プラハ・ベースボール・ウィークを振り返る
こんにちは。ウリムー(Twitter:CzechBaseballJP)です。7/6〜10にかけて行われた第43回プラハ・ベースボール・ウィーク(以下PBW)は大成功でした。このnoteでは、PBWを振り返り、チェコ代表の収穫と課題を挙げていきたいと思います。
1.初めに
PBWにはAグループとして日本(大学)🇯🇵、台湾(セミプロ)🇹🇼、ドイツ🇩🇪、チェコ🇨🇿、Bグループとしてギリシャ🇬🇷、スロヴァキア🇸🇰、ハンガリー🇭🇺、オーストリア🇦🇹、リトアニア🇱🇹が出場しました。
大会は初日の夕方に大雨が降ったため、7/7 2:00〜からの台湾vsチェコの試合が7/7 17:00に延期され、チェコ時間7/7には7回制で3試合行われるという変則的な日程となりました。
今大会はチェコ国内でも非常に注目されており、国営のスポーツ放送局でも大きく取り上げられ、毎日国営テレビで中継されました。上院議長とアメリカ大使がチェコ代表の初戦の前にチェコベンチを訪問し、チェコ国内でも著名な俳優であるオンジェイ・ソコルさんが試合前練習に応援に訪れました。
Aグループの試合が行われたイーグルス・パークのチケットの売れ行きは順調で、前日の時点で6日と8日の前売りチケットは完売し、席の増設や立ち見券が準備されました。大会第2日、第3日で相次いでチェコ野球史上の最多観客動員数を更新し、4日間で5000人が来場するなど、大成功と言える大会でした。
Bグループの試合も、現地にいった方の報告によるとギリシャ代表のファンを中心にたくさんの観客が入っていたとのことでした。
今回の代表選手については、チェコ代表については私のnoteを、各国の選手についてはMTMさんのnoteをご覧ください
2.Aグループ
ドイツvs日本(7/6 21:30〜)
🇯🇵 2 0 0 1 3 1 0 0 0 |7
🇩🇪 0 0 2 0 0 0 1 0 0 |3
投手
🇯🇵高木(5回 勝)-野口(2回)-市川(2回)
🇩🇪ゾルバッハ(4.2回 負)-ギラウド(1.2回)-クリフトン(2.2回)
本塁打
🇯🇵西川(ゾルバッハ 1回2ラン)
🇩🇪ベルグマン(野口 7回ソロ)
試合は日本優位に進みました。
ドイツは3月の欧州代表vs侍ジャパンの試合でも先発したエース・ゾルバッハ投手を立てましたが、初回にいきなり青学大西川史礁(みしょう)選手に2ランを被弾しました。一方で打線は初回から中京大高木快大(はやと)投手に24球を投げさせ、3回には失策が絡みで同点に追いつき、途中出場のベルグマン選手はホームランを打つなど対応ができていました。
日本は中盤にかけてドイツのミスに漬け込んで得点を重ねました。特に先発の高木投手は5回10三振2失点(自責1)と素晴らしい投球を見せました。5回にシュミット選手をカーブで見逃し三振にとった際は解説がBeautiful Curveball!!と称賛していました。
チェコvs台湾(7/7 17:00〜)
🇹🇼 0 0 3 0 0 0 0|3
🇨🇿 0 0 0 0 1 0 0|1
投手
🇹🇼黃玠瀚(1回)–伍立辰(3.2回 勝)–王宇傑(2.1回 S)
🇨🇿パカル(2回)–チャプカ(1回 負)–エルコリ(1回)–コルマン(1.2回)–ヴァンク(1回)–ヴァショウレク(0.1回)
本塁打
🇹🇼曾昱磬(チャプカ 3回3ラン)
🇨🇿
雨天で順延となり、ダブルヘッダーとなったため、7回制で行われましたが、この日も雨でした。
