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輪廻独断の裁定に関する一考察

0.まえがき

 それは2021年の5月12日のことでした。公式フラゲことYU-GI-OH.jpが『ANIMATION CHRONICLE 2021』の収録カードを公開したのは。

 そこにはDMでラフェール戦において遊戯が使用したクリボー兄弟やVRAINSでAiちゃん(cv櫻井孝宏)が使用したカードが公開されていましたが、とある1枚の衝撃が大きすぎました。それは、GXでヘルカイザーが使用した『輪廻独断』です。

輪廻独断
永続罠
①:1ターンに1度、種族を1つ宣言して発動できる。このターン、お互いの墓地のモンスターは宣言した種族になる。

 原作では永続効果だった種族変更が、OCGだと毎ターン起動できる効果になり柔軟性が増しました。原作のままだと表と裏のサイバーが機械族とドラゴン族を巡って種族争いをしてしまうので、これは良改変でしょう。

 しかしOCG的には色々大変になっています。幾つかの要素が絡んでこれまでに無いカードになっているからです。

 そして、Twitterを騒がしトレンドに乗ったり即座に無限ループが開発されたりと賑々しくなっています。

 ただ、それ以前に、遊戯王には1万枚以上のカードとそれに付随する裁定があります。英国法のようにこれらが積み重なってルールを形成しています。発売前でルールが公式から示されてない現状、多少は既存のカードのルールを考えグレーの部分を認識しておいてもいいでしょう。

 以上をまえがきとして、『輪廻独断』の特殊性を踏まえつつ、裁定で注目したい2点を述べます。

 あ、一応言っておくけどイラストは無断使用禁止です。

1.『輪廻独断』の特殊性

 『輪廻独断』の効果を分解してみましょう。

 1:効果の発動(種族宣言)
 2:種族の変更(ターン終了時まで)

 効果の起動を伴う特定の場所に存在するモンスター全てに対する、一部ステータスの変更で、類例には『真竜皇V.F.D.』や『帝王の轟毅』が存在します。ただし彼らがフィールドのモンスターに影響を及ぼすのとは異なり『輪廻独断』が影響を与えるのは墓地。墓地すべての種族変更は『アンデットワールド』が存在しますが、あちらは永続効果ですし、ついでにフィールドも含めます。

 起動効果で墓地の種族・属性を変更するものはというと、「エレメントセイバー」が自身の属性を変更するのみです。

 つまり、『輪廻独断』はこれまでに存在しなかった効果の種類の組み合わせです。なので、どんな裁定が出るのかは今の段階では未知数。これまでのOCGに類例こそあれどもそのまま適用させられる効果が1つもありません。これが特殊性です。

2.裁定の分岐点

 さて、前の章で記したカードを見て、勘のいい人ならお気づきでしょう。ひと口に『効果起動によるステータス変更』といっても2パターンあります。それを下記の2枚を参考に考えていきます。

①『真竜皇V.F.D.』

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 みんな大好きモンスター効果絶対止めるドラゴンです。ところでこの①の効果、皆さん見覚えありますか? レアコレで変わってて少し困惑した覚えがあります。以前のテキストは以下の通りです。

 ①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、属性を1つ宣言して発動できる。ターン終了時まで、フィールドの表側表示モンスターは宣言した属性になり、宣言した属性の相手モンスターは効果を発動できず、攻撃もできない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 以前のテキストだと曖昧だった(というか他のカードと矛盾していた)箇所が変更されており、裁定通りの動きをする書き方になりました。つまり、発動後にも効果が残存することが明白なテキストの書き方になったのです。

②『帝王の轟毅』

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 ではもう1つ。帝王系では影の薄い速攻魔法です。V.F.D.の効果を上書きできるからアドバンス召喚軸のデッキに1枚挿しておくと便利だとかなんとか。

 とはいえ、このカードが属性を変更する範囲は『真竜皇V.F.D.』とは異なります。このカードによる属性の変更は、この効果の処理時に場に表側表示で存在するモンスターのみに適用されます。つまり「フィールドの全ての表側表示モンスターは」の前に「この効果の処理時に」が隠されている状態です。これは他のカード、例えば『リプロドクス』でも同じですね。

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 ここで再度『輪廻独断』のテキストを見ましょう。

「①:1ターンに1度、種族を1つ宣言して発動できる。このターン、お互いの墓地のモンスターは宣言した種族になる。」

 文中の「このターン」と「ターン終了時まで」が違うじゃないか、制約とか残存とかに関係するんじゃないか、という意見もあるかと思います。ただしこのあたりはかなり入り組んでいて自分でも語り切れない……

 例えば、同じ「効果の発動後の特殊召喚の制約」みたいな効果でも「このターン」と「ターン終了時まで」が使われています。違う意味が混同されているのか、テキストを短くする方向に舵を切っているのか、そのあたりは不明です。

 というかそこら辺を細かく考えると個別のnoteが3つくらい書けそうな気がしてくるのでここではやめて、同じものと考えます。(個人的な意見だと、「ターン終了時まで」はステータス変動や制約に多くて、「このターン」は状態変更や効果付与、制約に多いのかな? とは思います)

 ただ、『魔鍵錠ー解ー』や『ドラゴンロイド』の属性・種族変更が「ターン終了時まで」なのを見ると意図的に使い分けられている可能性も無きにしも非ず、だけど『真竜皇V.F.D.』がわざわざ●を使って適用される効果だと明記しているので混在の可能性も無きにしも非ず。

