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少女フィクションがとにかく好き

少女三部作を差し置いて私の心を掴んで離さない「少女フィクション」が発売されてまもなく2年が経ちました。 

アーバンギャルドを聞いたことがない方も、昔好きだったと言う方も、まずはここから聞いて欲しいくらい。「毒」を食わば皿まで。

中毒性のあるEDMサウンドで、巷では「裏Perfume」なんて呼ばれています。

「聴いていると気が触れてしまいそう」なトラウマテクノポップとアバンギャルドな世界観を融合したネオ・レトロサウンドは他に前例がありません。

過去作品のオマージュと珠玉揃いの11曲、
10年間築き上げて来たアーバンギャルドの最高傑作。

最も個性的かつ毒性の強い「少女フィクション」をご紹介いたします!

これを読んで、あなたも「アーバンギャル」になりませんか?

  ※このブログはファンによる個人的な考察まとめです。公式とは異なる場合もございますので、暖かく見守って頂けると嬉しいです。

1.あたしフィクション

「でもときどきはね 涙だって流すの
あたしの歌 あなたきっと忘れる日が来るの」

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 少女フィクションのリード曲。

初っ端から我々ファンの心臓を鷲掴みにします。

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増えていく容子

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MVの雰囲気がまさにアーバンギャルド。

精神異常をきたしたかのような真っ赤な背景に白のドットが続く。

白目を剥くリーダー。

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この作品では、どことなく過去のアーバンギャルドのPVを彷彿とさせるシーンが目立ちます。 

回るCDは回るレコードと

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水玉模様に水玉病

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降ってくるシーンはさよならサブカルチャー

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https://www.youtube.com/watch?v=lhXQFyamhqk


ドレッサーの前には病めるアイドルで

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 https://www.youtube.com/watch?v=hz95sDMpqHE


囲むシーンは生まれてみたい

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降り注ぐよこたんはコンクリートガール

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増殖容子は変らず増えていく

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カラフルが基調の背景は

アーバンギャルドのもう一つのイメージカラー

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傍らには都市男

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浮かぶリップが歌い出すのは最近の

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やたらと出てくる「リップ」の描写は

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色々な作品をオマージュするアーバンギャルドが、ついに自らの作品をオマージュする形となった、あたしフィクション。

この曲のテーマは「CDを埋葬する」。 

音楽総DL時代の最中売れないCDを埋葬し、CDがオワコンとなったこの時代に真っ向から立ち向かうPVになります。

 

CDが売れないこの時代にわざわざCDを買うことの意義は何でしょうか?

コレクション?ジャケット?歌詞カード?それとも清き一票のため?

 

天馬さんはいつもCDを買ってもらうため「しばらく音楽サイトで曲の販売はしません」と言っています。

あくまで「鏡屋さん(CDを売って生計を立てているアーティスト達の事)」であることをやめないという意思表示でしょう。

あとなんでもいいんですけど、ライブ行った時に容子さんを埋めた埋葬CDが我々に配布された時はウケました。みんなぺろぺろすな。

 歌詞引用:黒沢清監督作品「ドレミファ娘の血は騒ぐ」


2.あくまで悪魔

「人間は恋するなんて悪いことできないの知らないの あなたに教えてあげる」

 

とにかく中毒性300% 

「天使だけどあくまで悪魔」な人間の性善説と性悪説を説いた作品。

 アーバン史上最もハテナが多いMVも魅力のひとつ。

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何故だか幼女性を醸すリーダー松永と後光の指す容子さん

 人には誰しも心に悪意を持っていて、かつて人は悪魔だったこともあった。

 ゴシップが絶えないこの時代に、SNSで不特定多数の人間が誰かを凶弾することは正義の織りなす正しい行為なのか。 

皆心の中の自分自身の悪意と一度対峙するべきではないのか。

みんな、あくまで悪魔なんじゃないか?という世間に向けたアンチテーゼ的な一曲です。 

「人間は恋するなんて悪い事 できないの 知らないの あなたに教えてあげる」 

小悪魔的な女の子に恋をする男の人は数知れませんが恋をすることとは、悪魔の手に堕ちることなのかも知れませんね。

 

ちなみに私はこの頃の化粧をして赤いヒールを履いていた男性陣がすごく好きです。

  歌詞引用 ゲーテ作「ファウスト」にて

「メフィストフェレスとキッスも御免さ」

  

3.ふぁむふぁたファンタジー

「生きてく限り 此処は ぜんぶあなたの世界だから」

 

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メジャーデビューしたバンドの紅一点がこんなに血に染まることなんてあります?まさに赤一点です。

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なんでもいいんですけど運命ピアスのこと「さだめピアス」って呼ぶ私の友人!うんめいだから!やめて!さだめじゃないから!

