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【寝前小説】25mプール
雨が降っている
梅雨に降り出した雨は10日も続いていた
大学生になって1年
新しい環境になって新しい人に出会って新しい生活を始めて
1年生の時に定着したノリで話して
「こんなことしたいね〜」
なんて雑に話ながらダラダラと過ごしていく
談笑しながらみんなと別れていく
笑みを残したままふとこのままでいいのか考えてしまう
4年間は長いからなんて思いながらそれでもすり潰していく1日1日に恐怖を覚える
このまま終わっていくんだろうかなんて漠然とした不安に苛まれていく
今までの人生は何もしなくても学校という環境が流れてきていた
その人生を僕は忙しなく上手に泳いでいた
いきなり解き放たれた
今まで僕を縛っていた手は急に僕から手を離し、どこまでも離れていった
僕は泳ぐのが得意だった
学校の25mプールなんてがむしゃらに泳ぐだけでものすごい速さで泳ぎきれて、息継ぎなんてする必要も無かった
けど、25mの制約なんて本当は無かった
息継ぎがいらなかった僕は息継ぎの仕方なんて知らなかった
駅のホームに座る
ジメジメとした空気は僕に纏わり、押し潰そうとしてくる
息苦しさに呼吸が乱れそうになるが乱れる呼吸すらどこかに行ってしまったようだ
ただそのまま体は水に溶けていく
電車は来ないみたいだ