チェコは先発のパカル投手が速球を武器に2回3三振と素晴らしい投球を見せました。野手ではポスピーシィル選手がタイムリーを、ゼレンカ選手がツーベースをそれぞれ打ち、米大学組の面目躍如となりました。
台湾は3回に曾昱磬選手が打った瞬間の本塁打を放ち、先制しました。その後は得点を挙げることができませんでしたが、再三のピンチを凌ぎました。
日本vs台湾(7/7 21:30〜)
🇹🇼 0 0 0 2 0 0 0|2
🇯🇵 1 0 1 0 0 0 1×|3×
投手
🇹🇼黃仲翔(2回)–呂昱廷(4.2回 負)
🇯🇵高須(3.1回)–篠木(1.2回)–中村(2回 勝)
本塁打
🇹🇼
🇯🇵
この試合も7回制で行われました。
日本は初回に大商大渡部聖弥選手のタイムリーで先制し、3回には渡部選手のサードゴロに悪送球が絡んで先制しました。投手では3番手の愛工大中村優斗投手が2回4三振無失点と素晴らしい投球を見せました。
台湾は4回に范育銓選手の打席でエンドランをかけて得点に成功し、さらに陳致語選手も続き、同点に追いつきました。投手では2番手の呂昱廷投手は最後にサヨナラ悪送球をしましたが、4.2回を投げ1失点と好投しました。
チェコvsドイツ(7/8 2:30〜)
🇩🇪 0 0 1 0 1 0 1|3
🇨🇿 0 2 2 0 0 0 ×|4
投手
🇩🇪 シャーマン(3回 負)–シュラー(2.2回)–リント(0.1回)
🇨🇿 トメク(4回 勝)–フロウフ(2回)–ヴァショウレク(1回 S)
本塁打
🇩🇪バウムガルト(フロウフ 5回ソロ)
🇨🇿ゼレンカ(シャーマン 2回2ラン) ムジーク(シャーマン 3回2ラン)
この試合も7回制で行われ、チェコが空中戦を制しました。
チェコは2回にプロコップ選手の三塁線への二塁打でチャンスメイクすると、ゼレンカ選手の2ランで先制しました。1点を返された直後の3回にはムジーク選手の2ランで突き放しました。守備面ではピンチで二塁モルガン選手(3回)、遊撃プロコップ選手(4回)、中堅ドゥボヴィー選手(2回)、右翼クラクル選手(4回)に好プレーが飛び出し、先発のトメク投手を救いました。
ドイツはチャンスでチェコの好プレーに阻まれるなど不運が続きましたが、打球は非常に強かったです。日本戦で高木投手から10球粘って四球をもぎ取ったブレンク選手はハードヒットを連発しており、ポテンシャルの高さが窺えました。
台湾vsドイツ(7/8 21:00〜)
🇩🇪 0 1 0 0 0 0 0 0 0|1
🇹🇼 0 0 0 0 2 0 0 1 ×|3
投手
🇩🇪ゾマー(7回 負)–シュミッツ(1回)
🇹🇼陳冠穎(5.2回 勝)–陳品宏(1.1回)–王宇傑(2回 S)
本塁打
🇩🇪
🇹🇼
この試合から9回制に戻りました。
台湾は5回に朱瑋淇選手がセンター前へ逆転2点タイムリーを打ち、逆転に成功しました。8回には賴俊選手がゾーンに残ったスプリットを上手く拾い、追加点に成功しました。投手陣は陳冠穎投手、陳品宏投手、王宇傑投手のリレーでドイツ打線を1点に抑えました。
ドイツは2回にバウメー選手のレフト前タイムリーで先制しました。直後のピンチでサードのブレンク選手に好プレーが飛び出し、ピンチを脱出しました。ゾマー投手は5回に逆転こそ許したものの、7回2失点と素晴らしい投球でした。
チェコvs日本(7/9 2:00〜)
🇨🇿 0 0 0 0 0 2 0 0 1|3
🇯🇵 0 1 1 3 0 2 2 0 ×|9
投手
🇨🇿サトリア(3.2回 負)–ドゥフェク(2回)–コルマン(2.1回)
🇯🇵渡邉(6回 勝)–外丸(1回)–伊藤(1回)–藤井(1回)