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中指を立てるのは「ファックするぞ!」という意味になるけれどこの歌では薬指を立てます。 

ふぁむふぁたとは、ファム・ファタール(Femme fatale)男にとっての「運命の女」(赤い糸で結ばれた相手)もしくは男を破滅させる魔性の女のこと。

 

歌詞の中にも、「 Femme-Fataleのように」と名前が出ています。

 しかし「ファンタジー」と名のつく通り、非運命論者の歌になります。

「運命宿命 自分で決めろ」

ライブでは容子さんのこのセリフから、いつも曲は始まります。 

これまで「少女性」を題材にした曲ばかり歌っていた浜崎さんが

「あたしも結婚するのかな 本当の恋ができるかな 子供なんかもできるかな」

 とウェディングドレスを身に纏って歌い上げるのですから、書き手も、また聴き手である私たちも歳を重ねて来たことがよくわかります。 

「運命線なら途切れているから わたし白馬の王子様になると決めた 」

「運命の人」を信じなくなった私たちは、自分自身が白馬の王子様に

ならないといけないと、自分の未来は自分で切り開こう、赤い糸なんて切ってしまえという強い意志を持ちます。

 

たしかにSNSでいつでもどこでも誰とでも繋がれるこの時代に、「運命の人」なんてどこか陳腐な言い回しでしょう。

 運命宿命、自分で切り開きましょう。 

4. トーキョー・キッド

「つまらない大人には ならないと決めたのに」 

こんなに狂った曲を私は初めて聴きました。冒頭から始まる機械音に、半音階の不安定なサウンド、そして歌詞には「ギザギザの手首さ」

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「333ノ テッペン カラ トビウツレ」

天馬さんは楳図かずお『わたしは真悟』のイメージソングと言います。

トーキョー・キッド微笑んだ 東京特許許可局で トーキョー・ガール目が合って 恋に落ちた 

物語の中で出会った悟と真鈴のように、舞台は東京 ランドセルを背負った小学生の二人は恋に落ちます。 

しかし離れ離れになる運命をたどる二人は大人になることをやめて自分たちの子供を作るために東京タワーの頂上から救助にきた

ヘリコプターに トビウツル。

 

壊せトーキョー・キッド 超えてトーキョー・タワー 飛び降りても一度 死んでは生まれる町さ 

アーバンギャルドは「アーバン(都市の)」と名のつくとおり、「都市」を歌った曲が多いのですがそれは天馬さんが都市に生まれ都市に育ってきて都市の歌しか書けないからだと言っています。

 

都市に憧れを抱いて育ってきた私たちが、彼らの曲を聴いて「都市に光るビルや広告塔、街灯や車のヘッドライトのようにキラキラと輝きに満ち溢れてる」感情を抱くのは彼の世界観や背景から来ているのでしょう。

 

引用:楳図かずお『わたしは真悟』

 

 5. ビデオのように

「不幸な少女のふりしてたの」

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初めて聴いた時は、真っ暗闇にブラウン管のTV画面に砂嵐が光っている紫色の部屋を思い浮かべました。

皆さんもおんなじイメージだと思います。

「ウインクして首をかしげて人形のふりをしてる90分 気持ち半分不幸な少女のふりしてたの」

 風俗嬢の歌でしょうか。映画に出てくる不幸な少女の話でしょうか。

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 ビデオのように何度も再生される行為をただ(早送りしてる)少女はそこで、自分が誰かに見られていることないし、自分が自分の映像を見ていることを自意識の中で感じています。


「ビデオ」「七色のカラーバー」「ダビング」といったワードにもあるように、ビデオテープが主流であった80年代、90年代の雰囲気が漂います。 

どことなく物悲しさのあるこの歌に、私はいつもライブ中大泣きしてます(小並感) 

引用:ブリジット・フォンテーヌの「ラジオのようにComme à la radio」

 6. 大人病

「あの人がスキ だけどいつかきっとどうでも良くなるの」 

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大人病が胸にグッときた人が多いんじゃないかな。

青紫の空。キラキラ輝く都市。紫色のショーウィンドウ。宝石のような曲。

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若い頃は自分のマイノリティな部分にどこか引け目を感じていて、ひらひらのついたドレスも自分だけが知っている雑誌も、厚化粧をして都市に繰り出した思い出も大人になった今、少しずつ自分のマイノリティとサヨナラをしなければいけないある種の「病気」にかかってしまう。

それが大人病。

 ある日突然その病気はかかる。

真夜中のベットで「そろそろ結婚しなきゃ」と思った時。

 ライブハウスから出て自分と道行く人たちとのギャップを感じた時。

好きな服が似合わなくなった時。 

大人病にかかった私たちは、好きな人に嫌われないために「好きだったものを諦める」自分を受け入れて生きていくの。


7. インターネット葬

「死んじゃいたい 消えちゃいたい それじゃタップして」

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「みんなの歌」調の「インターネット葬」はデジタルネイティブと、ファミコン世代の中間に位置する世代にとって「懐かしさと、イマドキ」の両方を兼ね備えた最高の一曲になります。

生まれたときにたまごっちのピコピコ音を聴かされて育ち

インターネットに繋げるとFlashゲームばかりやって

世は大電車男時代、SNSが人生の教科書であった私たちにとっては、きっと死ぬ頃には「インターネット葬式」がされることでしょう。

もちろんパパとママの出会いは出会い系で、おばあちゃんはbotアカウントのように同じことを繰り返すばかり(ちょっとブラックジョークが過ぎる)

そんなインターネットがないと生きていけない我々世代ですが、死ぬまでインターネットと共に生きていくのでしょうか。

「幸せだなあ
僕はネットしてるときが一番しあわせなんだ
僕は死ぬまでネットをやめないぞ
だめかなあ」

 

なんでもいいんですけど、この曲が出た後すぐに加山さんの船に事故があって、「アーバンギャルドに引用されたり、ライブハウスとして使われると必ず悪いことが起こる」みたいなジンクスが生まれたの、めっちゃアーバンぽくていいですよね?

