悪友伝 母子
「大川さん、あのヒデオを泣かせたって本当?!」一時良く聞かれました。
新宿駅東側で有名な不良で、大男・ごつい顔立ち・大型バイクを乗り回し・沢山の仲間に囲まれて・・・
そんな男を泣かせたと噂が流れたのです。ウワサの元をたどって行くと、何と本人が周囲に漏らしていました。
事の真相はこうなのです。ある日食事後、顔馴染みのバーへ。そこで母親の話しになると、彼の酒量が増えました。
「ひろし、実はこの店のママが俺のお袋」(えっ今まで何年も来ていたのに~)
「お袋もこんな息子嫌だろし、俺も近所で働いているの知られたくなかった」
それから複雑な家庭環境について、言葉を続けました。死んだと聞いていた、父親の事。成城(最高級住宅地)に大きな屋敷が有る訳。
かなり酔ってしまいました。
「ひろ君、ヒデを部屋まで送ってくれる?」ママであり、母親の人から頼まれました。
タクシーに乗り、なんとか彼のマンションへ。鍵を開け部屋に運び込むと、いきなり泣き始めました。「今夜は泊まっていけよ」
涙とは無縁と思っていた男の頼みで、宿泊。明るくなるまで、彼の話しを
聞きました。
昼頃目覚めて私から「昨夜は何も聞かなかった。ヒデは泣いてないからね」
声を掛けました。