初めてサポートしてもらった話
昨夜久しぶりにnoteを投稿した。
あまりにも下品な話だったのでリンクを直接ツイートはしなかったが、いい機会だと思い「bioにnoteのURLを載せたのでよければ」と呟いた。
書きかけの記事がたくさんある。これを機にまとまらなくても完成させて投稿しよう。素人が書いてる日記だもの。たいした出来じゃないのは当たり前じゃないか。別にこれで誰かからお金を毟り取ろうという気もない。気楽に、気楽に。
今日は少し早く目が覚めてしまった。
二度寝するにも中途半端だしツイッターでも見るか…そういえば昨日noteに記事を投稿したんだった。何人か読んでくれたかしらエヘヘとnoteを開いてみたら、何件かの通知に見慣れない文字が混ざっていた。
なんて?
私はnoteに登録し、一丁前に記事と称してmixiの日記のようなものを載せているが、さほどnoteの機能に詳しくない。
正直言うと他人の記事を積極的に読んでいない。〇〇大賞なんてのもあまり見に行かないし、フォローしている方の記事を定期的に読むくらいだ。
サポート機能とやらも、人の記事の一番下に載っているものをチラリとは目にしたことがあるがどんなものなのかわかっていない。
慌てて他の人の記事を見に行き、一番下までスクロールする。
これか。自分の記事にも付いていたのか。
支援とはなんだ。いわゆる投げ銭ってやつか。記事の紹介?ブログやツイッターに記事のリンクを貼るとかそういうことかしら。誰かが貼ってくれたのかな。
恐る恐る「サポート」の文字をタップすると、WEB版noteに飛ばされた。普段アプリで見ているのでパスワードを求められ一瞬焦ったが、幸いスマートフォンにパスワードが残っていたため無事ログインできた。
まさかの投げ銭だった。メッセージも届いている。
匿名だがなんとなく見当はつく。あの人に違いない。よくベタ褒めしてくれて、書籍化したら買いますなんて言ってくれるあの人。
慌ててツイッターを開き彼女のホームに飛んだ。
やはりそうだった。私にとは書いていないが、それらしきことを呟いている。
「エッそんな…なんでお金?エッ?お金?」
寝起きの頭では理解が追いつかない。だってそうだろう、素人が書いた日記だぞ。どうしてそこに金銭が発生するんだ。
「5億円の有料記事設定しといて石油王の誤タップを待とうかしら ウフフ」
とかなんとか普段バカを言ってはいるものの、本気でお金を稼ごうとは思っていなかった。有料記事の設定方法も、値段の上限や下限も知らない。
役に立つ情報を公開しているわけでも、波乱万丈な人生を綴っているわけでも、どこから目線かわからない人生訓やアドバイスを書いているわけでもない。
こんな夢を見ただの電車に変なおっさんがいただの恋人が屁と間違えて実を出しただの、そんな話しかしていない。
おそらくnoteの一記事への対価ではなく、これまでの記事や普段のツイートも含めての支援のはずだ。では普段のツイートが役に立つ情報なのかと聞かれると困る。基本的に悪口と野次馬と妄想とセックスレスの愚痴だ。たまに下品な替え歌を作り、同性のフォロワーと狭い範囲でキャッキャしている。
考えれば考えるほど、そんなものにお金を払ってもらって本当にいいのだろうかと頭が混乱してくる。
混乱しているうちに時間は過ぎ、恋人が起きてきた。
コーヒーを淹れて一服している最中につい口が滑った。
「あのさぁ…………あ〜…………やっぱいいや」
「なによ気になるじゃん、言いなさいよ」
「えーと、ほら私ブログみたいなの書き始めたって去年言ったじゃない?投げ銭って言うのかな、なんか昨日投稿した記事に応援?みたいな感じでお金送ってくれた人がいるんだよ。誰がくれたのかはわかってて…あっ知らない人とかじゃなくて、ツイッターで繋がりある女性ね。いや嬉しいよ?そりゃ嬉しいんだけどさ、お金が発生するとは思ってなかったからなんか申し訳ないと言いますか…ためになることなんて書いてないしアドバイスしたとかでもないし、有名人でもないのにいいのかなって」
ベラベラと全部喋ってしまった。元々隠し事の苦手な人間がこんな興奮する出来事を黙っていられるわけはないのだ。
「エッなにそれ凄いじゃん!あなたの書いた文章にお金を払ってもいいって、世の中にそう思ってくれた人が一人でもいるって凄いことだと思うよ。よかったねぇ。で、いくら貰ったの」
「〇〇円…もちろん有料で公開してるとかじゃないんだよ、ほらmixiやってた頃と同じ感じの…普通の日記を書いてるだけで、それを無料で全部読めるようにしてて…だからなんつうか…いやわかるのよ、今は投げ銭で気軽に素人を支援できる時代だって。でも私は今までそんな経験ないから驚いちゃって。どうしよう同額のスタバカードとか贈ったらいいかな」
