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2025/1/30 牛タンがあったら、そこは仙台や
3歳から18歳まで仙台に住んでいたけど、牛タンを食べたことが一度もなかった。
牛タンの存在はもちろん知っているし、利久などの牛タンで有名なお店は徒歩圏内にあった。
でも、私の学生ライフといえば、夜まで部活をして幸楽苑かサイゼリヤに行く。部活がない日はイトーヨーカドーでプリクラ撮ってフードコートの2パターン。
私たちの放課後に牛タンの選択肢が入り込んできたことがない。高校生までの私にとって牛タンはとても高級な食べ物だった。
家族の外食でも行ったことがない。それかこの味を知られては困ると隠されていたのかもしれない。
地元の名産と言われるものを本当に地元の人はどのくらい積極的に食べているのだろうか。
仙台の名産は牛タンの他にずんだもあるけど、私はこちらもそんなに好んで食べない。あとは宇都宮にも住んでいたけど、名物だった餃子は宇都宮を離れてからの方が食べる回数が多かった気もする。たぶん、いつでも行けると思っているうちに結局一度も行かなかったやつだろうか。
そんなこんなで、私は牛タンの味を知らずに大学生になった。
大学で一人暮らしを始めてから半年ぶりに地元の仙台に帰った時に、母と一緒に初めて利久に行ったのを今でも覚えている。
分厚い。でもかみ切れる。弾力。味。すべてが好みなんですけど!
脇役だと思っていたとろろも麦飯もテールスープもおいしい。
好き好き好き!となり、そこから帰省のたびに牛タンを食べている。
そして、いっちょ前に「薄い牛タンなんて牛タンじゃない」と調子に乗りはじめる。牛タンを知った人はここまでがセットのムーブ。
大学生になり、社会人になり、帰省する度、誰かが仙台に来てくれる度に牛タンを食べにいく。
もう牛タンの味なんて知っている、そう調子に乗る私を謙虚な人間に戻してくれたのが電力ビルにある閣の「たんタタキ」。
食べ慣れたと思ったものでも、まだ新鮮な衝撃を受けられるなんて。
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3年前に実家が仙台から北海道に引っ越した。転勤族でもともと北海道にいたので、戻ったという方が正しい。
なので、友達に会いにいくことはあるけど、もう仙台に帰るということはなくなってしまった。さみしい。
現在関東に住んでいる私は、牛タンを食べたくなったときは有楽町の東京交通会館にある太助に行く。
永野が「クワバタオハラがおったら、そこは大阪や」と言うように、どこにいても「牛タンがあればそこは仙台」だ。
太助に行くとき、もはや私は、牛タンを食べたいのか、仙台を感じたいのか自分でもわからない。
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