本塁打
🇨🇿チェルベンカ(渡邉 6回2ラン)
🇯🇵柳舘(コルマン 7回2ラン)
日本優位で試合は進みました。
日本は2回に国学院大神里陸選手のライト前タイムリーで先制し、3回に大商大渡邉聖弥選手のタイムリーツーベース、7回には国学院大柳舘憲吾選手にライトへの2ランが飛び出して突き放しました。先発の仙台大渡邉一生投手は6回9奪三振2失点と素晴らしい投球を見せました。リリーフ登板した慶応大外丸東眞投手、早稲田大伊藤樹投手、東日本国際大藤井優矢投手も素晴らしい投球でチェコを5安打3得点に抑えました。
チェコは先発のサトリア投手は3回まではチェンジアップを武器に三振を奪いますが、被長打が多く4回途中5失点となりました。2番手ドゥフェク投手は5回裏1死1.3塁のピンチで前に転がったゴロを好処理して本塁でアウトを取る好プレーを見せました。打撃では、故障から復帰したチェルベンカ選手が6回にレフトへ完璧な2ランを放ちました。
3位決定戦 チェコvsドイツ(7/9 21:30)
🇩🇪 0 0 0 2 0 0 3 1 0|6
🇨🇿 5 0 2 0 0 0 0 0 ×|7
投手
🇩🇪グロス(1回 負)–コフ(1.2回)–セナンド・デ・レオン(1.1回)–フォン・カプフ(1.1回)–リント(0.2回)–フォン・シャーマン(1.1回)
🇨🇿フロウフ(5回 勝)–ヴァショウレク(1.1回)–パカル(1.2回)–ヴァンク(1回 S)
本塁打
🇩🇪
🇨🇿
試合はチェコ優位に進みました。
チェコは初回2死満塁でドゥボヴィー選手が押し出し四球を選びで先制すると、さらに打線がつながり一挙5点を先制しました。3回にはクレイチジーク選手のこの日2本目となる2点タイムリーで追加点をあげるなど、効果的に得点を重ねました。投手は先発のフロウフ投手が145km/h前後の直球を武器にテンポ良く5回2失点に抑えました。
ドイツは5回にラリー選手が2点タイムリーを打ち、7回にはワイルドピッチとブレンク選手がタイムリー、8回にはベルグマン選手がライトへ犠牲フライを打ち、1点差まで追い上げましたが、初回の5点が重くのしかかりました。
決勝 日本vs台湾
🇹🇼 2 0 0 0 1 0 0 0 0|3
🇯🇵 2 0 0 0 0 2 0 0 ×|4
投手
🇹🇼黃子豪(4.0回)–黃仲翔(3回 負)–陳品宏(1回)
🇯🇵寺西(5回)–野口(1回勝)–市川(1回)–中村(1回 S)
本塁打
🇹🇼范育銓(寺西 1回2ラン) 朱瑋淇(寺西 5回ソロ)
🇯🇵
決勝戦はシーソーゲームとなりました。
日本はいきなり2点を追う展開となりましたが、すぐさま国学院大柳舘憲吾選手のタイムリーなどで追いつきました。5回に1点を勝ち越されましたが、6回裏に青学大西川史礁選手のタイムリー内野安打などで逆転しました。逆転した後は近大野口練投手、日大市川祐投手、愛工大中村優斗投手とリレーして守り切りました。
台湾は初回に范育銓選手、5回には朱瑋淇選手に本塁打が飛び出してリードを奪う展開となりましたが逆転を許してしまいました。
3.Bグループ
Bグループは試合映像の配信がないため、結果のみを記します。7回制で行われました。
スロヴァキアvsギリシャ(7/6 17:30)
🇬🇷 1 0 2 0 0 0 2|5
🇸🇰 0 0 3 0 0 0 0|3
ハンガリーvsオーストリア(7/6 23:00)
🇦🇹 1 0 4 0 2 4 0|11
🇭🇺 3 1 3 0 2 0 0|9
ギリシャvsハンガリー(7/7 16:30)
