【SNK】単品【KOF】
ちょっと間が空いたが、今回はこの記事に続いて、キャラクター単品でのストーリーのお仕事をした時の話。
『サムスピ』、『餓狼』などは当然、キャラ単位でのストーリーになるわけだが、ぼくが実際に手掛けた仕事の話でいうなら、『MI』シリーズと『XII』になる。残念ながら、『サムスピ』や『餓狼』はパチスロやソシャゲでしか仕事をしたことがなく、たびたびいっているように、『龍虎』はカケラすらやったことがない。……あ、『風雲』もな。
さて、無印『MI』がストーリー面であまりに薄味すぎた反動か、『MI2』では、いつもなら雑誌や公式サイトなどに掲載するだけの各キャラのストーリーを、ゲーム中のストーリーモード開始時に、イントロ的に流すという演出がほどこされていた。その仕様を知ったのが、もう完全に原稿を納入してかなりたってからのことだったので、
「……もしかして、もっと短めのほうがよかったのでは……?」
と思わなくもなかったくらい、『MI2』のストーリーは、それまでの作品よりも長めのテキストになった。
そもそも『MI』オリジナルキャラの大半は、無印の段階では、ほとんどその性格や背景が語られることがなかった。それを思うと、『MI2』であのくらいの長いテキストを用意できたのは、補完という意味ではよかったのかもしれない。
もちろん、見方を変えれば、『MI』のオリジナルキャラたちは、無印の段階で語っておくべきさまざまなことを、『MI2』で語らなければならなかったともいえる。個人的には、アルバたちの話を書けて楽しかったというのは事実だが、彼らの基本的な情報プラス『MI2』での参戦動機などの説明を最優先しなければならず、本来ならもっと盛り込みたい情報を割愛せざるをえないところもあった。
それはぼく個人だけが思っていたことではなく、会社の偉い人たちとしても、
「ソワレ兄弟を始めとした『MI』オリジナルのキャラたちを、もう少し立てるというか、アピールする必要があるんじゃない?」
との考えがあったので、ムックや公式サイトに数多くのサイドストーリーを掲載したり(残念ながら現在は公式サイトそのものが見られなくなっているが、一部はムックで読める)、『MIA』の展開を見越したアニメを作ったりと、とにかくいろいろなことをやった。あれがなかったら、『MI』キャラの認知度は今よりずっと低かったかもしれない。
その後『MIA』で追加された4キャラのストーリーが、『MI2』のそれよりさらに長くなったのも、『MIA』はアーケード用対戦特化でストーリーがないことに加え、既存キャラのストーリーも流用が決まっていたため、そのぶん新キャラについては、より手厚くアピールしていこうという方針でそうなった。ぼく自身も、溝口とシャオロンはファンに馴染みがないのでストーリーを濃いめにしたほうがいいと思っていたが、たぶんふたりだけ長いのはバランスが悪いからみんな揃って長くしたのだろう。たぶん……。
一方、既存のキャラについていえば、いつもなら100のテキスト量で3人(1チーム)ぶんの参戦動機+αを描くところを、今回は明らかに100以上のテキスト量でひとりぶんの参戦動機+αを描けばいい感じだったため、それだけ余裕と自由があった。テキスト量に制限があると、どうしても必要十分な情報の提示だけになりがちだが、『MI2』の時はあまりそこを考えなくてよく、参戦動機うんぬんよりも、それ以外の日常風景や心情などを描くことに紙幅を割くことができたのである。
たとえば――。
年齢的には高校生であるロックを自分の放浪生活に突き合わせていることを、テリーはどう考えているのか。
常人とはかけ離れたサイボーグとしてのマキシマの日常とはどんなものなのか。
『餓狼』で描かれなくなって久しいリチャードやボブたちは現在どうしているのか。
――そういったものを描くことで、キャラクターの解像度を上げることができたと思う。要するに、ぼくが読みたいものを公式で書くことができた。これぞThe 私物化。
中でもぼくが特に気に入っているのは、二代目Mr.KARATEがワイルドウルフと語らうストーリー。結局は間接的に、ギースTSUEEEE! といっているだけのものなのだが、まあ、特定の世代のSNKファンは、天獅子ギースの幻影から逃れがたいんだよね、という事実を再確認するぼくであった。