 だから、その部分は発売前のグレーの部分ってことです。つまり『輪廻独断』の種族変更に関する可能性は以下の2通りです。

①:効果の処理時に墓地に存在するモンスターにのみ種族変更が適用される(後から墓地に送られたモンスターには適用されない)
②:効果の発動後、そのターン中、墓地に存在する/墓地に送られたモンスター全てに種族変更が適用される

 どちらの裁定になるかは不明ですが、いま考えられている動きに対して大きく関わるのは間違いなさそうですね。

3.ステータス変動の適用範囲

 もう1つ、『輪廻独断』で考えておくべきことがあります。それは墓地で種族が変更されたモンスターが墓地を離れた場合、種族はどうなるのか、という問題です。

 こちらはほぼ同じような類例が存在します。前述した「エレメントセイバー」です。

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『エレメントセイバー・ナル』に関する裁定です。注目するのは「エレメントセイバー」共通の②の効果、裁定だと一番下の部分です。以下引用。

■『墓地のこのカードはターン終了時まで宣言した属性になる』モンスター効果は、効果を発動した「エレメントセイバー・ナル」自身が墓地に存在する間のみ適用される効果です。その効果を適用したターンに墓地から特殊召喚したとしても、その属性は元々の属性である水属性としてしか扱われません。

 以上のように、属性変更では墓地から離れた場合だと変更がリセットされます。他にも『冥界の魔王 ハ・デス』の効果が適用されたモンスターが墓地から離れれば効果の無効化が適用されなくなります。なので、基本的に墓地で変動した/付与されたステータスは墓地限定と考えるのがいいでしょう。

 また、『御前試合』との裁定や『デビリアン・ソング』を見る限り、発動時に後続の処理と矛盾しそうな場合でも効果は発動できそうです。

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 このため『輪廻独断』で獣/獣戦士/鳥獣族のいずれかを宣言した後で『鉄獣の抗戦』を発動すれば、最大4体まで墓地の任意のモンスターを効果を無効にして特殊召喚できると考えられます。

4.まとめ

 まとめです。大体以下の2点を考えて発売日と裁定を待ちましょう、という感じです。

①:墓地の種族変更は以下の2つの可能性がある
●効果の処理時に墓地に存在するモンスターにのみ種族変更が適用される
●効果の発動後、そのターン中、墓地に存在する/墓地に送られたモンスター全てに種族変更が適用される

②:墓地から離れれば種族の変更はリセットされる

 既存のカード、その裁定を見ていくと以上のように考えられます。ただ、考えられるだけで実際の裁定とは異なる可能性もあります。そこは推測なのでご勘弁を。

5.あとがき

 こうして書いてみると『輪廻独断』はわりと大きく裁定に関する部分が不明確なカードですね。テキストの書き方まで出てくるとは思いませんでした。でも、最近のコナミはこういうテキストを簡略化・統一しているので見過ごせません。意外なところに落とし穴があるものです。

 それではまたどこかで~

 2021/06/12 追記
 『輪廻独断』の裁定が確定したのでアンサー記事を書きました。


 以下雑文

 Twitterで「輪廻独断」を検索窓に入れると「輪廻独断 禁止」がサジェストに上がります。ネタで言ってると思いきや本気の呟きも散見されて、まあ何と言うか。

 あれですか、『ドラグニティ・ブラックスピア』と『超再生能力』の動きが実質デッキ全ドローになるからですか。『鉄獣の抗戦』で最大4体蘇生できるからですか。それとも「悪用できる」からですか。

 尋常の方法ではサーチできないカードを含め3枚必要な無限ループを止める、2枚要求の複数蘇生を止める、遊戯王OCGはそんなことが必要になるほど緩くないです。サーチ可能なカード1枚が2枚、3枚になるのは当たり前。それをテーマ内のカードが複数持っているのでわざわざ他のカードを使う意味が無いです。
 そもそも勝利に繋がる無限ループだけなら特定のカードが3枚あれば現状のカードプールでも可能ですし。エクゾディア揃えるだけなら手札1枚(あるいは手札コスト1枚もつけて)で充分ですし。全体の枚数が少ないから、という理由なら、それらをサーチ・展開できるカードを考えてはいかがでしょうか。

 種族変更の「悪用」に関しては、「それができるならアンデット族が色々やってるはずだ」と返します。墓地に関する動きであそこまで多彩なカード群もそうそう無いです。というか墓地の種族を変更したところで、元々の種族/属性/カテゴリのサポート以上の効果が出るのか否かと考えると、ほとんどの場合で否です。

 種族変更をする手間、混合デッキだったとしても、サーチできないカードを前提にサポートカードを投入して両方を引く可能性。それが通る可能性。通したとして、それまでに消費したカードやターン数に見合っているか。それが可能になるなら現代遊戯王ならその前に勝ててます。

 だから、一部で騒がれているような禁止とか制限とかはあり得ないと考えます。何らかの可能性で以って事前に禁止にぶち込まれるなんて……

The tyrant NEPTUNE「やあ」

 ……まあいいや。永続罠で実用性の低いソリティアや無限ループみたいな悪用方法を考えたいんだったらいいカードがありますんで貼っておきます。

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漆・狐影
駄文を書くカボチャ。体験を徒然と