🇭🇺 0 0 2 0 0 0|2
🇬🇷 0 4 0 0 6 3|13 (6回コールド)
リトアニアvsスロヴァキア(7/7 20:00)
🇸🇰 1 0 1 0 0 2 0|4
🇱🇹 4 0 0 0 1 0 ×|5
オーストリアvsリトアニア(7/8 1:00)
🇱🇹 1 0 0 0 0 0 4|5
🇦🇹 0 0 0 1 0 0 0|1
ハンガリーvsスロヴァキア(7/8 16:30)
🇸🇰 2 0 0 1 0 0 0 |3
🇭🇺 0 0 1 2 0 0 1×|4×
スロヴァキアvsオーストリア(7/8 20:30)
🇦🇹 3 1 0 0 1 1 2|8
🇸🇰 0 0 0 0 0 0 0|0
ギリシャvsリトアニア(7/9 1:00)
🇱🇹 0 0 0 0 0 1 1|2
🇬🇷 1 3 2 0 0 3 ×|9
リトアニアvsハンガリー(7/9 17:30)
🇭🇺 1 1 1 1 2 0 0|6
🇱🇹 2 1 0 0 0 0 0|3
オーストリアvsギリシャ(7/9 23:00)
🇬🇷 4 0 0 1 0 0 0|5
🇦🇹 0 0 2 0 0 0 0|2
4.最終結果
Aグループ
1位:🇯🇵日本
2位:🇹🇼台湾
3位:🇨🇿チェコ
4位:🇩🇪ドイツ
Bグループ
1位(全体5位):🇬🇷ギリシャ
2位(全体6位):🇭🇺ハンガリー
3位(全体7位):🇱🇹リトアニア
4位(全体8位):🇦🇹オーストリア
5位(全体9位):🇸🇰スロヴァキア
ホームランダービー勝者:曾昱磬(台湾🇹🇼)
MVP:西川史礁(日本🇯🇵)
5.チェコ代表の戦いを振り返って
今回の大会では3位という成績を残したチェコ代表でしたが、収穫と課題が共に見つかったと個人的には考えています。
課題:速球対応
チェコ代表はドイツ戦、台湾戦ではある程度打てていましたが、日本戦では渡邉一生投手などの速球にしっかり対応できていたのは3A経験のあるチェルベンカ選手と米大学に留学経験のあるゼレンカ選手くらいでした。エクストラリーガに150km/hを投げる左腕はいません。国際大会では上位に行くにつれて速球を投げる投手が増えてくるということを考えると、速球への対応が今後の課題となるでしょう。有望株の海外留学には非常に積極的なので、これを続けていけば自ずとレベルも上がってくると思います。勿論、11月の日本戦ではフルプ選手に期待です。
収穫①若い選手の躍動
今回の大会では若い選手が躍動しました。代表初選出となった2000年生のゼレンカ捕手は1次ラウンドのドイツ戦で本塁打を放ち、2005年生ヴァンク投手は台湾戦と日本戦でパーフェクトリリーフを見せました。2005年生モルガン内野手、2003年生プロコップ内野手はドイツ戦で好プレーを見せました。
収穫②ジュニア世代への野球普及
昨年3月WBCでチェコにおける野球への注目度が高まりました。さらに、昨年9月に主催した欧州選手権はブルノ市スポーツ大賞を受賞するなど大成功しました。このような取り組みが功を奏し、今回のPBWには多くの子供達が詰めかけていました。チェコの選手たちに声援を送る姿も見受けられ、ドイツ戦では最終回2アウトであと一球コールも巻き起こっていました(誰が教えたんだ)。イニング間にスピードガンコンテストが行われるなどして野球の楽しさが伝わっているように感じました。
チェコ代表の方針として、国内で人気を獲得するために海外のチェコ系外国人ばかりのチームではなく、チェコ生まれの選手を中心に編成するというものがあります。今回のPBWは未来のチェコ代表となる子供たちも来場していたと思います。