映画「夜きみ」感想
JO1の白岩瑠姫くんと久間田琳加さんがW主演を務めた映画「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」初日に見てきました。あまりまとまっていませんが、忘れないうちに印象的なシーンをメインに感想を書いておきたいと思います。
ネタバレをかなり含みますので、まだの方はぜひ映画館で見てから読んでください。
ちなみに、私はJO1のファンです。
超簡単なあらすじ
マスクが手放せない優等生の茜。母親の再婚による新しい家族にうまく馴染めず、クラスの輪にもいまいち入れていません。幼い妹の世話や勉強を頑張っていますが、実は登校時にマスクを忘れると吐き気を催したり自傷行為(痛そうすぎてちょっと驚きました、痛そうなシーン苦手な人はやや注意してください)をしたりと人知れず苦しんでいます。そんな茜にやたら当たりの強い青磁。初めて同じクラスになった茜に「お前のこと大っ嫌い」と言うなど、かなり茜のことを嫌っている様子ですが、道端で具合が悪くなっていると助けてくれたり、文化祭の準備を手伝ってくれたりして、少しずつ茜と青磁は交流を深めていきます。茜がマスクを手放せなくなった理由、青磁が茜を最初から嫌っていた理由とは?
茜の孤独
茜が朝起きてから登校するシーンが最初に出てくるのですが、まずここがすごく印象的でした。茜の部屋は屋根裏部屋のようなところにあって、出入り口は本棚になっていて隠し扉みたいだし、ここだけが自分の城という印象を受けました。茜の家は一軒家でカフェを営んでいて茜の部屋もすごくおしゃれなんですが、なんとなく日当たりがよくなくて閉じた感じ。
そこから出て家族で朝ごはんを食べるシーンになるんですが、このときも父・母・妹(父の連れ子か再婚後にできた子かな)は同じテーブルで一緒に食事をしていますが、茜はコーヒーだけもらって父の作ったトーストには手をつけず、一人で隣のテーブルに座ります。このあたり映像がかなり揺れていてびっくりした記憶があるのですが、これは多分茜の視界を表しているのかな。
お父さんは茜のことを「茜ちゃん」と呼び、茜も「お父さん」とは呼ばず敬語で会話するので、セリフで説明されなくても「このお父さんは再婚相手で、心理的に距離があるんだな」ということが伝わります。お父さんはニコニコしてて悪い人ではなさそうなぶん、余計に気まずい。妹がまだ幼くて手がかかるのでお母さんがそちらにかなり気を取られていそうなのもしんどい。お父さんの誕生日ケーキを茜がラップに包むところとか、ケーキが緑色で美味しそうなのかどうなのかなんとも言えない色をしているところからも、茜が感じている「居場所のなさ」みたいなものが読み取れます。
茜が家族と別れて通学路を走り、劇中で初めてマスクをつけたあと、大きく深呼吸するのですが、ここで私も初めて息ができたような感覚になりました。茜がマスクをつけたり外したりするとき、いつも片耳ずつかけたり外したりするのが好きです。耳にかけたままずらして顎マスクにするよりも顔が少しずつ隠れたり現れたりするので、きっとここは拘られたのではないかと思います。本音を隠すときに手でマスクを触って位置を直すのもよかったです。
そのほかにもぐさっとくるシーンはたくさんありましたが、一番心に来たのは文化祭のリハーサルのシーン。茜のクラスはラインダンスをすることになり、茜以外のクラスメイトは演者としてダンスを披露します。リハーサルが上手くいき、みんなで集合写真を撮ろう!となったとき、クラスメイトの女子が茜に「写真撮って!」とスマホを手渡してきます。
茜は振付やら音源の準備やらいろいろ苦労したはずなのに、クラスメイトたちは茜そっちのけで盛り上がっていて、集合写真から自然と茜を省いてしまうんです。ここめちゃくちゃしんどい。このクラスメイトたち、別に茜をいじめているわけではないんですよ。ただ茜の優しさや真面目さに甘えすぎなだけで。というかその場に担任がいたのに、担任が「俺も写真入ろうかな〜」とか言って茜の代わりに写真を撮らなかったことが結構むかつきましたね。お前〜!!
