ロキとカイロ・レンとアリエルと父親
父親と何らかの問題を抱えているキャラクターが好きである。
ロキは自らが養子であった事実を隠していたばかりか、実の子供である兄を贔屓する父親のせいでグレて地球征服を目論む。これだけ聞けば突拍子もない飛躍に思えても、全ては兄よりも偉大なことを成し遂げて、父親に認めてもらうための行動だ。
今まで血が繋がっていないと教えてくれなかったのは「私が怪物だからか」と涙ながらに養父オーディンへ迫るシーンは、こちらも涙なしには見れないし、ソー三部作を見れば作中で起こる問題の九割はオーディンのせいだと感じざるを得ない。
カイロ・レンは旧スター・ウォーズシリーズのスター、ハリソン・フォード演じるハン・ソロとレイア姫の間に生まれ、両親の光に押しつぶされて闇の道に進んでしまう。他にも諸々理由はあったのだが、主には恐らくハン・ソロが良い父親ではなかったからだろうなと察せられる展開だった。
そもそもハン・ソロは観客側からしてみれば魅力的なキャラクターであっても、模範的な父親にはなりそうにもないタイプだ。旧シリーズのファンがその大好きなキャラを貶めるような演出に文句を持つのは分かる気がするが、新シリーズはその点、非常に現実的に登場人物たちを扱っている。
今年公開された『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』ではロキが自らを「オーディンの息子」と名乗り、監督や演じた俳優の発言を見る限りでは、遂に父息子問題が解決されてしまった。カイロ・レンの方はというと、最新作エピソード8でも未だハン・ソロとのわだかまりは解消されていない。
このまま行って欲しい、と思う。彼の幸せを考えれば、父への反感云々を乗り越えて「お父さん大好き!」というところまで持っていくのが一番なのだろうが、一人くらい、最後まで父親が大っ嫌いなまま改心するみたいなキャラクターがいても良いのではないかと思うのだ。
「今までの行いは反省するけど、嫌うだけの理由があるのだから、父親は嫌いなままです」みたいな。
正直ロキに関しては本当にオーディンを許す必要は無かった。
あれだけ酷いことされてるんだから、ソー三作目で少しなりかかっていた、「父親とかどうでも良いや」というスタンスで家族のしがらみから離れて一生好きに生きて欲しかった。泣ける展開のためだけにそこを変えられてしまったのが、インフィニティ・ウォーで最も許せない点だ。フィクションというのは概して家族問題をお涙頂戴と安易に消費しがちである。
話は逸れたが、もちろん私がこういう思いを抱いているのは私自身が父親と相容れないからで、人生トップ10に入るくらい好きな『リトル・マーメイド』も、ラストでアリエルが父親と和解するところだけ、どうしてもモヤモヤしてしまう。家族を好きであるのが良いキャラクターであるのにそんなに必要な要素なのか、と。
何かしら家族間で問題を抱える登場人物がいればストーリーはそこに集中しがちだし、家族というのはその人を構成する一つでしかないのだから、そこはスルーで話を進めても良いのではないかと思ってしまう。まあそういうキャラクターと父親との関係にばかり注視している私こそが、一番家族というものに縛られているのだが。