歌詞引用:加山雄三「君といつまでも」

引用:「コンピューターおばあちゃん」 

 

8. 鉄屑鉄男

「愛して傷ついて 触れるたび傷ついて
脆すぎる命なら 神様 僕はいりません」

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天馬パートメインのデスボイス曲。

鉄男を見てから語りたいです。ごめんなさい。


塚本晋也監督作品:「鉄男」

 9. キスについて

「息継ぎするように 命をかさねるの」

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「あなたがくりかえしキスを キスを
キスをくれたから
わたしきっと息が 息が 息ができたのかな」


 

容子さんによる美しいバラード。

変わった曲が多いアーバンギャルドですが、容子さんの美しい歌声はこういう時のためにあるの。


けい様はこの曲が特にお気に入りだそうで、「あなたが繰り返し」の前のよこたんの息継ぎがめっちゃセクシーなところが好きらしいので、皆さんもチェックしてみてくださいね。 


10. 少女にしやがれ

「あなたとなら何処まででも行ける
ずっと一緒 そんな夢を見ていたけれど」

 

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何回聴いても泣きます。少女の頃に好きだった水玉、セーラー服、パンクスやロリータは、今はクローゼットの扉の奥に眠っているけれどあの頃の私は全部忘れてしまって大人になった私と、少女との決別の一曲。

「小学5年生、中学2年生、高校2年生のころに好きだった曲」を一生人は愛し続けると言われていますが、今夜くらいは、あの頃大切にしていた少女の私を愛しく思ってもいいのではないでしょうか。

 

曲の始まりは「プリント・クラブ」を

サビは「堕天使ポップ」が

Cメロ終わりには「コンクリートガール」を

  アーバンギャルドの真髄とも言える名曲がいっぱい詰まった一曲。

私も若い頃の、どこにいてもアウトサイダーな自分自身にどこか引け目を感じていて、個性的な洋服がたくさん入ったクローゼットも大好きなアーティストのCDや好きな洋服の雑誌も、好きな人に「やめなよそんなの」って言われて諦めてきた事も、ずっと好きだって信じていたことも、いつの間にか大人になって忘れてしまった事も全部許してあげよういつでもここにあなたの居場所はあるんだよってアーバンギャルドが私たちをまるっきり「肯定」してくれる一曲です。

 ちなみにライブでやられると絶対泣きます(小並感) 


11. 大破壊交響楽

「誰一人いなくなっても 君一人いればいいのに」

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愛しい君は飛び降り自殺をして、もうこの世にはいないから僕の世界は消えたも同然なんだ。

都市に住む私たちは、一度は破壊された都市をイメージしたことがあると思います。 

「あの日のデートも あの日の喧嘩も
あの日の言葉 あの日のキスも
交わさなければ良かった」

 

「別れるくらいなら、出会わなければよかった」なんて失恋をした時誰しも一度は思うかも知れませんが、君のいないこの世界なんて、僕にはまるきり意味がないから、だからこの都市を破壊してしまおうという、ある意味短絡的な失恋の歌でもあります。 

壊れた都市から流れる曲は、どんな歌でしょう。

耳をすませて聞こえる歌は、きっとこんな曲なんだろうなと思います。

 ちなみに都市が壊れたらプラスチックチェリーボムを聴きましょう。

 

 如何だったでしょうか?

 

このアルバムのタイトルである「少女フィクション」、それは「フィクションの少女」なのか、あるいは「少女はフィクションだった」のか。 

ノンフィクションソングでは、少女の命はノンフィクションでした。

「生きろ これは命令形だ 死ぬな これは命令形だ 君の命フィクションじゃない」


 少女の頃は命が「ノンフィクション」であることを肯定し続けないと生きていけなかった私たちが、大人になってあたしはフィクションだったということ、運命の人を待つなんてファンタジーめいているということ、恋するなんて悪いことだってこと、キスを繰り返しくれたあなたはもういないということを、君が死んだって聞いたこと、すべて受け入れて生きていく強い「肯定力」を持ったのがこの「少女フィクション」だと思います。

 全て聴き終わった時に、まるで大好きな漫画を読み終わった時のような達成感と、どことない喪失感を味わうことのできる一枚です。

いつまでたっても自分を肯定できずにいる私たちも、少女のあたしをファンタジーにしないで、大人病にかかってしまった自分自身をも肯定して強く生きていきたいですね。



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