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【SNK】ごわん!【侍魂】

 5月5日は大門五郎の誕生日である。
 というわけで、呉瑞香ウー・レイシャン、通称うれうれについてのあれこれ。あ、レイシャンも5月5日生まれな。ならその日に出せよと思わなくもないが、その頃ぼくの心はマルコに奪われていたから仕方ない。

 瑞香というのが日本でいうところの沈丁花じんちょうげだというのは別の記事でも書いたが、このむちむちなおねえさんを構成する要素で大きな割合を占めているのは、むちむちボディ羅盤らばん、そして眼鏡であろう。
 眼鏡は13世紀末頃にイタリアあたりで発明されたとかいう話で、16世紀には日本にも伝来している。イエズス会のフランシスコ・ザビエルが持ち込んだという説があるようだが、いずれにしろ、

「『サムスピ』の眼鏡キャラといえば?」

 という問いで真っ先に名前が挙がる八角もろすみ泰山たいざん先生が、『江戸を斬る』の松山英太郎みたいな眼鏡をかけていたのは不自然でも何でもない。すでにその頃、日本にはちゃんと眼鏡が存在していたのである。

みんな知ってる八角先生。江戸の闇が生んだ復讐の眼鏡っ子。

 それでは中国――というか、当時の清帝国ではどうだったのか? 眼鏡はあったのか? というと、もちろんある。清のひとつ前、15世紀の明の時代にはすでに眼鏡が知られていて、当時の書物に記録されている。ただ、日本のようにイタリアから伝わったのではなく、伝統的な朝貢外交によってサマルカンドあたりからもたらされていたらしい。
 ただ、実際に中国で眼鏡が広く使われるようになったのは清の時代に入ってからのことで、特に広州では、水晶製のレンズをもちいた眼鏡が生産されていたという。
 そういうわけなので、レイシャンもまた眼鏡をかけていてもおかしくはないし、ひょっとしたらガラス製ではなく水晶製の眼鏡だったという可能性もある。

 一方、羅盤については、ふつうに生活している日本人には馴染みがないブツといえよう。
 レイシャンは自身の流派を「呉派招龍風水術」と称しているが、要するに彼女は道教の女性の僧侶、坤道こんとうというやつである。厳密にいえば、風水というのは道教の一部、「いい場所を選ぶ技術」であり、神獣を召喚する技術ではないのだが(超自然的存在とコンタクトするのは巫術ふじゅつ)、まあ、「風水術」と銘打ったほうが何となく判りやすくはある。
 で、羅盤というのは地相ちそうを観るために使用される道具である(手相だの顔相だのの土地版が地相)。円盤の中心に方位磁針(いわゆるコンパス)が埋め込まれており、それを取り巻くように八卦、五行、十干十二支じっかんじゅうにし二十四節気にじゅうしせっき二十八宿にじゅうはっしゅくなどが配置されている。
 風水師はこれを使って、家を建てる場所とか、いつどこに死者を埋葬すればいいかとか、そういうことを占うのである。決して「ごわん!」と誰かをブン殴るための道具ではないのだが……。

伏羲先天八卦に似ているが、なぜか坎と離の位置が入れ替わっている(アカデミック〜!)。

 レイシャンの羅盤の場合、中央にはコンパスの代わりに太極図があり、その外側に八卦、その外側は24分割されているので二十四節気か。その外側にあるのはおそらく十二支、最外周には九曜が配されている。二十八宿や十干がなく、羅盤としてはかなりシンプルな構造といえるが、やはり彼女の羅盤は何ちゃって羅盤であり、実際にはこのブツが鈍器兼盾であることをしめしているのかもしれない(暴論)。

 それと最後にもうひとつ、

三寸金蓮にはほど遠い……現代人の価値観ならこっちのほうがいいんだけど。

「こんなデカい足をしているのは力仕事をする女だけだ!」という理由で、たぶんレイシャンは嫁入りは難しい。せめてこの半分、可能なら1/3くらいのサイズでないと、良家の娘としては結婚できない。グロテスクだけど、当時はそういう風習があったのです。
 まあ、辮髪べんぱつはともかく、纏足てんそくは再現しないほうがベターだよね。

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