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なにかが変わる弟子屈暮らし vol.6
東京都出身神奈川育ちの一度も田舎に住んだことがない私が、阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
自分の心の変化の記録ですが、誰かにとってクスッと笑えるものだったり、北海道への移住を検討中の方々の参考となれば幸いです。
弟子屈町はここ!
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最近、知人が遊びに来るという話が多くなってきた。人が来ることを期待し過ぎて、布団と枕を2組も買ってしまった。
結局、泊まるのは1人だったりして。
ソファもダイニングテーブルも書斎的デスクもローテーブルもあるし、一体何人座らせる気なのか。
家が広いのでどんどんものをおいてしまう。本当は彫金机もほしいがきりがないのでローテーブルにスリ板をつけて正座で作業している。アトリエが持てれば(持つ心持ちになれば)落ち着ける気もするが、格好の前にまずは鋭意制作だ。
日が長くなった
1日の長さがだいぶ長くなった。
にもかかわらず西日の中をスノーハイク。
単独行動だとどうも出発が遅くなる。
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午後から行動なんて山屋なら怒られるが、ここは大自然は目の前にあって。
ふらっとスノーシューを履いて、小1時間散策できるのが贅沢だ。
摩周湖、硫黄山横のつつじが原、仁伏の森、和琴半島など屈斜路湖畔など、すこし車を走らせればすぐ近くに、選べるフィールドは沢山ある。
3時過ぎたらもう夕暮れの雰囲気だった12月頃を思う。調べてみると、1月と3月では1日の長さを表す日長が2時間も伸びていた。
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「しばれ」が和らいだような?
寒さが穏やかになったのは気の所為だろうか。ピンと張り詰めたような空気から、すこし緩んだような。太陽の光も暖かく感じる。
だけどやっぱり最低気温は−15℃。日中もほとんどの日が−2℃とかそれくらいだ。春が来たと言うには気が早すぎる。たぶん身体が慣れてきたのだろう。そう思っていると、2月末頃には日中氷点下にならない日が出てきた。
『2℃』を暖かいと思う自分がいる。
氷の鳴き声が聞こえる
屈斜路湖畔沿いを散歩するのが好きだ。
火山が陥没する程の大きな地殻変動を繰り返しできた屈斜路湖が世界2位のカルデラ湖であるということはあまり知られていない。
(世界最大のカルデラ湖は、インドネシアのトバ湖だ。)
周囲長は57km、ひとつの湖だがどこで見るかで景色が変わり、それに気象条件が重なって、来るたびに違う世界が見られる。
結氷が始まった2月はじめ、和琴半島に観察に行くと不思議な音が聞こえた。
フォワンフォワン………
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薄く張った氷の下でなんだか音がなっているようで。小鳥のさえずり以外は何も音の聞こえないこの空間に、氷の音が響き渡った。
和琴半島、宇宙人みたいな音します
— kaho urayama | Teshikaga (@urayama_doto) February 3, 2022
(最大音量で) pic.twitter.com/qRCDgLlF7c
この上に雪が降ると音はだいぶくぐもり、
全面結氷と言われた2月の半ばにはもうこの音は聞こえなくなってしまった。
氷の変化は季節が進んでいくことを感じさせてくれる。
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洗濯物は室内が常識
道内にはあんまり物干し竿に洗濯物を干す風景は無いし、ベランダもないところが多い気がする。
ここに来たばかりの秋頃、頬がカサカサになった。冬になり暖房を常時使うことで乾燥は更に加速。ある場所では部屋の湿度が10%程度で驚いた。
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室内で十分乾くので洗濯物を外に干さないのが普通になった。
関東で毎年苦しめられていた梅雨以降の気持ちが悪くなるような湿度から解放されるんだろうか。それは結構期待している。
極寒芸術祭にハマる
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弟子屈で2012年より震災を契機にはじまった今や毎年恒例の極寒芸術祭。
敢えて一年で一番寒い時季に行っているという。
夕暮れ時、晴天の夜、雪の降っている夜。
野外の展示は天候や太陽によって異なって見えるのが楽しい。
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実は、雪が降るとライトアップのねらいがわかる。敢えて雪が舞っている時に行くのも乙だ。
最高の景色を見せたい
先日、私の妹夫婦が弟子屈を中心に道東へ遊びに来てくれた。彼らは北海道が初めてだったのに、私が「気を付ければ大丈夫だよ」という言葉を信じ、この冬に遊びに来る予定を立て、図らずも大雪後の峠道を走らされることとなった。
一週間前なら雪は全然なかったのだが。
結果的にスノーシューには良い状態となった。
旅の間は天候に恵まれた日が続いた。
妹たちを摩周湖に連れて行こうとしたこの日は風もほとんどなく、早朝は屈斜路湖には雲海が広がったので周辺の木々は氷の結晶を纏った。
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旅行中に見られるなんてなかなか運が良いなと思うのだが、前日も霧氷を見ながらカヌーをしたという。
妹はいつもこの景色が見られると思っているらしかった。
確かに私たちは天気が微妙なときの写真はあげない。
最終日、時間があるということだったのでそれならばと思い、川湯エコミュージアムセンターでスノーシューを借りて、摩周湖へむかってはどうだろうかと考えていた。
この場所でスノーシューをしたのは5年前と3年前。私が観光で弟子屈を訪れ、ガイドツアーに参加した時以来だった。
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とガイド気分で。
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摩周湖は同じ目線ではなくて崖から見下ろすような格好で、実際に目の前にすると思っている何倍もスケールが大きい。
私が初めて摩周湖を見たのがスノーシューツアーで、その時も素晴らしい快晴で無風だったのを覚えている。
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この景色を見て、
「弟子屈はとんでもない場所だ」と確信し、気がついたら「住んでみたらどうなんだろう…?」と思っていた。
自分の移住のきっかけと言っても過言ではない"魔性の摩周湖"を、自分の案内で、家族に見せられたのは素直に嬉しかった。
ふたりの目には弟子屈はどんな風に映っただろうか。
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浦山 夏帆
1993年生まれ 東京都出身
横浜市立東高校卒業後、日本宝飾クラフト学院でジュエリー制作のふわっとしたところを学ぶ。宝飾業界8年目で、住んでみたかった北海道弟子屈町に住まいを移す。
夢は森の中にアトリエを持つこと。鉄道とか山も好き。苦手なのは早起き。