青磁の強さと優しさ
文化祭準備でクラスメイトがわちゃわちゃ言い合っているところに窓から青磁が登場するシーンがあります。青磁くんはあんまり学校来ないキャラみたいですが、普通にドアから入ってきたりしないんですよ。窓から顔出して、そのまま窓から入ってきて、クラスメイトは男女問わず青磁ー!ってテンションが上がるわけです。ここでもう青磁のカリスマ性というか人気っぷりが伺えるわけですが、恋愛小説の実写映画のヒーローでありつつ、もちろんアイドルではないという絶妙なラインのキラキラオーラがとても良かったです。ビジュアルだけではなく動作で青磁という人間のかっこよさにめちゃくちゃ説得力が出ています。
瑠姫がインタビューで言っていた通り、青磁はかっこよくないと話が全く成立しないんですが、かといってアイドルとしての輝きが出すぎるとそれはちょっと青磁ではないと思うんです。青磁はかっこよくてまっすぐで強いんですけど、とはいえやっぱり高校生で悩みも抱えているので、普段の白岩瑠姫っぽいところとそうでないところが必要で、それがすごくよかったです。ヒロインに当たりが強くて口が悪いというか言葉がキツいので、うっかりすると嫌な感じに見えてしまいがちですが、素の瑠姫のチャーミングなところが出てるようなシーンもあって、ちゃんと魅力的なキャラになってたと思います。
あと、豆がANNX夜きみスペシャルで「予告を見る限り意外と青磁は紳士なところがある」と言ってましたが、これは本当にそうでした。もっとオラオラしてて冷たくてツンツンしてるシーンが目立つのかと思ってたんですが、茜が具合が悪いことに気づいて吐かせるシーンとか、目線や口調から優しさも垣間見えます。かといって、茜のことを好きになって急にデロデロに甘くなるなんてことはないんですよ。これがすごくよかったです。これはこの後でまた同じようなこと言いますが、アイドルを主演に据えて恋愛映画をやってるのに、アイドルの力で観客をキュンキュンさせて話題にしようみたいな欲があんまり出てない気がして、それが私みたいなあんまり恋愛もの得意でないオタクには大変ありがたかったです。
青磁の絵
落ち込んでいた茜がたまたま青磁が描いた絵を目にして、感動して泣くシーン。茜が感動していた絵は、壊れたフェンスの向こうに空が見えるという絵でした。多分茜にとってはこの「壊れたフェンスの向こう」というのが刺さったんじゃないかなと思います。というのも茜はクラスでは優等生・学級委員という役割を背負っていて、お母さんには妹の世話など家事を手伝うことを求められていて、なかなか自由がなさそうに見えます。いろんなものに縛られすぎて息苦しくなっている茜にとって沁みる絵だったんでしょうね。ちなみに感動している茜を見て青磁がちょっと嬉しそうに「俺の絵見て感動したのか」って言うところ、結構可愛いです。
自由で、特に空を描くことが多い青磁は屋上にアトリエを構えていて、いつも一人でそこで絵を描いているのですが、このアトリエに行くシーンも秘密基地みたいでワクワクします。だいたいの学校の屋上って登れないじゃないですか。結構長いこと登って屋上にたどり着くので、青空の下に出たという爽快感もひとしおです。
屋上に出た2人が伸びとかしながら会話するシーンがあるんですが、ここは多分ドローンでクルクルしながら取ってて、「この2人が今この世界の真ん中にいる」感がすごく出てます。
恋
茜が青磁に惹かれていくところ、すごく可愛いシーンがたくさんありました。
青磁がマスクに絵を描くシーンはマスクをしてるのにドキドキしてるのが目線でちゃんと伝わります。ここ、青磁がマスクに描いたのが笑ってる太陽なの、青磁の過去から考えるとかなり意味が込められてます。青磁にとってはそこに太陽があったんでしょうね。
何よりよかったのは茜がメイクするシーン。青磁の前ではマスクを外せるようになった茜が、引き出しから色付きのリップをとりだして唇に載せるシーンがあるんです。それまでにもメイクしてるシーンは出てくるんですけど、いつもはクリアマスカラを塗って終わりなんですよ。リップ!塗っとるやん!!青磁のこと好きやん!!!って心の中で叫びました。めちゃくちゃ可愛い。そのあとバスに乗ってて、ふと気づいたら結露した窓にハートが書いてあってびっくりするシーンも込みで大変よかったです。
もう一つよかったのは、2人で夕焼けを見たあと家に帰ってきて、茜がスマホで夕焼けの写真を見てるところ。青磁に教えてもらった「青磁色」のところを拡大して見つめてるんです。いやめちゃくちゃ青磁好きやん!!!
