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【DDS】リリ氏【SMT】

 5周くらいはしたと思う。6周かな? もちろん『真・女神転生V Vengeance』、以下『VV』のことな。

 結局、無印と『VV』の「創世の女神篇」の相違点は、新システム、新悪魔、新サブクエストが追加されたことなどを除けば、夜魔リリスが削除されていることのみだと思われる。まあ、『VV』には重要なキーキャラクターとして女魔リリスが登場しているので、神話体系的に同一の存在である夜魔リリスをそのまま出すわけにはいかなかったのだろう。
 彼女を筆頭とするカディシュトゥの4人は、ティアマトが出現する中盤のクライマックスあたりまで物語を牽引していく重要な役どころなのだが、中でもリリスは、『真・女神転生』シリーズを昔からやっているファンにとってはお馴染みの悪魔といえる。
 ――という、リリスの話。

「身体にアナコンダを巻きつけた美女」というリリスの基本デザインそのものは、初登場となる『真Ⅰ』の時点ですでに完成されていた。
 SFCレベルのドット絵で表現されていた『Ⅰ』、『if』、さらにそれを美麗グラフィックで描き下ろした『ソウルハッカーズ』ではロングヘアだったが、『Ⅲ』で3D化された際に――おそらくだがポリゴン数とモーションデータの節約のためもあって――ばっさりと髪を切ってリーゼントになった。『Ⅲ』以降、『ライドウ』2作と無印『V』にもこの姿で登場している。出番が多いせいか、リリスというと真っ先にこれが思い浮かぶほどに馴染み深い。

『ソウルハッカーズ』版。この頃はファイナルヌード使ってた。今はクレオパトラ専用技なのに。
『Ⅲ』以降は『ライドウ』含めてだいたいこれ。最新のゆりこのイラストもこの髪型+スーツ姿。

 まあ、髪型だの蛇の有無だのというレベルを超えた、ブッ飛んだデザインの昆虫みたいなリリスも一瞬だけ存在はしていたが、あれは何というか――壮大な実験? だったんだろう、うん。そうに違いない。
 そして今回の『VV』では、ウェービーな赤いロングヘアにお決まりの蛇、さらに背中には黒い翼+百合の花+田中敦子という欲張りセットでリニューアル登場となった。

 そもそもリリスの誕生はキリスト教やユダヤ教よりもずっと古く、古代シュメール、もしくは古代バビロニアあたりを起源としているらしい。それがのちにユダヤ教、キリスト教、イスラム教に取り込まれたことで、現在の女悪魔リリスとなったのだろう。リリスがティアマトを復活させたことを見るに、この『VV』のリリスは、やはり古代バビロニアを起源としているのかもしれない。
 ユダヤ&キリスト教的には、リリスはイブが生まれる前のアダムの最初の妻だったが、アダムにしたがうことをよしとせず、同等であることを求めたため――要はどっちが上になるとかいうシモ関係の話で――アダムや神と衝突。リリスはブチ切れてエデンから出奔してしまった。
というか、まずエデンの園ってどこにあったの?」という基本的な疑問はさて置き、アダムに泣きつかれた神サマは、紅海まで逃げていったリリスを連れ戻すために、3人の天使――Snwy、Snsnwy、Smnglfを派遣する。もとが母音の足りない古代ヘブライ語なので、現代では何と発音するのかよく判らないのだが、サンヴィ、サンサンヴィ、セマンゲラフと読むという説や、スンウィ、スンスンウィ、スムングルフという説などさまざまある中、『VV』では、

この呼び方はウィキペディア準拠。ぼくのこの記事では『天使と精霊の事典』準拠。

 と、リリスさんご本人がおっしゃられている。正直、どれもおかしな響きだが。
 がしかし、ヘンな名前の天使トリオの説得にもリリスは応じない。業を煮やした3人は、おとなしくアダムのもとに戻らないならおまえが産む悪魔の子供たちを毎日100人ずつ殺すと脅した。
 まあ、本邦のイザナギとイザナミも、
てめえ、毎日1000人ブチ殺すぞ!
じゃあこっちは毎日1500人産んでやらあ!
 みたいなやり取りをしているので、こういう殺伐さは、古代には世界中どこにでもよくあったことなのだろう(本当か?)。てか、思えばこいつらも、子作りするのに男と女のどっちから声かけるべき? とかいうことで問題起こしてたよな。とりあえずヒルコにあやまっとけ、な?

 閑話休題。天使トリオに脅されてもリリスは戻ることを拒絶。そのため、宣言通りに彼女の子供たちは殺されることになった。でもって、この仕打ちに対する復讐として、リリスは産褥期の母親や赤ん坊、寝ている男たちを襲って害するようになったというのだが、最初に本でこのエピソードを読んだ時から、ぼくはいろいろと釈然しないものを感じていた。
 まず、このやり取りに際し、リリスと天使トリオの間には、
「3人の天使の名前が記されたお守りを持つ人間は襲わない」
 という約束が交わされ、リリスがそれを守っているという点である。
 ……え? リリスさん、子供を殺されようとも絶対に戻らん! とまでいってたのに、こんな約束は律儀に守るの? 天使さんも天使さんで、こんな一方的な約束を守らせることができるなら、ふつうにリリスさんを説得してアダムのもとに送還できたんじゃないの?
 古い神話や伝承とは、おおむねこうした不条理さ、トンチンカンな要素を内包しているものなのだとは思うのだが……この約束、リリスさんには何のメリットもなくない? ふつう、「約束を守る代わりに殺す子供の数を半分にする」みたいな取引があってしかるべきだと思うんだけど。

 つかさあ、ちょっと考えれば判るけど、これって天使サイドとリリスさん個人のいさかいであって、これをきっかけに人間が襲われるようになったのって、完全にとばっちりだよね? リリスが襲うべきは人間じゃなくて天使たちのはずだし、交渉がヘタな天使たちも、さらにいうなら天使を派遣してる唯一神も、何というか……やっぱアレだな、牛神の系譜に連なる連中は駄目ってことだな!

やはりヨーコルートこそが正義……。『Ⅱ』の頃から、どうもぼくはLAWが嫌いらしい。

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