱを使用してISO12での撮影は手持ちだと結構大変です。
ホコリが写ってて申し訳ないですが、これはプリントの上に乗ったホコリです。
肉眼でないとちょっと分かりにくいんですけど、めっちゃ精細なんですよね。
あと、印画紙の手触り感が最高に気持ちいいです。
白黒写真を選択する理由は色々あります。
例えば、色による印象がなくなる分、被写体の質感が強調されることや、決定的瞬間を狙う写真家の中には、よりその場の事象について考えられるからという人もいます。
それ程、人が色から受け取る印象は強い物なんですね、写真から得る印象が色に引っ張られるのが嫌っていう人は是非、白黒写真を選択してみて下さい。
僕の場合は印画紙に焼き付けたプリントがとっても精細で好きだからってのと、普通にカッコいいからです。
カラーネガだと角のとれた柔らかい表現になりがちな感じがするので、バシッと黒の締まったソリッドな写真が欲しいのです。
余談ですが、ジブリ映画で有名なとなりのトトロの作画では縁の線に茶色を使用し、柔らかい印象を産み出しているらしいですよ。
プロの方々はそういった細かい選択で写真や映像から得る印象をコントロールしているんですね。面白いものです。
長くなりましたが、そんなこんなで僕もまだまだフィルムが大好きなので、この世からフィルムが無くならないように沢山使っていきたいですね。
デジタル写真が悪いとは言いません、写真作品の制作効率で言えばフィルムより遥かに優れています。
フィルム写真に悩んでいる人はデジタルを、デジタルに満足できない人はフィルムを試してみては如何でしょうか?
責任のある立場でない限り、どっちが正解かなんてのは自分がそれを「好き」って気持ちだけで良いと思いますので、楽しんだもの勝ちです!