あとは予告の時点でかなり話題になったエアドロのシーン。茜にエアドロを送って曲を共有するわけですが、ここまでの時点でこの2人はかなり視覚を共有してると思うんです。茜はしょっちゅう青磁のアトリエに行ってて、青磁が描いてる空も青磁が描いてる絵も見てるわけです。ここで聴覚も共有するのね!!と思うとテンションあがりました。青磁がわりと素直な感じで笑ってるのもいい。
親友
茜の友達である沙耶香ちゃん、すごくよかったです。茜が学校で友達として仲良くしてるのは沙耶香だけっぽいのですが、沙耶香は部活に入ってるので他にも仲間がいるし居場所があるというのが学生時代の切ない経験あるあるな気がします。
青磁は茜に「言いたいことは言え」って言いますが、沙耶香は「言いたくないことは言わなくていい」って言ってくれるんですね。こういう友達すごく貴重だと思います。友達ならなんでも話せるよね!隠し事なしね!みたいな感じで来る人っていると思うんですが、同性の友達でこんなふうに言ってくれる子がいるというのは貴重だなと思いました。茜にとって青磁が大切な人なのは間違いないですが、沙耶香もまたすごく大切な人だと思います。
青と混ざる茜色
主題歌「Gradation 」のすごく印象的なフレーズですが、この2人ってお互いにすごく影響を与えあってるんだということが終盤で明らかになります。最初は青磁が茜をぐいぐい引っ張っていくようなシーンが多いんですが、実は青磁は過去に茜に助けられていたことがわかります。私は先にGradationをフルで聞いていたので、歌詞にある「ひとりじゃ描けなかった彩りの向こう」とか、キャッチコピーの「無彩色で息苦しいこの世界。救い出してくれたのは君でした」とか、そういうことかー!と思いました。個人的に青磁が茜のことを「ヒーローだった」と言ったのがすごく嬉しかったです。一方的に助ける-助けられるの関係性ができているわけじゃなくて、実は茜が先に青磁を救っていたから、青磁が茜を救ってくれたんですよね。そしてクライマックスのシーンに繋がっていくわけです。
恋愛ものって、かっこいい王子様が颯爽と現れてヒロインを助け、助けるシーンでキュンとさせるみたいな展開になりがちだと思うんですが、夜きみは王子様のかっこよさに頼りすぎてないんです。恋愛っていう要素は吸引力がすごく強い(「獣の奏者」の外伝で作者の上橋菜穂子先生がそのようなこと仰ってた覚えがあります)ので、ストーリーのなかで恋愛や胸キュンシーンばかりが観客を惹きつけてしまって、ストーリーとしての合理性が破綻しそうになっているように見えたり、そんな都合のいいことあるか?と思ってしまうようなことが起きたりする印象があり、私はそういう理由で恋愛映画がそんなに得意ではないのですが、そのあたりのバランスがとてもいい作品でした。もちろんイヤホントントンとか2人乗りとかマスクに絵を描くとかキュンポイントはたくさんありますが、ちゃんと意味があってやってるので、そこだけ異様に盛り上がってあとの話が入ってこないみたいなことはなかったです。
みなさんご存知の通り白岩瑠姫ってめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。すごいかっこよくて、アイドルを全うしようという意識の高い人だなと思うんですけど、その瑠姫を主演に据えてこの映画が製作されたことが素晴らしいと思います。偉そうですみません。
この2人が付き合うのかどうなのかみたいなことよりも、お互いの存在がお互いの人生をどう変えるのかというところが一番見どころなので、私みたいな人にもあまり構えすぎずに見てほしいところです。
闇を塗る
