合戦と会話は分かり合えない

 また遊戯王で汎用手札誘発の話が出てるから、いい機会だし簡単に書いておこうと思う。雑談くらいの感覚で。なお、以後「汎用的な手札誘発カード」を「汎用誘発」と呼称する。

 結論から述べれば、遊戯王プレイヤーの意識、遊戯王というゲームに向ける認識は各々異なる。だからカードに対する意識や認識も異なって当然。なのに自分の考えだけを述べて相手を貶めるのは、端的に言って考えが足りない。

 遊戯王自体が原作は人気漫画で25年以上続き海外展開までしている古参ゲームなのだから、遊戯王というゲーム、その抑止力たる汎用誘発カードへの認識も違う。それを無視して「汎用誘発は嫌い(おおまかな翻訳)だし理由が無ければ自分に向けて使わないでほしい(印象)」と叫んでいるだけでは何も変わらないし、当人も何かを見ているとも思えない。

 汎用誘発に何かしらの感情的な因果関係を求め、自分が納得できなければ渋い顔をして嫌いと言う。そんな狭量な精神でよくまあ今まで生きてきたものだ。それとも不満を述べれば周囲が追従してくれていたからか。

 そして、自分が汎用誘発を使わないのと同じだけの理由を、相手は汎用誘発を使う理由として持っている。ただそれだけだ。

 だから汎用誘発に「無機質」だの「デッキとの相性」だの「使ってもいいと思わせる」だの過剰な「物語」を持たせようとするのはやめろ。汎用誘発を使っている人が思考停止でデッキに投入しているとでも思っているのだろうか。勝つために考え抜いた末に使っている。勝利への渇望が、ギラギラした欲望が、人の心が通ってないとでも言うのか。結局、「無機質」は「使われると嫌になる」の意を出ない。

 漫画「ドリフターズ」(著:平野耕太)の登場人物の言葉に以下のようなものがある。

「合戦そのものはそれまで積んだ事の帰結よ 合戦に到るまで何をするかが俺は戦だと思っとる 猿(ひでよし)以外本質は誰も理解せんかったがな」(織田信長)

「これは合戦ぞ 首の掻き合いに道理なぞあらんど 使える手ぇば何でん叩っこまねば 相手に申し訳ばなかど」(島津豊久)

 このように考える人にとっては遊戯王は合戦だ。何をすれば勝てるか、自分のデッキを研究し、相手を研究し、環境を研究し、例えカードそのものが強くても環境に合わなければ汎用誘発すら採用しない。最後の最後に結果としてデュエルが待っている。自分が積み重ねた総算として勝負に挑む。

 そしてルールの範囲であれば(生き死に、領地、身分等々がかかっているわけでもなし。ゲームだからルールは守って当然だ)何でもする。効果が無効になったモンスターの効果を発動し、フェイズ確認を怠れば巻き戻しをさせ、先攻で制圧し、マスカンに誘発を投げる。

 彼らにとっては当然の権利だ。相手も同じことをしてくるからだ。競争と勝敗のみが実力を分ける世界、デッキ作成からプレイングまで練りに練ったもの。言うなれば棋士やボクサーや格闘家。自分の実力を最大限に発揮するため自分を磨く。誘発は必ず相手を止められる場所に打つ、でなければそれほど効果は無いから。効果的にカードを使うために努力をしている。

 その研鑽を「汎用誘発は嫌い」で終わらせるのは雑と言う他ない。
「自分の動きが止まる」「動きを見ることも見せることもできない」に対しては「甘ったれてんじゃねーぞ」としか言いようがない。止めなければ自分の動きが見せられなくなるのだから。

 では遊戯王を「会話」とみなしている人はどうだろうか。

 自らのデッキを自分の考え方の集大成として披露する。相手のデッキも同じだ。だから、相手が相手のデッキ、すなわち相手の考え方も披露されなくてはならない。だから汎用誘発で動きを止めてしまうのはいけないことだ、と。

 その場合、過剰な制圧は構築時から思考の範囲外になり、互いにカード枚数のアドバンテージを稼いで「自分がしたいこと」の動きへ特化する。その動きが勝利へは道草を食った迂回路であっても好きなことをするために突き進む。ループゴールドバーグマシン(いわゆる「ピタゴラスイッチ」)のような美しさを求めて。

 それ、対戦相手いなくていいんじゃない? 相手からの妨害は想定してないの? は禁句なんだろうな。自分が話しているだけでは会話は成り立たない。お互いのデッキがぶつかり合ったときに何かが生まれる。まあ分かる。相手がいなければゲームは成立しない。AI戦でいいだろとか言わない。友達がいないとか言わない。

 ただ、それはどんなデッキでも同じこと。強さと勝利を求めて絞り尽くされたボクサーのようなデッキ同士の戦いでも同じことは発生する。汎用誘発を入れ、パワカを入れ、制圧を入れ。それでも同じことだ。

 デッキのコンセプトが違っても結果は同じ。だが、コンセプトが異なるデッキ・対戦者がデュエルをすればその差は如実に現れるだろう。それだけの話だ。それだけのことを「汎用誘発」と雑にくくるのはどうも納得がいかない。

 まあ、この2者の間で話が噛み合うはずがない。世界を見る前提となる思考が異なるからだ。ただし、相手に対して暴言を吐いたり否定したりはしない方がいい。礼儀はわきまえるべきである。

 だから、端的に言ってしまえば「遊戯王が会話ならその辺でくっちゃべってろ」「遊戯王が合戦ならこっちに被害を出すな」くらいの感覚でお互いを交友範囲から切り捨てて干渉しないのがいいのである。

 実際のところ、そんな難しいことは考えないプレイヤーのおかげで遊戯王が存続しているとは思うのだけれど。好きなカードを好きなように使って相手のカードにも目くじらを立てず、またやろうかと言い合う「一般カードゲーマー」のおかげで。

 アニメや漫画から入ったプレイヤーだってそうだ。端末世界や星遺物のようなカードストーリーもだ。一種コスプレのような感覚で楽しみたいと遊戯王をやっている者もいるだろう。

 自分だって星遺物ストーリー関係のカテゴリのみ全部載せデッキ作ったし使ってるけど、妨害受けても動けるようにしているし勝てるように調整している。あいつら素で優秀なの多いからってのはあるけどさ。星杯とかトロイメアとかオルフェゴールとか機界騎士とか。

 そういう選択を否定するとか相手の戦略や考え方を考慮に入れないとか、そんな雑に生きていきたくはない。これは自戒ですね。

 またどこかでお会いしましょ。

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漆・狐影
駄文を書くカボチャ。体験を徒然と