逆順行性enbloc HOLEPについて。HOLEPはフリースタイル手術だ?
このページでは私の最近のHOLEPのやり方について解説してきます。
ちなみに逆順行性HOLEPというのは私が勝手に名付けました(笑)。
さてHOLEPという手術ですが、ほかの手術と大きく異なる点として、重要な構造物がほとんどなく、前立腺を最終的に取り出せれば、途中の過程はほとんど問われないという特徴があります。
逆行性だろうが順行性だろうが、上下左右どこから始めようが、前立腺を分割しようがしまいが、電気メスを使おうが使うまいが、とにかく過程は問われません。最終的に前立腺が核出できて、十分に止血されており、尿道括約筋が温存されていれば後はなんでもいい!、そんな自由で楽しい手術だと個人的には思っています。
しかしながら最も「合理的」にやろうとするとその過程はおのずと絞られていきます。
前回も説明しましたが、最も合理的な手法はen blocなのでこれは外せません。ということはおのずと逆行性アプローチでスタートすることになります。
しかしながら逆行性アプローチでは解剖学的にやや動作が困難という箇所がいくつかあります。しかしながら、膀胱頸部を開放してしまえば順行性アプローチも可能となるため、まず逆行性アプローチにてあらかた剥離をし、膀胱頸部を開放。しかる後に残った逆行性アプローチでは困難な部位を順行性アプローチにて仕上げてしまえばいい。これが逆順行性enbloc HOLEPの考え方になります。
さて解剖学的に操作が困難な箇所があるといいましたが、HOLEPにまつわる前立腺の解剖の重要な点として
①男性の尿道は屈曲している
②前立腺は膀胱の足側にややずれて位置している
という点が挙げられます。
①に関しては今さら何を言っているんだという話ですね。泌尿器科医なら誰もが知っていることですが、このため全体的に6時方向へのアプローチは容易だが、12時方向へのアプローチはしにくいという現象が生じます。これは特に手前(尖部)側において顕著で、尿道括約筋付近粘膜12時方向の切断はかなり難しいです。
②に関してはHOLEPを行っている医師なら何となくは理解しているとは思うのですが、明確に意識している人は少ない気がします。
雑な絵で申し訳ないですが、イメージとしてはこんな感じで、前立腺が膀胱より6時方向にずれているイメージです。
HOLEPやTURPの際にきっちり前立腺を剥離しきると、膀胱頸部6時が断崖絶壁になってしまうので何となくわかっていた人も多いのではないでしょうか。
そのため頚部6時方向を逆行性にどんどん進んでいくと、膀胱の裏に入ってしまう危険があります。
さて、これらの点を踏まえて最も合理的なHOLEPの方法を考えてみましょう。
まず精丘わきの粘膜を切開し、そのまま尖部の粘膜も2-10時あたりまでは切開し、逆行性に剥離を開始。
途中から徐々に上に上がっていき最終的には9-3時方向のどこかの膀胱頸部粘膜に到達しこれを切開。
そのまま粘膜切開を広げていき、頚部側を剥離。この際6時付近は順行性に剥離を行う。
そのまま12時方向を順行性に剥離しながら戻っていき、残った粘膜をバンドル状にして切開し核出終了。
これが逆順行性HOLEPの理想的な手順になります。
まあ途中剥離層がよくわからなかったりして手順が多少入れ替わることがありますがおおむねこの手順でやるのがenbloc法を安定して行うのに一番いいのではないかと今のところは考えております。
といっても文字で書かれてもよくわからないと思いますのでこれらのことを念頭に置きながら是非私の手術動画をご参照ください。近々解説付きの動画も上げる予定です。
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