可愛さと表現としてのボカロワルツ
0.はじめに
こんばんは!うりと申します!
この記事はボカロリスナーアドベントカレンダー4日目のものになります。
前日のめるさんの記事はこちらから→https://note.com/mel1/n/n95a7cb531a68
以下常体。
1.序論
ワルツ。日常生活、あるいはボカロシーンにおいて数は多くないながら皆耳にする機会のある曲調であろう。しかし、現代において音楽のメジャーシーンでないこともあり、あまり語られる機会は多くないように感じる。
そこで本論では、ワルツおよびボカロワルツがどのような曲の集まりであるのかを確認する。そして合成音声とワルツが交わることによって生まれる魅力に焦点を当て考察し、そのような魅力を引き出していると個人的に感じる曲を紹介する。
ワルツの面白さを知っていただけたら幸いである。
2.ボカロワルツについて
2-1 ワルツについて
まず、ワルツとは何か。端的に述べると3拍子のクラシック曲である。
ワルツは18世紀ごろから社交ダンスの曲としてドイツやオーストリアを中心に発展した舞曲である。同様に3拍子の曲調であるメヌエットと比較すると、メヌエットは静的で上品であるのに対して、ワルツはより感情豊かで官能的であるのが特徴である¹⁾。また、3拍子の持つ魅力というのも当然ある。3拍子は安定した拍であるものの、構成要素が最小限であるからこその不安定度を持っておりそれゆえ柔らかさを感じさせるという指摘もある²⁾。
代表的な曲としてはヨハン・シュトラウスの『美しく青きドナウ』やショパンの『子犬のワルツ』などが挙げられる。(演奏動画のリンクを埋め込んだのでお暇な方は開いていただきたい。柔らかく豊かな曲調であることが確認できるはずだ)
一方で短調になると一気に哀愁の増す曲調へと変貌する。(ex. ショパン『Op 34-2』)
2-2 ボカロジャンルにおけるワルツ
ボカロ曲は基本歌ものであるという点や、クラシックと現代の大衆音楽ではメインとなる楽器編成が異なることから違いは多い。このことを認識した上でボカロワルツタグの付いている動画を見てみる。多種多様な形の曲があるが、曲調によって大きく二つに分類すると以下のようになる。
一つ目は、レトロな曲調のものである。楽器編成などは異なれど、曲の雰囲気で言えばかなりクラシックのそれに近いものをここではこれとする。このような曲は、近世的な世界観や踊りと結びつけた曲が多い。例えばマチゲリータPの『ストレンジマスカレエドハロウィン』は踊りと、香椎モイミの『エリカの憂い』は近世的な世界観とそれぞれ結びついている。
二つ目は、他ジャンルの中で機能しているワルツである。ボカロワルツの代表的な曲であるdatekenの『蜜月アン・ドゥ・トロワ』はジャズとの融合である。ロックとの融合であればOmoiの『ラストナイトワルツ』が挙げられる。全体としてはジャズや民族調的な要素を持つワルツが多いように感じる。これらはワルツの持つ柔らかさと相性が良いからだと考えられる。
3.交差点としてのボカロワルツ
3-1 ボカロワルツの再考
2章では、ワルツおよびボカロワルツの全体像をごくごく簡単に述べた。先に挙げたような曲調の大別に従って分析を進めるのも興味深いが、本論ではこの観点においては深追いせず別の観点からボカロワルツを考えたい。そこでボカロ曲であるということと、ワルツであるということの両方の観点を満たすものとしてのボカロワルツに焦点を当てる。
まず、ワルツについてであるが、2-1で述べたように感情豊かな曲調というのが特徴として挙げられた。現代からワルツを見たときに抱くレトロさや舞踊曲というテーマ性も捨てがたいが、本論ではそこには触れず、ワルツの表現としての豊かさにスポットを当てる。
