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なにかが変わる弟子屈暮らし vol.36

去年ほど暑くはない夏だった。
新居にエアコンがないことを心配していたが、そもそも家にいるのは夜だけで、寝苦しく途中で起きた日が二日。
扇風機を買うか迷ったがいずれにしても送風ができる方がいいなと思ってネットで購入する。数日待って届く頃には肌寒かった。

ナナカマドの実が赤くなったら秋の合図。
足元ではコエゾゼミの死骸をシデムシが分解していた。
緑もくすみ、小鳥の声も近づいてきている。

とうもろこし

チャイムの音で目が覚めた。
朝6時。
飛び起きたけれど誰か来るにしては早過ぎると思って出るか迷う。
確認すると、近所の方がとうもろこしを持ってきてくれていた。
ヒゲをスズメバチが食べてしまうし、鹿も狙っているのでどうぞとのことだった。夢うつつでとうもろこしを受け取り、そのまま二度寝をした。みんなが狙うとうもろこしはとっても甘くて美味しかった。その他にもこの夏は野菜や果物、お土産とかいろんなものを頂いた。ご近所付き合いも面白い。

ランニングしてみる

義理の両親がランニングを頑張っているのだと聞いて私も走りたくなった。
鈍りきった身体で耕作地をひとマス、2.2キロ走ってみている。人とも車ともすれ違うことがない。笹薮から黒い塊が出てきてあっという間に引っ掻かれて殺されるところを想像する。
ラジオを大音量で鳴らし熊鈴を振って走っているが、それもどうもかなり滑稽なような気がする。
また誰かに笑われそうだがどうせ誰も見ていないし、それで自分の気持ちが落ち着くならいいだろう。
一度運動していた期間があるのなら再開すれば感覚が戻るよ、と言われたので雪が降るまではすこし運動しようと思う。

最高のランニングコース

避暑地、軽井沢にて

友人の結婚式で新幹線に乗って軽井沢へ行く。
夏に帰るのは移住して初めてだ。
東京は暑いのだと脅かされていたけれど、思っていたより耐えられるかもしれない。久しぶりの東京の夏は湿度55%程度で弟子屈に比べるとカラッとしている気がする。弟子屈というか屈斜路がやっぱり町の中でも特別よく晴れ、よく蒸して暑い。

軽井沢は涼しかった。
とてもいい天気で日中は気温も上がったが、屋外で飲食を提供しても全く虫がいないことに驚く。屋内の足元にアブが転がっていたのでたぶん何かしらの対策をしてるのだと思う。
見えない苦労を想像した。
虫のいないガーデンは心底不思議だったが、誰もそういう話はしていなかった。
気が付かれないおもてなしって凄い。
虫がいると大騒ぎする人がいるが、虫がいる方が普通なのだ。
乾杯の挨拶にみんながぼんやりしている頃、新郎新婦の後ろを野生のキジが走っていった。縁起が良いとされるキジ。披露宴に来てくれるなんてと一人感激。友達もキジも綺麗だったなぁ。

帰りに偶然、前職の友人に会った。
かつては何時間でも喋っていたが、新幹線の時間が迫っていたので、会えていなかったここ3年の話を20分でする。

なんだか良い一日だった。

kaho
1993年生まれ 

社会人8年目で、ずっと住んでみたかった北海道弟子屈町に単身で引っ越し。地域おこし協力隊に携わった後、現在は宿泊施設のスタッフとして奔走中。夢は森の中にアトリエを持つこと。ときどき指輪を作ります。鉄道とか山歩きも好き。

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