「へー〇〇円!その人は応援の気持ちであなたにくれたんだから素直に受け取ったらいいでしょ。そりゃいきなり⬜︎⬜︎円(一桁増やした金額)とかならなんか見返りを求めてるんじゃないかと思っちゃうけどさ、その金額なら素直に『応援』なんじゃない?その人は応援したい人にお金を出すってことが普通にできる人なんだよ。慣れとか価値観の違いもあるでしょ。向こうさんはきっと慣れてるんだろうし、お返ししようとか考えなくていいと思うよ。逆に失礼かもよ」
「応援…そっか…アッほんと見返りとか下心とかそういうのはないと思う。ホラ向こうが男性だったらさ、お返しに乳の写真でも送った方がいいのかなとか思っちゃうけど、若い女性だし絶対違うじゃん。応援の気持ちで投げ銭…価値観か〜なるほど…」
お礼に乳の写真とは何の話だと聞かれてしまったので、私はやってないけどツイッターにはどうやらそういう文化もあるらしいぞ怖いところねと伝えておいた。
「でもほんと凄いね、よかったね!…なによなんか複雑な顔してるけど嬉しくないの?」
「そりゃめちゃくちゃ嬉しいさ!メッセージももらったの!私の文章が好きだって!感激してとりあえずスクショ撮った!キャーッ!」
自分が書いたものを読まれるだけでも嬉しいのに、今回のことが嬉しくないわけない。初めての経験に困惑したのも事実だが、嬉しいことに変わりはない。
「で、そのお金もらった記事?日記だっけ?それはどんなこと書いたの」
「いやその日記だけじゃなく前にツイートしたこととかそういうの含めての応援であって…別にそのお金もらった記事が特別面白いからとかそういうのじゃなくて…あ〜ごめん!怒らないでほしい。あなたのこと書いた日記なの」
「え〜俺のことぉ!?なによンフフ…さては俺相当愛されてるな?いいじゃんいいじゃん!どんな話なの?」
「アッほんと悪口とかじゃないんだけど、あなたのプライバシーに関わる話で、勝手に書いて悪かったと思ってるし嫌ならもう書かないから」
「別に何書かれても怒らないって!で、俺のどんなこと書いたの?」
「……………………の話」
「なになに?なんの話?」
「あなたがこないだう◯こ漏らしたときの話…」
怒られはしなかったが「その話で儲けたなら俺には半額貰う権利がある」だの「5:5…いや8:2で俺だろ…」だの「俺のリキッドう◯こで稼ぐ女」だのブツクサ言われた。
出勤時、家の扉を閉める瞬間「許さない…」と呟かれ、思わず「ヒィッ」と声を上げたら扉の向こうからワハハと楽しそうな声が聞こえてきた。多分大丈夫だろう。
恋人はこんなことも言っていた。
「お礼がしたいの?あなたの文章が好きって言ってくれてるならさ、今までと同じように記事だか日記だか書いて公開してればそれでいいんじゃないの?応援してくれるってことは『これからも読みたいです』ってことでしょ。俺その人のこと知らないけど、とりあえずスタバカードは違うと思うよ」
結構いいこと言うじゃないかリキッドう◯こマンのくせに。ついこの間悲しそうにパンツを手洗いしていた中年男性の口から出たとは思えないほどまともな意見だ。
私は「応援」という名目で特定の個人にお金を出した経験はない。募金をすることはある。「買って応援、食べて応援」も多少している。
これらは特定の個人に向けてのものではないし、お金を払って物を買うのは普通のことだから抵抗はない。
では無料で公開しているものに気持ちよくお金を払えるかと言うとそれは別だ。自信がない。単行本を手元に置いておけるならいいが、そうでなければ払おうなんて思いもしない。要はケチなのだ。
当たり前だが多種多様な価値観の人間がいる。私が与えることに慣れていないだけで、自然に与えることができる人もいるのだ。
きっと彼女は深く考えず「好きだから」と応援してくれたのだ。見返りがどうとかそんなことは考えてもいないだろう。彼女にとっては自然なことなのだ。
ケチで卑屈な私としては「そんな!いいんですか!?私何もお返しできませんが!ヒィこわい」とあれこれ考えてしまうが、これは自分の物差しに当てはめて他人の価値観を否定していることと同義ではないか。あれこれ考えず素直に感謝すべきだ。
帰宅した恋人に聞かれた。
「朝言ってたお金もらったってやつ、あれお礼とかしたの?」
「アッ朝の段階で投げ銭のメッセージに返信はしてたの。そんでお礼になるかわからないけど、今回自分の書いたものでお金もらっちゃって、そのことについて朝ずっとウニャウニャ言ってたじゃないですか。それを日記にして読んでもらえたらなって…」
「おお、いいじゃない」
「エヘヘ…実はもう書いてるんだ!さっき手羽元煮ながらずっと書いてたの。えーと、今3000字ちょい」
「えっそれ相手からしたら重くない?怖っ」
結局4000字を超してしまった。怖がられても文句は言えない量かもしれない。
重い女のくどい文章がお礼として機能するのかは謎だけど、感謝を込めて普段通り書きました。
本当にありがとうございました!何か書いてお金をもらうのは生まれて初めてのことで、とても嬉しいです!重くてごめんね引かないでね!
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