一期一会
2023/11/19
カイセリ2日目。
私とサンは市内最安の個室を2人でシェアして宿泊している。
出会ってまだ数日にも関わらず、もう何年も前から知っている様な距離感と安心感。
落ち着いた彼の性格がそうさせるのか、特にはしゃぎ合うわけでもなく、かといって沈黙が苦になるわけでもない。
要するに、居心地が良いのだ。
不思議な程に…。
この日は昨日お世話になった大学生達と集合し、まずはカイセリ城内にある考古学博物館を案内してもらった。
ここでなんと、彼らの日本語教授である方とも合流。
韓国人の李教授は私とサンを快く歓迎してくださり、その後、元キリスト教会を使用した図書館へと連れて行ってもらう。
図書館を後にし、昼食へ。
ここで、私はある物を用意していた。
せっかくなので”習字”を体験してもらおうと、日本出国の際に御餞別で頂いていた筆と縦書きの用紙。
唐突な提案に皆さん文字や意味を調べながらも、楽しんでくれたみたいで良かった。
その後はカイセリ城周辺を見学。
伝統工芸などを見て回り、気づくと既に陽が沈みかけていた。
実は李教授と学生の皆さんは明日、試験を控えているとの事。
そんな大事な日に…と恐縮だったが、これも貴重な体験として快く受け入れてくださり、本当に感謝するばかりだ。
李教授は仕事で一足先にお別れし、学生の皆さんは私とサンが宿泊するホテルまで見送ってくれた。
首都アンカラでダイキ君と会っていなければスレイマン君と出会うことも無かった。
メテ君やユスフ君、ニーサちゃんとも。
サンとは偶然ギョレメの宿でベッドが隣というキッカケから、こうして今も旅を共にしている。
私が筆で書いた“一期一会”という言葉には、少し複雑な意味がある。
表面的には
「二度と来ない、たった一度きりの出会いを大切に」というもの。
だが、そこから発展して
「これから何度も会うだろう。しかし、もしかしたらこれが最後かもしれない。そういう気持ちで今を大事に人と接する」という意味になる。
日本の“ことわざ・四字熟語”だ。
私は旅に限らず、常にこの気持ちを心掛けている。
そんな格好良いものではない。
当時私が営んでいた小さな店も、そのくらいギリギリの連続だった。
だがこうして様々な御縁が繋がり今、世界を旅させてもらっている。
これからも謙虚を忘れず、一瞬を大事にしていきたい。
改めてそう思えた一日だった。
明日はカイセリを発ち
日本外務省が危険とする地域へ向かう
サンともここでお別れだ
次は何が起こるのか