
【寝前小説】狭い世界の大戦争
歩いていた
男は自らの意志で己のゴールを見据えていた
まさにそこは灼熱地獄、40度を超えるかという気温と敵意を持っているかのような太陽が男に刃を向ける
遠くに見えていた陽炎はやがて男を呑み込む
視界がゆらぎながらも男は歩みを進めていく
自販機でも良かった
ただ、スーパーは目と鼻の先だった…
金が無い訳じゃない
変わった物を飲みたい訳じゃない
それは自分との戦いそのものだった
男の歩みは力強くなる
海にでも飛び込みたい気分だった
例えどんなに汚い海でも今なら喜んで飛び込むだろう
ふと記憶の海を覗き込む
ここまで幾度も倒れてきた
だがそのたびに友が励ましてくれた
仲間がついていてくれた
自分が鼓舞してくれた
だから男は自分を鼓舞する
自分を応援する
越えるべきは自分であり、ついていてくれるのも自分である
スーパーは目前だった
揺らぐ視界の中男は最後の力を振り絞った
そして男は死んだ