クライマックスの屋上のシーン、真っ暗な中2人でペンキを塗りたくるところ、ただ屋上を塗るだけじゃなくてお互いの顔とか制服にも色をつけていくんですが、瑠姫がインタビューで「制服がグレーなんです」と言っていたのはそういうことか!と思いました。きっとここで色鮮やかに塗られるためのグレーの制服だったんですね。
塗りあってるときはずっと暗いんですが、夜が明けたときの映像が本当に圧巻です。これ撮影めちゃくちゃ大変だったと思いますが、本当に綺麗でした。こういうの映画化の醍醐味だと思います。ここで青磁は夢を追うことにするので、お別れすることが決まるわけですが、湿っぽさは全然なく清々しくて眩しかったです。茜は青磁のことが好きだと自覚してるので、「海外に行かないでずっと一緒にいてほしい」と思っちゃっても仕方ないのかなと思うんですけど、青磁の進路について先生から聞いた時点ですぐ青磁の背中を押そうとしてたのがよかった。これは茜が青磁に救ってもらったからというのもあると思いますが、小学生の頃「言いたいことは言え」と青磁に言ったあのときの茜をかなり取り戻したからこそ背中を押せたのかなと思います。まだ青磁の前でしかマスクが取れないのに、「青磁がいないと無理!」とはならない茜、強くて好きです。やっぱりただの恋愛映画だと思わないほうがいいです。
お父さん
パパ!!!!!!!!!!!
最後まで見た方、パパ!!!!!!!!!!ってなりませんでしたか?私はなりました。
お父さん、すごくいいお父さんでした。序盤から悪い人ではないんだろうと思ってたんですよ。無理やり茜に距離を詰めていかないところとか。茜が遅く帰ってきて、外ではいつもマスクを着けてるらしいという話をお母さんから聞いたときも、「信じて見守ったほうがいい」と言ってくれて、いい親だなと思ってたので、朝帰りした娘を父親として叱ったあと茜に「お父さん」と呼ばれて感極まったところで泣きました。よかったね泣 しかも最後はみんなでひとつのテーブルを囲んでお父さんの作った朝ごはんを食べるんです。冒頭との対比で泣けます。よかったね泣
タイトル
私は原作未読なのですが、原作を読んだ方のレビューを見ていると印象的なシーンがたくさん省かれているみたいですね。これだと「タイトルの意味がわからないんじゃないか」というような意見もあったんですが、個人的にはなんでこのタイトル?みたいな感じはしませんでした。
定期健診を受けた後学校に来た青磁が暗い廊下をじっと見つめるシーン、急にホラーっぽいと話題ですが、先が見えない暗闇にいる恐怖がすごく伝わりました。茜がライトを持って向こうから走ってくるところは、暗い廊下で恐怖をかなり煽ったあとだったのでこちらもホッとしました。このあと教室でなんだかんだあって夜の屋上にたどり着き、青磁が「明けない夜はないなんて言うけど、本当に夜が明けるのか不安になる」というようなことを言うんですよね。実は青磁も未来にかなりの不安や恐怖を抱えていることがわかったのですが、この台詞があってからのペンキを塗るクライマックス、そしてラストの再会という流れだったので、屋上のあのシーンとその後の数年間を経て青磁と茜にとっての「夜」が明けたんだなというふうに解釈しました。2人でずっと寄り添ってただ夜明けを待っていたわけじゃなくて、歩み出すきっかけは相手がくれたものだけど、別々の道で頑張っていたら夜が明けてまた会えたというのがすごく好きです。「一人でも生きていけるけど、二人でいたらもっと幸せ」という関係性が一番いいと思っているので。再会するときの茜の真っ赤なスカートがすごく印象的だったのと、高校生のときより華やかなメイクになっていたのが相まって、ラストシーンの茜にはドキドキしました。
以上、映画初見での感想でした。また言いたいことが出てきたら追記します。