次に、ボカロ曲であるということについて考える。非常に大きく雑なテーマであり、複雑な要因が絡むものでもあるが、ここではその中から幼さ・少女というものを取り出し、中心に据える。ご存じの通り合成音声キャラクターは10代の少女が多く、また調声によってさらに幼く(もちろん大人にすることも)できる。そして、ワルツの踊られた社交場からは縁遠い存在でもある。ここにボカロワルツならではの良さが眠っていると考え、それを掘り起こしたい。
これらより、本章では幼さ・少女という要素を持ち、感情豊かな表現がなされているボカロワルツについて、具体的な曲の紹介をしながらさらに知見を深めたい。
3-2 "ボカロワルツ"の探究
この項では曲を紹介するとともに、先に挙げたテーマをもたらす表現にどのようなものがあるかを考える。
いえろーぱれーど/ぎすたか
https://www.nicovideo.jp/watch/sm33845881
"ぱれーど"とタイトルにあるように躍動感のあるアコーディオンが引っ張るサウンド、一方でどこか哀愁漂うメロディライン。アコーディオンの温かみのある音色とキラキラとした装飾音が夢のような世界を作り出すが、それはいつか終わる子供の世界。
少女性とその終焉を描き、途中で入るぞっとする展開も含めて曲内での感情の揺れ動きが激しくうかがえるワルツ。
リベリ/かいね
タイトルのliberiはラテン語で子供という意味である。この曲はまさに二人の少女の死と愛をテーマにした曲である。歌詞に着目すると、「静脈から滴る 君の形」「白いキス」といった死を連想させる詞が目を惹く。一方で「今がいちばんに悍ましいほどに幸せ」と喜びを感じさせるような相反する詞が並ぶ。サウンドはそれに呼応するように寂しげな入りでありながら、サビではほんのりと明るくなる。また心地良くも気味悪ささえ感じさせるようなピアノのフレーズはこの歪な感情の表現ともとれる。サビに向かって段々とピアノの高音域が増えるさまや昇っていく映像は天に上っていく表現と考えられる。
cradle/cielastopia
申し訳程度の2024年要素。白を基調とした世界観と可愛らしいミクの声が印象的なワルツ。一方で、メロディの入りが寂しげであったり全体的に不安定な調子であったりする。これは少女の死とそれに向き合う不安定な心持ちを表してものであろう。魂の行き場としての天国を意識したサウンドは幻想的で美しい。
死に直面した不安定さとずっと一緒にいたいという優しさ溢れる心模様を3拍子の柔らかいリズム感が繋げてくれているように感じる。
さて、探究と称して3曲を紹介した。それぞれ楽器構成もテーマも異なるため、何か一貫するものがあるかと問われると難しいが、どの曲も明暗交じる複雑な感情が描かれていてる。ワルツはその複雑な感情を描く手助けになっているのかもしれない。
4.結論
ボカロワルツならではの要素になり得るとして、少女と感情表現の豊かさという点にスポットを当てて曲を紹介した。ワルツの持つ柔らかさが複雑な感情や少女の持つ可愛らしさを支える、そんな曲の描像を実感していただけたら幸いである。
5.参考文献
1) 門馬直美『西洋音楽史概説』春秋社、1976年、p242。
2) 藤原義章『リズムはゆらぐ」白水社、1990年、p119-123。
以下敬体。
#.おわりに
うお〜〜〜〜〜〜楽しんでいただけましたか!何を伝えたいのか分かりにくい感じになってしまって申し訳ないです…。風呂敷を広げまくったのに簡潔にしようとしすぎたうちが悪いです…。
2枠目の方はChia*さんが担当されています!ぜひそちらも!そして明日はlefthorseさん!楽しみですね〜〜。
このnote読んでなんか書きたいな〜〜って思ったそこのあなた!アドカレ2枠目まだ空きあります!!この機会にぜひ!!!
そして今日はAHS初期組15周年!!!!!めでたい!!!!!!!!!!!!月読アイ・ショウタ新ソフトなれ!!!!!!!!!!!!
そんなところでこのnoteはお開きにします。意見等はTwitter(@uri_tukemono96)まで。
サムネはかいねさんのリベリより勝手に拝借しました。問題がございましたら削除いたします。